日本共産党

2004年1月31日(土)「しんぶん赤旗」

中医協

診療報酬で審議決裂

医師会と健保連 包括払い導入で対立


 医療サービスの公定価格となる診療報酬の改定作業をすすめている中央社会保険医療協議会の総会が三十日午前、厚生労働省内で開かれ、新しい支払い方式の導入をめぐって医療機関側と保険支払い側の意見が対立。合意にいたらず審議は決裂したまま閉会する異常事態となりました。

 診療報酬の改定率については昨年末に、本体の医療サービス(医師の技術料、手術・検査代など)はプラスマイナスゼロで現状維持とし、薬剤引き下げ分のマイナス1%で合意しました。年明けから、ゼロ改定の枠内で具体的な見直し内容が審議されています。

 重点的な見直し項目のうち小児医療の充実や精神医療の評価については合意したものの、入院医療にたいする包括払い方式(診断群分類別包括評価、DPC)の導入を民間病院にも広げることが対立点となりました。

 総会では対馬忠明・健康保険組合連合会常務理事が「一番重点を置いてきた。民間病院への拡大について(医師会側は)誠意のない回答しかない」と審議打ち切り、改定作業の中止を要求。日本医師会の青柳俊副会長は「医療の質と安全を十分確保して導入するのが改定の基本方針だ。DPCの影響を十分検証したい」と反論。星野進保・中医協会長は「意見の隔たりが大きい」とのべ、とりまとめにむけた双方の努力を求めたうえ短時間で閉会を宣言しました。


解説

効率化優先に現場の不安

 患者の病気を治すためにかかった医療費を公的医療保険から病院・診療所に支払うさい、医療行為の単価は診療報酬として国が決める仕組みになっています。この支払い方式を、かかった医療行為(診察・検査など)の単価を積み上げて算定する出来高方式を今後縮小し、包括払いを広げていくかどうかが、今回の中医協の審議の最終盤になってするどい対決点となりました。

 包括払いの徹底は、財界が医療費抑制の切り札の一つとして診療報酬改革の目玉にしているものです。現在すすめている診断群分類別包括評価(DPC)は、〇二年度の診療報酬改定で導入が決まり、昨年から大学の付属病院など十病院で入院患者を対象に試行され、データーを収集中です。今回の改定でこの試行を民間病院を含め九十二病院に拡大することが提案されました。

 DPCは、病気ごとに検査、投薬、入院などの料金を一括した定額払いとするものです。入院の場合、日にちがすぎるほど報酬額が下がっていく逓減方式としており、在院日数をできるだけ短くして、患者の回転を早くするほど収入増になる仕掛けです。定額払いなので医療のコストを下げるほど収入を上げるという経営上の効果が期待されているため、現場からは必要な医療までカットする「過小診療」の問題点が指摘されています。「医療の質、安全にかかわる」と医師会が指摘している理由も、ここにあります。

 中医協の審議(二十八日)でしめされた試行途中の病院への調査結果にたいし、医師会側は、医療の質、安全にたいする不安を消すだけのデーターがないと主張。これにたいし支払い側の日立製作所取締役の宗岡広太郎委員は「調査が不十分かもしれないが何を心配しているのか」(同日)とのべ、効率優先で民間病院への早期導入を強く求めました。

 財界は包括払いを今後、入院だけでなく外来にも広げていくことを要求しています。民間病院への拡大について医師会側との対立はするどく、この日の総会でも、「脅迫に聞こえる」(医師会)、「食い逃げ」(健保連)など感情的な言葉も飛び交い、合意の見通しはまったくたっていません。

 (斉藤亜津紫記者)


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