日本共産党

2004年2月12日(木)「しんぶん赤旗」

「真相究明を」 広がる声

北海道警裏金づくり 元幹部証言

党国会調査団現地入り


 北海道警察の捜査用「報償費」の不正流用疑惑を元道警幹部が十日の記者会見で認めた問題は大きな波紋を広げています。日本共産党の小林みえこ参院議員ら国会調査団は十一日、北海道入りしました。真相究明を求め運動していた弁護士グループや市民団体からは、疑惑解明をいっそうすすめる契機に、という声があがっています。

 日本共産党国会調査団は、小林議員と道議会で追及してきた大橋晃、花岡ユリ子、真下紀子の各道議ら。この日は、関係法律事務所を訪問し、弁護士らから状況を聞きました。

 十二、十三日には、問題の発端となった旭川中央署がある旭川市にも調査に入ります。道監査委員や道側ともヒアリングや意見交換を予定しています。

 裏金の存在を認めた道警元釧路方面本部長の原田宏二氏は、会見時に配布した文書のなかで、裏金づくりの詳細な手口を暴露していました。

 国の監査を受けるときに、会計の証拠書類に見合った架空の事件をデッチあげ、そのメモ書きの作成などに数カ月かかったことなども明らかにしています。一方、北海道の監査は、署員などの面接もなく「形式的」だったと指摘しています。

 裏金の使途については、署長交際費などのほか、道警本部では上級官庁や議会対策に使われていたと説明しています。


解説

急がれる外部監査の導入

 北海道警の組織ぐるみの捜査報償費疑惑が元幹部の証言で裏付けられました。記者会見した原田宏二氏は、一九五七年に道警に入り、山梨県警や熊本県警の捜査二課長などを経て、道警に戻り、旭川中央署長、道警防犯部長、釧路方面本部長を歴任しました。九五年の退官時は警視長。警視総監、警視監に次ぐ階級です。

 捜査現場の責任者を務め、警視長までのぼりつめた人物が警察の組織的な裏金の存在を認めた意味は、道警問題にとどまらないものがあります。各地の警察で公金支出をめぐる組織的な不正・腐敗が指摘されてきたからです。

 元警視監の松橋忠光氏は著書『わが罪はつねにわが前にあり』(八四年)で、不正を告白。日本共産党のもとにも、種々の警察官やOBから内部告発が寄せられ、国会でもたびたび党議員が追及してきました。

 訴訟も起こされています。警視庁赤坂署が架空の人物への日当の支給をしたとして返還を求めた訴訟では、警察側が敗訴。宮城県警のカラ出張疑惑では旅費の返還請求訴訟を市民オンブズマンが起こしています。

 捜査費の架空請求など公金の不正処理疑惑は徹底的に解明されなければなりません。くりかえし発覚している同種の疑惑は、警察自身に自浄能力がないことを物語っています。警察会計の情報公開をすすめることと、外部監査制度・機関の導入が急がれています。 (栗田敏夫記者)


各方面から談話

徹底調査を要求

 日本共産党・大橋晃道議団長 署長や方面本部長を経験した人の証言だけに、きわめて重いものがあります。

 とくに裏金がどのようにしてつくられ、どのように使われたかをみずからの体験にもとづいてリアルに証言しており、今後の全容解明に大きな手がかりを与えるものです。

 警察は、依然として人ごとのような態度をとっており、他地域の同様の証言も黙殺し続けてきましたが、先日の住民監査請求の結果といい、今度の証言といい、いよいよ追い込まれた感を深くします。

 党道議団としても、二月末からの道議会で、今度の証言も十分生かしながら、道警や知事に徹底した調査・解明を要求するとともに、税金を不正に使うことにきびしいメスを入れていきます。

重い意味持つ

 道警報償費不正支出疑惑で住民監査請求をした渡辺達生弁護士 勇気ある行動です。一九九五年まで道警の最高幹部として在籍し、今問題の旭川中央署の疑惑が起きる少し前まで同署の署長をしていた方の話であり、非常に重い意味を持つ証言です。内容も極めて具体的で信用性が高い。

 私たち弁護士グループの住民監査請求が先日、棄却され、今後、住民訴訟を起こすことを計画していますが、それにも非常に力になると思います。ご本人も「今後、要請があれば報償費関連訴訟で証人出廷することも考えている」とおっしゃっているようですから、法廷で証言してもらうことも考えたい。

道民に真実を

 日本国民救援会北海道本部の守屋敬正会長 当事者の信用できる発言だと思いました。

 証言を受けて道警と知事が今後どういう態度をとるのか注目したい。不正をしていた当事者の話ですから、道警は「うそだ」と逃げられないし、道民の前に真実を明らかにする責任があります。道民には負担を押しつけ、一方で道警は税金で甘い汁を吸う。改めて怒りを覚えるし、根本的に変えなければならない。

 司法の場での解明と併せて、私たちも真相解明を求める市民レベルの運動を今後さらに強めたいと思います。


北海道警の裏金づくり

元幹部配布の文書

すべての所属でやられていた

 原田宏二・元北海道警釧路方面本部長が記者会見で配布した文書の要旨は次のとおり。

 話すに至った理由

 道警の信頼が失われていくなかで、現場の警察官やその家族の人はさぞ肩身の狭い思いをしているのではないでしょうか。今回が道警が更生できる最後のチャンスだと思います。

 少なくとも私が退職した平成七年(一九九五年)まで裏金が存在し、しかもそれは組織的に行われていました。

 在職中に地元出身の最高幹部の立場にありながら、保身と甘えと自らの力量不足から改善に積極的に取り組まなかったことに責任を感じ、長い間、後悔の気持ちが続いてました。私がそうであったように、現職の皆さんに、真実を語ることを求め、改善を期待することはできないのかもしれません。だとすれば、監査結果が公になった時点でOBの私が事実をありのまま公表しなければと思ったのです。

 裏金はどのようにして作られていたか

 対象は、国費の旅費、捜査費、道費の報償費、旅費のほか日額旅費、参考人旅費などに及んでいました。これらの予算は、四半期に一度、本部会計課から書面で内示されます。本部各課、警察署など各所属ではその金額(毎年ほぼ同じ)の範囲内で会計課(係)(本部では、経理主幹や庶務係)が毎月これを消化します。その際、領収書などの支出に必要な書類が作られます。これが、裏金として副署長(本部では、管理官、次席など)に渡されます。

 副署長は、この現金を小型金庫に入れ、裏帳簿で管理します。あるとき、どうしても捜査員を大勢遠方に出張させる必要がある事件捜査で、金庫に現金がなく私の個人口座から預金を引き出し、捜査員に持たせたことがあります。

 裏金は全額が副署長の金庫に入るのではなく、その一部は本部へバックされると聞いていましたが、その割合などは知りません。この間、署長(課長など)は一切決裁をすることはありませんでした。裏金づくりは、いわばヤミの仕事で正規の手順はとらないのです。

 必要な会計上の書類はすべて経理担当者がひそかに下書きを作成し、署員(課員)に記入を依頼していたようです。なお、当時、警察署の各課(係)には会計処理に必要な用紙は保管されてはいなかったと記憶してます。必要がないからです。

 つくられた裏金は、副署長(次席、管理官など)が管理し、署長は月一回裏帳簿に決裁をしてました。防犯部では部の管理官が裏金を管理し、事務は経理主幹が担当していました。

 裏金は何に使われたのか

 署長交際費、異動の際の餞別(せんべつ)、部内などの懇親会費、冠婚葬祭費、タクシーチケットの支払い等が主たるもので、本部では、上級官庁や他官庁への接待費や道会対策にも使われていました。防犯部長時代に自ら歳末警戒視察への謝礼の意味で道議会議員を接待した経験がありますが、その費用はどこから支出されていたのでしょうか。

 そのほか、警察署では各課(係)には運営費が渡され、緊急事件捜査の際の夜食代や少額の捜査費用などにあてられていたようです。特別に、捜査などで必要となる費用(旅費、報償費など)については、課長などの幹部からの申し出により副署長が裏金の中から現金で渡していました。

 監査対策

 国の監査は大変で、書類の付け合わせ、会計の証拠書類に見合った架空の事件をデッチ上げ、そのメモ書きの作成などに数カ月かかりました。その間、警察庁や本部会計課の予備検査が行われましたが、普段は見たこともない書類の名称を覚えたり、正規の決裁の手順を知るため何回も予行演習までした記憶があります。

 いつから始まったのか

 こうした問題を耳にしたのは、昭和三十三年ころの札幌中央署です。出勤簿に丸で囲んだ「出」という印が押してあるので先輩に聞くと「あれは空出張」だと教えてもらったのが最初です。その後、数多くの転勤をしましたがすべての所属で同じことが行われていたのは紛れもない事実です。


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