日本共産党

2003年12月27日(土)「しんぶん赤旗」

「一件落着」とはいえない

JR採用差別事件最高裁判決

全動労弁護団 加藤健次事務局長


 最高裁は二十二日、国労および全動労組合員に対するJR採用差別事件について、「JRに法的責任はない」として中央労働委員会と組合側の上告を棄却する不当判決を出した。五人の裁判官のうち二人の裁判官が反対意見を述べている。この反対意見の存在は、運動と世論を反映したものであり、判決の結論(多数意見)がいかに事実と道理に反するかを浮き彫りにしている。

正当な反対意見

 本件の最大の争点は、JRの職員の選定の過程で、国鉄が不当労働行為を行った場合に、JRが使用者として不当労働行為責任を負うかどうかということであった。

 多数意見は、国鉄改革法で、名簿作成は国鉄が、名簿登載者からの採用決定はJRの設立委員がそれぞれ行うと規定されているというきわめて形式的な理由をあげて、国鉄の名簿作成行為と設立委員の採用行為を完全に切り離し、国鉄が名簿作成において組合差別をしてもJRが責任を負う立場にはないと結論づけた。

 これに対し、反対意見は、名簿作成もJR職員の採用という過程の一部にすぎないことや、国会審議で政府が国鉄の立場をJRの「補助者」「代行」「委任」などの言葉で説明していることなどを根拠に、国鉄はJRを補助すべき立場にあったのだから、国鉄が組合差別を行ったときはJRは使用者として不当労働行為責任を負うという正当な判断を示した。

 また、全動労事件の反対意見は、国鉄改革は「国是」だから組合員に対する差別的取り扱いがされても不当労働行為にはならないという東京高裁判決の判断を明確に否定し、本件では「全動労に所属することのみを理由として」「差別的な取扱いがなされたことが一応推認される」として、さらに審理を尽くすために破棄差し戻しを主張している。

 今回の判決で、JRの不当労働行為を認定した中労委命令の取り消しが確定する。しかし、これをもって採用差別事件が「一件落着」したとは到底いえない。判決は、国内外で大きな矛盾を引き起こさざるを得ない。

 一つは、国鉄改革の正当性にかかわる問題である。国鉄改革法の審議における政府の答弁や附帯決議は、国鉄改革法が団結権を保障した憲法二八条に違反するのではないかといった追及に対し、これを正当化するためになされたものである。

国会軽視の多数意見

 今回の判決は、少数意見が鋭く指摘する通り、「国会の審議を軽視し、国民の国会審議に対する信頼を損なうもの」にほかならない。そして、そのことは国鉄改革の正当性や国鉄改革法の合憲性に対する疑義につながらざるを得ないのである。

 もう一つは、ILO(国際労働機関)にかかわる問題である。今年六月のILO勧告は、採用差別事件が「結社の自由原則、すなわち、採用における差別待遇の点から極めて重大な問題」であるとし、「緊急」の課題として「政府と関係当事者が可能な限り最大多数の労働者に受け容れられる公正な解決を見いだす方向で努力を追求する」ことを強く求めている。今回の判決は、この勧告に反するものとして国際的批判を免れない。

 また、採用差別事件の解決についての日本政府の責任があらためて問われることになる。問題解決のための政府の責任がいよいよ重くなった。(かとう けんじ)


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