日本共産党

2004年2月11日(水)「しんぶん赤旗」

ズシリ連続負担増

経済冷え込み加速

年金改悪法案


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 政府が十日に閣議決定し国会に提出した年金改悪法案は、保険料の連続引き上げ、給付水準の自動引き下げを国民に押しつける、かつてない改悪案です。暮らしに深刻な影響を与えます。

厚生年金の保険料

月給から9・15%天引き

 厚生年金保険料は現行の13・58%に毎年0・354%(労使折半)ずつ上乗せした料率になり、二〇一七年度の18・30%で固定されます。このうち半分が労働者の負担で、毎月の給与とボーナスから9・15%が天引きされることになります。

 【年収四百五十万円の場合】現在、年間で三十万五千五百五十円の保険料を払っています。改悪によって、保険料は毎年約八千円増え続け、一七年度以降は年間四十一万千七百五十円になります。現行に比べ十万円を超える負担増です。

 【年収七百五十万円の場合】現行で年間約五十一万円の保険料負担が、毎年一万三千円以上増え続け、一七年度からは年間六十八万六千二百五十円の負担になります。一カ月分以上の賃金が、保険料の支払いで消えることになります。

国民年金

毎年3千円超す負担増

 国民年金保険料は、〇五年四月から月額二百八十円引き上げられます。年間で三千三百六十円の負担増が、十三年間続くことになります。一七年度からは、月額一万六千九百円の保険料となり、年間保険料で、現行に比べて四万三千二百円多い負担になります。

 政府・与党は、年金だけでなく、社会保障「改革」として、医療・介護の保険料を引き上げていく計画。医療は二〇二五年に10%程度を見込み、全体で30%を超える負担を押しつける狙いです。労使折半として、加入している労働者本人は賃金の15%という高負担が求められることになります。

国庫負担引き上げ先送り

消費税アップに道開く

 年金財政を安定させるため、基礎年金の国庫負担を現行の三分の一から二分の一に引き上げるかどうかが、今回の「改革」の焦点となりました。〇四年度に基礎年金の国庫負担割合を二分の一に引き上げることは前回二〇〇〇年「改正」で法律に盛り込まれていました。政府・与党は実施を先送りし、法案では五年後の〇九年度までにおこなえばいいとしています。

 段階的に二分の一に引き上げていくため、〇四年度は年金生活者への増税によって五十七億五千五百七十一万六千円を確保するとしています。年金の「安心」をつくるどころではありません。

 法案には「安定した財源を確保する税制の抜本的な改革を行った上」で実施すると明記。国庫負担引き上げを口実に消費税増税につなげるのが狙いです。

 「税制の抜本的な改革」とは、昨年十二月に政府・与党がまとめた「税制改革大綱」に盛り込まれたものです。そのなかでは、〇五年度、〇六年度に定率減税の縮減、廃止による庶民増税とともに、「年金、医療、介護等の社会保障給付全般に対する費用の見直し等」を踏まえ、〇七年度を目途に「消費税を含む抜本的税制改革を実現する」と打ち出しています。

 日本経団連は、年金財源を口実にして、〇七年度に消費税率10%を政府に要望しています。年金を皮切りに医療、介護なども含めた社会保障全般の「財源」に広げ、際限のない消費税率引き上げに道を開く狙いです。

育休中の免除拡大

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 育児休業期間中に厚生年金保険料が免除(本人と事業主負担分)される制度は現在、子どもが1歳になるまで認められています。これを、「3歳未満」に拡充します。

 また、育児のため勤務時間を短縮したことにより賃金が下がる場合には、育児期間前の賃金に応じた保険料が納付されたものとみなす配慮措置が新たに盛り込まれました。これによって賃金低下による年金給付の低下を防ぐことができます。

 育児休業法では、子どもが一歳になるまで、休業するか、休業しない場合は勤務時間を短縮することができます。休業した場合の厚生年金保険料は、本人・事業主負担とも免除されています。01年の同法改正で、勤務時間の短縮できる対象年齢が、1歳未満から3歳未満に拡充されましたが、それに対応する年金保険料の免除措置はとられていませんでした。

家計を直撃

消費に重圧、将来不安

 改悪は公務員の加入する共済組合などすべての公的年金に及び、厚生年金と同様の保険料引き上げ、給付減を求めることになります。公的年金加入者は七千八十万人。この家計を直撃する年金改悪は個人消費全体を冷やし、不況に追い打ちをかけることになります。

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 厚生年金保険料の引き上げによる初年度(〇四年度十月実施)の民間サラリーマンの負担増は約千三百億円(半年分)。共済年金、国民年金も同様の引き上げ率とすれば、厚生年金を含めた保険料負担増は〇五年度で年間約七千億円にもなります。厚生労働省の試算によると、二〇一五年度時点で五兆円の負担増を見込んでいます。

 さらに物価下落にスライドさせた給付減額を〇四年度まで二年連続で実施。こうした年金改悪による負担増、給付減額は三年間あわせて二兆円規模に達します。

 景気悪化で国内の雇用者の所得(雇用者報酬、国民経済計算から)は、消費税増税・医療改悪があった九七年度の二百八十一兆四千億円から年平均三兆円規模で減りつづけ、〇二年度は二百六十四兆円にまで低下。勤労者世帯の家計収入も九七年から〇三年まで六年連続で落ち込み、月額にして七万円も減りました。

 今回の年金改悪は、冷えこんでいる家計に重い負担増、給付減を押しつけ、将来不安をひろげるもので、経済への悪影響ははかりしれません。

保険料免除を4段階に

 政府改悪案では、国民年金保険料の申請免除制度を2006年7月から4段階の免除制度にする、としています。

 現行制度は、全額免除と半額免除。保険料が免除されると、将来受け取る給付額も各段階に応じて削減されます。

 全額免除一本だった制度を現行の2段階に変えたときに、免除が認められず、約110万人の未納者が生まれたことが、日本共産党の小池晃議員の質問で明らかになっています。

 4段階にした場合、全額免除だった人が4分の3免除にされ、4分の1の保険料負担を求められるケースも予想されます。

 免除を4つに分ける所得基準については、今後策定する政令で定めるとしています。

遺族年金の見直し

 夫と死別した妻が厚生年金に加入していた場合、老後の厚生年金(報酬比例部分)は、夫が受け取るはずだった厚生年金の4分の3にあたる遺族年金か、自分の厚生年金かを選択することになります。男性に比べて現役中の女性の賃金は各段に低いため、女性の厚生年金が遺族年金より少なくなるケースが多く、働いて保険料を負担してきたのに厚生年金の受け取りを放棄しなければならないという問題がありました。

 このため、妻は自らの厚生年金を全額受給したうえで、従来の給付額との差額を遺族厚生年金として追加支給するしくみに改めるとしています。

 子どものいない30歳未満の妻の場合、現行は夫の死亡時から65歳になるまで遺族厚生年金が支給されていますが、これを5年間だけの有期給付に切り替えるとしました。


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