日本共産党

2004年2月28日(土)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい特集

これが改悪労働者派遣法

来月からこう変わる


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労働者派遣法派遣対象業務拡大の歴史

 改悪された労働者派遣法が三月一日から施行されます。どこがどう変わるのかをみてみました。畠山かほる記者

213万人 3年で倍に

 派遣労働者は、現在二百十三万人。三年間で倍増しています。労働者派遣が急増しているのは、雇用責任を負わずに、必要な時に必要なだけ働かせることができるという、企業にとってきわめて都合がいい働かせ方だからです。

 しかも、派遣労働者の八割超は仕事が入ったときだけ派遣会社と雇用契約を結ぶ「登録型派遣」という、より不安定な働き方をしています。派遣会社にとっては、仕事がない時は賃金を払う必要がなく都合のよい働かせ方です。同じ有期雇用でも、労働者を実際に使う企業が雇用責任をもつ契約社員やパートタイマー、アルバイトとは、根本的に異なる点です。

製造業も解禁に

 今回の改悪(自民、公明ら与党の賛成で成立)は、製造業務や医療業務(条件付き)にも労働者派遣を認め、派遣期間を延長するなど、労働者派遣を利用する企業の使い勝手をよくする内容となっています。このため、正社員の派遣労働者へのおきかえがいっそう進むことは必至です。

 解禁される製造業務は、派遣期間の上限を当面一年とし、〇七年三月以降は三年に延長されます。対象労働者は八百万人に及びます。

 大企業の製造ラインでは、すでに「業務請負」名目の違法派遣が横行しています。「請負」は、請負会社が委託企業から独立して労働者を指揮命令し、ラインも別にしなければなりません。しかし委託企業にとって都合が悪いので、実際には委託企業が指揮命令しラインも同じという、脱法行為がひろく行われてきました。今回の改悪は、これを追認するものです。

 もう一つは、病院など医療機関全般に医療業務(医師や看護師など)が紹介予定派遣に限って可能となります。

 紹介予定派遣とは、派遣先企業(病院)が労働者を直接雇用する(正規雇用とは限らない)ことを前提に、六カ月を上限に労働者派遣を認めたものです。しかし、直接雇用の義務付けはなく派遣先の一方的な都合で解消できます。

 これまで派遣は労働者が頻繁に変わりやすいため、医療の安全性や質の確保に重大な影響を及ぼしかねないと禁止されてきました。労働者の不安定な働き方は変わらず、問題は依然残ります。

専門職は無期限に

 派遣期間は、これまで対象業務だったソフトウエア開発など専門職二十六業務が三年から無期限に拡大され、それ以外の一般業務は一年から三年に延長されます。

 派遣期間の延長は、派遣労働者にとって契約が長期安定することを意味せず、企業の選択肢を広げるにすぎません。

 厚生労働省の調査によると、現在でも派遣期間「三カ月未満」が約七割をしめ、「六カ月未満」では九割を超えています(「〇二年度労働者派遣事業報告結果」)。企業は、高度な知識と経験をもつごく一部の派遣労働者には長期契約をし、他はいつでも契約を切れるよう短期の派遣契約をくりかえしています。



労働者保護法制整備を

 戦後の日本は、労働者を指揮命令する者が雇用における全責任を負うという「直接雇用」を原則としてきました。この例外として、労働者派遣は「臨時的、一時的」な仕事に限り認めたものでした。ところが、財界・大企業の強い要望を受けた度重なる改悪で、労働者派遣ができない業務は、港湾運送、建設、警備だけとなります。

 派遣労働が拡大することは、正社員の雇用を破壊し、無権利で不安定な労働者を広げることを意味します。派遣労働者を保護する法規制や均等待遇など正社員代替を規制する法整備がもとめられています。


派遣労働者の賃金は? 年収250万円未満が6割

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 派遣労働者(登録型)の時給は、平均千四百三十二円(〇二年、東京都産業労働局調査)です。

 パートタイマーより高いのではと思うかもしれませんが、派遣労働者の場合、通常支給される交通費などがいっさい支払われないケースが少なくありません。しかも、派遣先企業の都合で突然契約が打ちきりになったり、次の仕事にすぐ就けなかったり、きわめて不安定な状態におかれています。派遣労働者の年収は六割が二百五十万円未満です(同調査)。

 派遣料金は、派遣先企業にとって人件費ではなく、物品費などと同じ扱いです。需給関係によって変動しやすく、派遣労働者や派遣会社が増えている今日では、派遣契約が競争入札にかけられたり派遣料金の値下げ要求を受けるなど、買いたたきが強まっています。



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