日本共産党

2004年1月19日(月)「しんぶん赤旗」

農業脅かすWTOを批判

食料主権の保障を討論

世界社会フォーラム


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世界社会フォーラムの「土地、水、食料の主権」会議=17日、ムンバイ(菅原啓撮影)

 【ムンバイ=菅原啓】インドのムンバイで開催されている第四回世界社会フォーラムは二日目の十七日から、テーマ別のセミナーや分科会などで本格的な討論を開始しました。

 フォーラム組織委員会主催で約三千人が参加した会議「土地、水、食料の主権」では、「大企業による水の汚染は放置されたまま。世界貿易機関(WTO)は残されたきれいな水を大企業が支配する体制づくりをねらっている」(インド代表)など、WTOに批判が集中しました。

 タイの農業ネットワークの代表は、貿易自由化で輸出向け生産物の生産を強いられた農民たちが、高い肥料や農薬の使用によって借金づけにされている実態を報告。WTOが押し付けてきた「輸出市場向け生産」から、自国の食料生産を第一に考えた生産に切り替えるべきだと主張しました。

 国際農民団体ビア・カンペシーナのラファエル・アレグリア国際書記は、WTOや国際通貨基金(IMF)が推進する市場開放など新自由主義政策の結果、世界の圧倒的多数の農民が貧困にあえいでいる状況を告発しました。

 同氏は、昨年九月のカンクン(メキシコ)でのWTO閣僚会議が宣言をまとめられず決裂したことを、世界の農民たちのたたかいの勝利だと宣言。さらに運動を強め、「国連機関が食料主権の保障と貧困削減のためにしかるべき役割を果たすよう圧力をかけていこう」と呼びかけ、大きな拍手を浴びました。

 国際NGO(非政府組織)「フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス」が開いた円卓会議は、食料主権を脅かす現在の経済体制に代わる「新たな体制」を築くため、労働者、農民、消費者がどのように共同するかというテーマにしぼって議論しました。

 チリの農民代表は、一握りの大企業が種子の独占を図り、世界の農業生産を支配下においていることを批判。種子を守ることは「農民だけの問題ではなく世界の国民の問題。人類の遺産である農業を守る大連合をつくろう。それは世界を変えるたたかいです」と訴えました。

 イタリアの消費者運動の代表は、「WTOをつぶせ」という議論に対して、すべての国々を対等に扱い、透明で民主的なWTOに改革することが重要だと指摘。カンクン会議以降、米国が二国間協定という形態でさらに露骨な貿易自由化をすすめているもとで、これに対抗する唯一の道は「WTOの民主的な改革だ」と強調しました。


IMFが教育まで介入!?

グローバル化と国際機関の責任は

 【ムンバイ=菅原啓】インドのムンバイで開催されている世界社会フォーラムの一環として、グローバル化(経済の地球規模化)と国際機関の責任に関するセミナーが開かれました。

 討論では、「各国内で銀行が教育政策に口をはさむことはないのに国際通貨基金(IMF)や世界銀行は他国の教育政策にまで介入してくる」「国際機関の会議に非政府組織(NGO)の参加が認められるようになったが、まだ形だけで不十分だ」など、国際機関への注文や批判が相次ぎました。

 ジンバブエのNGO代表ヤシュ・タンドン氏は、米英両国が国連安保理の承認を得ずにイラク戦争を強行したことを例に、「国連憲章を顧みない大国による政策決定がなされている」と非難。加盟国多数の意見を聞かない単独行動主義に反対し多国間主義を守るためアナン国連事務総長がさらに奮闘すべきだと強調しました。

 「市民参加のための世界連合」(南アフリカ共和国)のクミ・ナイドゥ事務局長は、人口規模がもはや大きくなくなった英国やフランスがいまだに国連安保理で拒否権をもつ現行制度の問題点を列挙。第二次世界大戦後の力関係をもとにつくられた国連や国際経済機関のしくみを「抜本的に変革するために市民社会が運動をまきおこそう」と訴えました。

 セミナーは、公正なグローバル化を保証する方策に向けて議論を進めることを目的に国際労働機関(ILO)が設立した「グローバル化の社会的側面に関する世界委員会」(〇二年二月発足)が主催。各国政府や国際機関の幹部など含め約三百人が出席しました。


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