日本共産党

2004年2月3日(火)「しんぶん赤旗」

児童虐待事件急増なのに

深刻な相談所の実態

施設も人員も不足


 大阪府岸和田市の虐待事件で児童相談所の対応が問題になっています。児童相談所は児童虐待への対応で中心的役割を果たしています。職員を確保するための財源や、地域にどれだけ配置するかは、国の政治が大きくかかわっています。いま、どうなっているのでしょうか。(江刺尚子記者)

表

 「児童虐待の事件が増え、期待が強くなっていますが、実際の児童相談所は組織も施設も人も、とても貧しい状態です」

 こう話すのは児童相談所で二十年以上働いている児童福祉司の女性。「毎日対応に追われ、仕事が深夜におよんだり、休日の呼び出しもしばしばです。休職や早期退職が増えています」といいます。

十数年で22倍に

 児童相談所は、十八歳までの子どもにかんする相談を受け、家庭への援助をおこなう行政機関で、全国にあります。虐待だけでなく、非行や不登校、障害や健康、しつけの問題など、子どもにかんするあらゆる相談を扱っています。

 近年は、児童虐待の相談が急増。厚労省調べで、二〇〇二年に児童相談所が処理した虐待件数は二万四千件にのぼりました。虐待件数を調べ始めた一九九〇年の二十二倍です。

 それにたいし児童相談所は百八十二カ所(二〇〇三年)です。単純に計算して一カ所で毎年百三十件以上の相談をかかえることになります。過密状態にもかかわらず、児童虐待防止法が施行された二〇〇〇年以後の三年間で八カ所しか増えていません。最も多い東京で十一カ所、県内に一―三カ所しかないところが半数以上です。

基準30%下回る

 もともと児童相談所の設置は、「人口五十万人に最低一カ所程度」というのが国基準(「児童相談所運営指針」)です。基準どおりなら全国二百五十五カ所が必要ですが、それを30%も下回る現状です。

 相談にあたる児童福祉司は、全国で千七百三十三人です。一人あたりの相談件数は児童虐待の相談だけで、年間十四件を扱うことになります。相談はほかにもあり、各児童相談所は慢性的な人不足になっています。児童福祉司の「人口十万―十三万人に一人」という配置基準は、四十年以上も前のものです。この改善は政治の責任として急務となっています。

 社会の複雑な問題に対応できる児童福祉司の育成も切実です。

 前出の女性はいいます。「親に、相談をして解決する意欲があるとは限りません。ケースによっては職員を攻撃してくることもある。私自身、母親に殴られたことがありました。親が反対しても子どもを親から引き離して保護しなければならない場合もあります。そうした判断やノウハウが、いまの児童相談所に十分あるとはいえません。専門職員の配置や育成は不十分なのが実態です」

「国は財政措置を」 日本共産党が要求

 日本共産党の石井郁子衆院議員は青少年問題に関する特別委員会(〇三年四月二十三日)で国際的にも遅れている実態をとりあげました。イギリスの児童虐待防止制度は、日本の二十倍もの専門職員を配置し手厚い体制をとっています。「基準の見直しを含め、抜本的な大幅増設と、児童福祉司の増員が非常に急がれる」と政府の対応の重要性を強調しました。

 八田ひろ子参院議員は総務委員会(〇一年三月)で、「法的権限をもっている児童相談所の充実と、運営の中心になる児童福祉司の増員は不可欠。そのための財政措置を」と要求しました。

 これにたいして片山虎之助総務相(当時)は「厚生労働省ともよく相談し、本当に地方が必要な経費なら交付税に入れることはやぶさかではない」と答えました。


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