日本共産党

2004年3月2日(火)「しんぶん赤旗」

鳥感染「点から面へ」


 毒性の強い鳥インフルエンザが不気味な広がりを見せています。山口、大分についで京都でも発生。対応の遅れから、京都から兵庫、香川に鳥インフルエンザは拡散しました。さらに出荷された鶏肉の一部が関西圏の消費者にまで達するという関係者がもっとも警戒していた事態にまで発展しました。鳥インフルエンザを封じ込めるために今なにが必要なのか―。

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封じ込めに失敗

新たな事態に

 京都府丹波町の浅田農産船井農場で、確認された鳥インフルエンザ(H5N1型)の封じ込めは失敗しました。

 鶏の病死が一週間も放置されたうえ、病原ウイルスに感染した恐れのある鶏や卵が食用として、死んだ鶏と鶏ふんは肥料として発覚直前まで出荷されていました。

 鳥インフルエンザに感染した鶏は、兵庫県八千代町に生きたまま出荷され、処理場内の鶏から感染を示す陽性反応がでたばかりか、岡山県産の鶏などにも感染を広げました。愛知県豊橋市にも出荷され、感染の恐れは近畿圏から東海圏にまで一気に拡大。鳥インフルエンザの脅威は、ことし一月に発生以来、山口県、大分県という点在した問題から、一気に面的な問題へと発展しました。

 農水省が昨年策定した鳥インフルエンザ防疫マニュアルは、鳥インフルエンザ流行前につかんで、ウイルスを封じ込めるということが大前提でした。ところが、今回の問題で「全国どこでも起きえる状況と考えないといけない」(坂口厚生労働相)という新たな事態を想定しての鳥インフルエンザ対策を拡充することが緊急に必要になってきました。

 農水省のマニュアルは、毎月一都道府県に各一カ所の養鶏場を対象に、十羽のウイルス検査をするというもの。京都・丹波町の養鶏場から出荷された兵庫県の処理場にも鳥インフルエンザが広がってしまったことから、一部の養鶏場だけを対象とした検査では、ウイルスの拡大を早期につかむことは困難です。

 また、養鶏場などで急死した鶏の鳥インフルエンザウイルス検査は義務付けられていません。「全国どこでも起こりうる」とすれば、「今回のように一週間も急死が放置されることがないよう、少なくとも急死したすべての鶏の鳥インフルエンザの検査が必要だ」という声もでています。

30キロ圏内に100万羽

補償は当該農家だけ

 鳥インフルエンザの検査を広げるうえで、出荷できなくなった農家などへの経済的補償は、避けて通ることができない課題です。京都府丹波町を中心とした三十キロ圏内には、千羽以上の大規模養鶏農家が京都府内だけで三十九戸。鶏は約百万羽、一日に生産される卵は七十万個といいます。兵庫県内には中小農家あわせて三百二十一戸。病気が発生した農家には補償制度がありますが、周辺農家には補償制度がなく、山口県では農家の損失を補償するため、国と県で総額二億五千万円の予算を組みました。

 二例目が発生した大分県では、まだ山口県のような国の対応が決まらず、県独自の融資をはじめたばかり。

 京都府は一日、周辺の農家への損失補てんの充実を求める要望を提出しましたが、全国どこでも起こりうる事態に備えた補償制度の拡充が国に迫られています。

行政の対応、二転三転

消費者から批判

 大量のニワトリが死んでいた京都府丹波町の農場から出荷された鶏肉や卵が、消費者にまで渡っていたことも判明。鳥インフルエンザ問題で関係府県の情報は二転三転し、正確な情報を消費者につたえるという面でも苦い教訓を残しました。

 丹波町の農場から二十五、二十六の両日に出荷されたニワトリは約一万五千羽。大量死が内部告発で発覚した二十七日夜、京都府は「兵庫県八千代町の食鳥処理場に運ばれて解体されたが、(流通途上で)小売店には並ばない」としていました。

 その後、一部が卸売業者や食肉加工業者に渡ったことが分かった時点でも、府や兵庫県は「倉庫に保管されている」「卸売り段階で止まっている」などと説明。しかし、八千代町の鶏肉は、四府県の小売店や飲食店に流通し、一部は消費者の口に入っていたことが判明すると行政は「食べても安全」をくりかえすだけです。

 しかも、二十八日には関係府県・市が情報をつかんでいたにもかかわらず、公表は二十九日朝の一部報道に引きずられる形で行われ、情報の把握と発表は後手後手に回ってしまいました。

 食の安全・監視市民委員会代表を務める神山美智子弁護士は「BSE(牛海綿状脳症)以来、真実を隠すと必ず消費者にそっぽを向かれることは分かっていたはずなのに、(京都の農場の)対応は信じられない。行政も事実確認がずさんで、BSEの反省を全く生かせていない。『臭い物にふた』のような対応を繰り返されると、消費者は何も信じられなくなる」と批判しています。


国の責任大きい、被害者補償を早く

 発生源となった京都府丹波町などで現地調査にあたった西山とき子参院議員(党京都府委員会対策本部長)の話

 周辺の養鶏・卵業者などの不安や、民宿などへの影響を心配する声はほんとうに深刻でした。国・自治体はすべての関連する被害の補償を早く行うべきです。

 今回の鳥インフルエンザでは、京都府の南丹家畜衛生保健所を含め、防疫体制はあまりに不十分で、国の責任は大きいと思いました。南丹家畜衛生保健所はわずか十一人の職員。発生した農場に入る町当局にも靴底などからの感染拡大を防ぐ消毒液が常備されておらず、防疫体制の不備をすぐにあらためる必要があると痛感しました。

 京都での鳥インフルエンザ発生は、規模が大きく、一週間もたってから内部告発で発覚するまで放置されたことは重大です。しかも、二月十九日に京都府は「問題なし」としていたのです。浅田農産にどのような指導をしていたのか。真相の究明が急がれます。府の責任も問われます。


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