2004年2月16日(月)「しんぶん赤旗」
「資格取得後に自宅で高収入が得られる」――。言葉巧みに勧誘し、高額な教材を売りつけながら仕事は紹介しない「内職商法」の被害が急増しています。
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先月十九日、内職商法の大手「NMS」(日本マーケットソリューション、東京・新宿)が東京地裁から破産宣告を受けました。被害者は、全国で二万七千人といわれています。
同社は昨年「ライフプランナー」と「ベンチャープロデューサー」が合併したもの。パソコンのデータ入力や会計業務などの在宅業務を紹介すると勧誘、六十万円もの資格取得用教材を売りつけていました。
被害にあった主婦(36)(東京・新宿)は、パソコンのメールマガジンにあった仕事に関するアンケートに回答した翌日、「ライフプランナー」の女性社員から突然の電話を受けました。
女性社員は、(1)仕事が豊富にあり業務委託のメンバーが足りず、急いで募集している(2)日本商工会議所「ビジネスコンピューティング検定2級」に合格すると時給二千―三千円の仕事を保障する――と二時間半も説明しました。
契約を承諾してもいないのに翌日、名前や住所が記載されたローン契約書が、資料と一緒に速達で届きました。
問い合わせた主婦に女性社員は、「試験は簡単で全員受かります」「試験勉強は一日一時間で十分」「仕事は、さばききれないほどあり確実に回せる」と勧誘。「インチキの詐欺会社じゃない」と繰り返しました。女性社員は、同じ日の午後にも電話をかけてきて「半年もしないうちにローン分は稼げる」と契約を迫りました。
主婦は執拗(しつよう)な勧誘に「口をはさむことも、電話を切るタイミングもない程だった。仕事が豊富にあって、実際に稼いでいるメンバーがいると具体的に何度もいわれるうちに、自分も確実に稼げるのでは、と根負けしてしまった」といいます。
主婦は「子どもが幼稚園にいっている間、仕事がしたかった」といいます。教材は、CD五枚、フロッピーディスク十二枚と教科書、練習問題数冊。パソコンでのオンラインスクールも始まりました。
しかし、2級の一回目の試験が不合格になり、「簡単」で「全員合格」できる試験でないことが分かりました。「早く仕事が欲しい」と並行して別のパソコンスクールにも通い出しました。
パソコンのネット上に掲載されている同社への苦情や批判について聞いても、「同業他社が足を引っ張ろうとしているもの」と一蹴(いっしゅう)されました。
そのうち「社名変更」「社屋移転」のお知らせが届き、主婦は「外部スタッフに回すほどの仕事があるのか」と会社そのものに疑問をもつようになりました。主婦は「被害救済のため、ほかの被害者の方たちと連絡協議会をつくりました。このような人をだます商法は許せません」と話しています。
国民生活センターによると、「NMS」に関する相談は4756件。2001年度が612件、02年度が660件です。内容は「倒産して連絡が取れない」「残ったローンをどうしたらいいか」などです。
同センターは「内職商法の被害は、不況のせいか、主婦層に限らず20代から高齢者まで広がっているのが特徴。仕事を始める前に、高額な教材や資格取得のサポート費用の支払いには十分注意してほしい」と呼びかけています。
また、「二次被害」についても警告。業界で会員の名簿が出回っているのか、倒産した会社の会員を狙った勧誘が相次いでいます。残ったローンを返済するため「次こそ稼いでやる」と被害を拡大しているケースが少なくないといいます。
「NMS」破産管財人の連絡先は電話03(3500)1182。債権提出期間は今月27日まで。