日本共産党

2004年1月29日(木)「しんぶん赤旗」

献金テコに政治支配

日本経団連

消費税増税、大企業減税…

政党丸ごと買収で多国籍企業奉仕国家へ


 企業の政治献金を「あっせん」するために経済団体が政党を格付けすることは「世界で初めてのこと」(日本経団連事務局幹部)―二十八日、日本経団連は政治献金「あっせん」再開のための政党“通信簿”(政党政策評価)を発表しました。財界が直接政治に口を出し、カネの力で支配下におく戦略がいよいよ実践段階に入りました。


保守「二大政党」づくり狙う

写真
企業献金は「廃止を含めて見直すべきである」とうたった経団連会長・副会長会議の「企業献金に関する考え方」=1993年9月2日

 今回の発表は、日本経団連が「与野党双方の政策と実績を評価した上で、企業・団体が判断する際の参考となるガイドラインを作成する」(『活力と魅力溢(あふ)れる日本をめざして』、いわゆる「奥田ビジョン」)としてから一年目のこと。 日本経団連の狙いは何か。

何を競わす

 まず、大企業、とくに多国籍企業の利潤追求に合わせた国づくりをすすめるために各党に政策を競い合わせることです。

 「奥田ビジョン」では、「企業は生産拠点を世界中どこへでも自由に移動することができる」「日本の企業のみならず、海外の企業が国内で事業を行うことを選択するよう、日本が二十一世紀の国際制度間競争に勝利することが何よりも必要である」と強調。十項目の政党評価の優先政策事項には、この考え方が貫かれています。

 献金をテコにした悪政の競い合わせは、消費税増税へ向けた自民、民主の政策にすでに現れています。

「漂流船」が…

 さらに、奥田会長自身が「私は、二大政党論者」と公言しているように、財界の意のままに動く保守「二大政党制」をつくることです。

 今回の政治献金「あっせん」再開と、以前の政治献金との大きな違いは、野党の民主党にも献金のひもをつけるところにあります。

 国民にリストラと倒産、社会保障の負担増を押しつける小泉「構造改革」は、従来の自民党の支持基盤を掘り崩しています。自民・公明政権の受け皿づくりは、財界にとって死活の課題です。

 財界ジャーナリストは、昨年の総選挙結果を受けた財界は、「漂流船が二大政党制という港にたどり着いたという喜びに包まれている」といいます。

 献金をテコにした財界本位の二大政党づくりは、“漂流船”を、いつでも乗り換え自由な二つの船にすることにほかなりません。舵(かじ)を握るのが財界なら、どちらの船でもかまわないというわけです。


献金「あっせん」再開への動き

 1993年

  9月2日 政治献金あっせん中止を決定

 2002年

  5月28日 経団連と日経連が統合して日本経団連が発足。奥田碩会長が「カネも出すが、口も出す」と発言

 2003年

  1月1日 「奥田ビジョン」で政治献金「あっせん」再開を打ち出す

 2003年

  9月25日 政治献金「あっせん」のための優先政策事項を発表

  12月16日 政治献金の「申し合わせ」発表

 2004年

  1月28日 政治献金ガイドラインを発表


「廃止」の世論に逆行

企業・団体献金―禁止しかない これだけの理由

 「企業献金については、(略)一定期間の後、廃止を含めて見直すべきである」

 当時の経団連が一九九三年九月、企業献金のあっせん取りやめを決めたさいに発表した「企業献金に関する考え方」のなかの一文です。リクルート・佐川急便事件など相次ぐ金権スキャンダルで「政治とカネ」に世論の批判が集中したからです。

 それから十年。奥田碩会長(トヨタ自動車会長)のもとで日本経団連が選択したのは、企業献金の廃止ではなく、形を変えた企業献金「あっせん」の再開でした。

露骨な見返り期待

 日本経団連は、各政党の政策評価にもとづく企業の政治献金は(1)政策本位の政治の実現への貢献(2)議会制民主主義の健全な発展への貢献(3)政治資金の透明性向上への貢献−の三点から極めて重要(〇三年九月二十五日の文書)などと正当化しようとしています。

 しかし、これはごまかしです。企業献金はもともとワイロ性の強いものです。リクルート事件のころ、財界人は「企業献金はそれ自体が利益誘導的な性格を持っている」(当時の亀井正夫住友電工会長、「東京」一九八九年一月一日付)、「企業が政治に金を出せば必ず見返りを期待する」(当時の石原俊経済同友会代表幹事、「日経」八九年六月三日付)と認めていました。

 献金の見返りを求めれば増収賄罪に問われます。見返りを期待しない献金をすれば、営利を目的にした会社に損害を与えたとして背任罪に問われます。株主訴訟の対象にもなります。

 個別企業が政治家個人に見返りを求めて献金すれば罪になるが、日本経団連が政党を丸ごと「政治買収」すれば、「透明」で罪に問われないとはおかしな理屈です。しかも、今回ほど露骨に見返りを期待した献金はありません。“赤信号みんなで渡ればこわくない”です。

 財界がいう「政策本位」とは、財界・大企業本位の政策をカネの力で実現しようということ。財界の政治支配は「議会制民主主義」をはなはだしくゆがめることになります。

企業に参政権なし

 もともと企業には選挙権はなく、政治に参加する権利はありません。現憲法のもと主権は国民にあります。献金も主権者である国民の重要な政治参加の手段です。

 経済力をもつ企業や産業団体の政治献金の政党にたいする影響力は、個々の国民の政治献金よりはるかに大きく、「国民の有する選挙権ないし参政権を実質的に侵害する恐れがある」(〇三年二月十二日、福井地方裁判所の熊谷組株主代表訴訟事件判決)との判決もあります。いかなる形であれ、企業・団体献金は日本共産党が主張するように禁止しかありません。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp