日本共産党

2003年12月27日(土)「しんぶん赤旗」

“親の年金が生活の頼りなのに”

なぜ免除認められない

学生無年金障害者に保険料支払い催告状


 「重い障害で働けず収入がないのに、なぜ保険料を免除してくれないのか」。仙台市青葉区の松原透さん(42)は、繰り返し送られてくる国民年金保険料納付催告状を手に悲痛な声をあげています。学生無年金障害者にも免除を認めず支払いを迫る実態は…。(鈴木進一記者)

 透さんは、東北大学四年の一九八六年九月、二十四歳で発病した特発性ジストニア(筋緊張異常症)が原因で重度の障害となりました。一種一級の障害者手帳を持っています。

免除制度の改悪

 しかし、透さんは、発病した学生のとき国民年金に加入していないという理由で、障害基礎年金を支給されません。

 透さんは、父の寿美(としみ)さん(71)、母の禎子さん(68)との三人暮らし。禎子さんは、パーキンソン病で治療中です。教師だった寿美さんの退職共済年金と禎子さんの老齢基礎年金が一家の収入源です。

 透さんの国民年金保険料は免除されていました。ところが、免除制度が、昨年四月から改悪されて、ハードルが高くなりました。透さんは、全額免除を申請しましたが認められず、半額免除にされました。「全額免除にしてほしい」と審査請求をしましたが、棄却され、再審査請求も棄却されました。

 保険料免除が拒否された透さんのもとに、保険料支払いの催告状が繰り返し送付されてきています。十一月十八日付の催告状では、昨年四月から今年九月分までの未納分十三万九千六百五十円の納付を求めています。

 厚労省、社会保険庁は保険料未納者に対し、強制徴収の方向を打ち出し、十月から強制徴収のための最終催告状を発送しはじめています。今回の強制徴収は、二〇〇一年度に免除されていた人は対象外としているため、透さんがすぐに強制徴収される状況ではありません。

 しかし、透さんには、やがて、強制徴収の対象にされるのではないかという不安があります。

 松原さん父子はいいます。

 「年金がこれほど冷酷な制度とは。こんな制度とは縁を切りたいほどの思いだ」

任意加入のときに

 学生は、一九九一年三月末まで、二十歳以上でも加入してもしなくてもよいという任意加入の扱いでした。透さんと同様ほとんどの学生は加入しませんでした。未加入の間にけがや病気で障害になっても障害基礎年金が支給されないという問題が生まれました。学生無年金障害者問題です。

 障害年金不支給というのはおかしい、と全国三十八人の学生無年金障害者が審査請求しました。透さんもこれに参加、審査請求が退けられると再審査請求し、これも棄却されました。全国で三十人が裁判で争っています。透さんには、裁判への道もありましたが、断念しました。

 もし、透さんに障害基礎年金が支給されていたなら、法定免除とされ、保険料は当然に免除されます。

全額免除133万人減

 保険料免除には、障害年金受給者、生活保護法による生活扶助を受けている人などに適用する法定免除と、申請免除とがあります。二〇〇〇年の法改悪で〇二年四月から申請免除の中に、全額免除に加え半額免除が新設されるなど大きく変わり、「納付することが著しく困難であると認められるとき」という行政側の裁量規定がなくなるなど、全額免除の適用が厳しくなりました。

 社会保険庁によると申請全額免除の人が、二〇〇一年度末に二百七十七万人だったのが〇二年度百四十四万人へと百三十三万人も減少しています。

 日本共産党の小池晃議員は十月九日の参院厚生労働委員会で、免除制度の改悪で約百十万人の未納者が生まれていると試算し追及しました。

 透さんのようなケースで未納になっている人が多いことを示しています。

 〇四年年金改悪に向けた厚労省案では、現在の全額免除、半額免除の二段階免除から、「所得水準に応じた多段階免除制度の導入」を打ち出しています。しかし、透さんのような、親の年金だけが収入源という障害者からまで徴収する冷たい制度を変えることこそ必要です。


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