日本共産党

2004年1月19日(月)「しんぶん赤旗」

ムダな高速道路 全路線を建設へ

首相、「抜本見直し」発言のまやかし


 道路関係四公団民営化案の決定に続いて、税金を投入して建設する「新直轄方式」の高速道路路線(第一次)が昨年末にばたばたと決められました。“ムダな道路は造らない”と叫んできた小泉純一郎首相の公約はどうなったのでしょうか。 (深山直人記者)


“赤字”でも税金を投入

地図

 「一回の会議で、新直轄の七、八割の予算を決めてしまうのは性急だ。国民への説明責任が果たせるとは思えない」

 昨年十二月二十五日に開かれた、高速道路の建設計画を決める「国土開発幹線自動車道建設会議」(国交相の諮問会議)。民間人の委員からこんな批判の声が上がりました。

新直轄方式で建設する計画

 トヨタ自動車の奥田碩会長(日本経団連会長)らが出席した国幹会議にかけられたのは、高速道路整備計画(九千三百四十二キロ)で未整備の二十七区間(総延長六百九十九キロ)。採算性が低い“赤字路線”を新直轄方式で建設する計画でした。

 総事業費は二兆四千億円。政府・与党が合意している新直轄方式による建設枠三兆円の八割に該当します。

通行料では半分も返せず

表

 未整備区間は全体で七十区間(約二千キロ)。このうち四割近くを国民負担で建設するという重大な方針転換を、わずか一回の審議で決めるよう提案してきたのです。

 もともと七十区間のほとんどが“赤字路線”。国交省の調べでも、うち六十四区間が通行料収入だけでは建設費の半分も返すことができません。

 仮に通行料金を無料にして利用しやすくしたとしても、三十四区間は一日の通行台数が一万台にも満たないと見込まれています。道路建設の有用性さえ疑わしい区間が少なくありません。

 今回、新直轄に指定した二十七区間をみても、採算性などから国交省が下した評価(AからDまで四段階評価)でAとされたのは一つもなく、五区間がB評価となっただけで、あとは事実上の“落第点”となるCやD評価ばかりでした。

 こうした状況に照らせば、高速道路全体で四十兆円もの巨額債務を抱えながら道路整備計画をこのまま続けていいのか、時間をかけた慎重審議が求められたはずでした。

 ところが「性急だ」という声が出たにもかかわらず、審議はわずか四十五分で打ち切り。二十人の委員のうち二人をのぞく賛成多数でさっさと計画を承認してしまったのです。

自公と民主の2委員も賛成

 国会議員から選ばれている自民、公明の委員は全員が賛成、民主も三人中二人が賛成に回りました。

 税金投入で建設する二十七区間には、わずか三日前の政府・与党協議会(十二月二十二日)で、「抜本的見直し区間」と決めたはずの三区間が、新直轄方式による建設推進路線のなかにちゃっかり盛り込まれていました。

 この三区間は、北海道縦貫自動車道(士別市―名寄市)など総延長百八キロ、総事業費千八百四十億円。料金収入で道路の管理費さえ賄えず、借金が増え続けると国交省自身が評価した区間です。

写真
圏央道あきる野インターシェンジの建設現場=東京・あきる野市

 これら三区間について、小泉首相は「言葉通り抜本的に見直す。今まで通りは無理」と豪語。国交省も「見直しが終わるまで建設は凍結」(道路局)としていました。

 しかし、国幹会議で国交省からは何の説明もありませんでした。

 公団民営化の政府案を了承した昨年十二月二十二日の自民党の道路調査会・国土交通部会合同会議では、こんな一幕もありました。

 抜本的「見直し」に指定された区間の地元議員から「四十年間も建設を待っている。なぜ差別するのか」(武部勤元農相・衆院北海道十二区選出)などと反発する声が相次いだのです。そのとき古賀誠道路調査会長がこう断言しました。「凍結ではない。九千三百四十二キロを造るのは当然だ」

 結局、この言葉通り、国幹会議の決定で全路線建設へ向けて大きく踏み出しました。首相のいう「抜本的見直し」はまったくのまやかしだったのです。

 国民の批判を恐れて政府・与党は、二十兆円の建設費を十三・五兆円まで削減する方針を打ち出しました。しかし、具体的裏付けも乏しく、実現性は怪しいものです。

 ムダな道路は造らない、国民に借金を押しつけないという道路公団改革の原点は完全に投げ捨てられました。

 採決で反対した井田由美委員(日本テレビアナウンス部次長)は会議終了後、「三日前に造らないといっていたのが、何の説明もないまま造ることになった。納税者の納得を得られないと思う」と取材陣に語りました。


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