日本共産党

2004年1月22日(木)「しんぶん赤旗」

諫早湾干拓“開門調査実施せよ”

研究者9氏が声明 農水省に手渡す


 諫早湾干拓事業で、東幹夫・長崎大学教授ら研究者九氏が二十一日、「農水省は科学的行政推進の立場から中・長期開門調査を実施すべきである」との共同声明を発表し、農水省に手渡しました。

 宇野木早苗・元東海大教授、佐々木克之・元水産総合研究センター室長が農水省内で記者会見した後、担当局の中條整備部長に会い、開門調査実施の可否について科学的に判断するよう求めました。

 九氏が共同声明を出すのは今回で三回目。一回目は、昨年十二月十五日に中・長期開門調査検討会議の専門委員会報告書案について開門調査に否定的見解のどこが間違いなのか、開門調査がなぜ必要なのかを指摘したもので、百六十一人の研究者が賛同しています。二回目(同二十二日)は、専門委員会の親委員会である同検討会議の報告書素案の問題点を検討し、開門調査の必要性を強調しています。

 しかし、先月二十五日にまとまった検討会議の最終報告書は、共同声明の指摘をまったく無視して、開門調査に否定的なものでした。

 農水省はこれを踏まえて近い将来、開門調査の可否を判断する運びです。このため、九氏は急ぎ声明を出すことにしたものです。

 声明は、有明海再生のために開門調査が避けて通れないとする科学的根拠をあげ、農水省が「科学的立場から検討し直し、国民に十分な説明責任を果たすとともに、有明海百年の計を誤らない判断をされるよう訴える」とのべています。


解説

第三者委員会の見解尊重し急ぎ調査を

 開門調査には次のような経過があります。

 諫早湾干拓事業で諫早湾を閉め切ったために、三千五百五十ヘクタールもの広大な干潟・浅海域が消失し、浄化機能と魚介類の生育の場が奪われました。この閉め切りによって潮流や潮位も変化し、底生動物や魚介類の減少が指摘されました。二〇〇〇年冬から〇一年春にかけて有明海全域で赤潮が大発生、ノリが大凶作になりました。漁民は諫早湾を閉め切った影響を指摘し、水門の開放を要求。農水省は第三者委員会を設置し、ノリ不作などの原因究明を求めました。

 第三者委員会は、干拓事業が「有明海全体の環境に影響を与えていると想定され」「開門調査はその検証に役立つと考えられる」との「見解」を発表。二カ月程度の短期調査、半年から二−三年の中・長期調査を提言しました。

 しかし、農水省は一カ月に満たない短期開門調査を実施しただけです。昨年三月、第三者委員会の解散とほぼ同時に、農水省は、公平性が問われる官僚OBばかりの中長期開門調査検討会議を設置。その論点整理の報告を得て判断するとしてきました。

 同検討会議の報告書は「開門調査をしても、干拓事業の影響をうることは困難」だとか、海の現象は複雑で調査してもわからないといった調査研究否定論がやはり色濃く述べられていました。

 九氏の共同声明は、こうした見解のどこが誤っているかを具体的に示しました。しかし、いまだ反論もない、と農水省の説明責任の欠如を指摘しています。

 第三者委員会の清水誠・元委員長は、開門調査をやれば、干拓事業が「有明海の環境に及ぼす影響の手がかりは得られるはずだ」「(第三者委員会の)『見解』は今も何ら変わらない」と地元紙に談話を寄せています。この間、農水大臣は「第三者委員会の結論を尊重する」と再三約束してきたところです。農水省は急ぎ開門調査を実施すべきです。

 (松橋隆司記者)


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