日本共産党

2003年12月26日(金)「しんぶん赤旗」

価格に消費税含む「総額表示」

公正取引委が警戒呼びかけ

大手小売、買いたたきの恐れ


来年4月に実施

 商品価格に消費税を含んだ「総額表示」を義務付けた改定消費税法が来年四月から実施されます。実施を前に、大手小売業の納入業者や下請け取引業者からは納入価格・下請け単価が切り下げられることへの懸念が高まっています。公正取引委員会はこれにかかわる独占禁止法(独禁法)違反の事例を示して警戒をよびかけました。

写真

東京都内の商店街

 消費税の「総額表示」については、消費税額を見えにくくする、実施は多額の費用負担と混乱をもたらす――などと関係業界から出された厳しい批判を無視して政府が強行するものです。さらに、この表示のやり方は、大手スーパーなどと納入業者の間に「仕入れ価格たたき」など不公正取引を引き起こす懸念も高めています。

 ハムや乳業、菓子、しょうゆなどの製造業企業や業界組合でつくる食品産業センター(財団法人)は十一月下旬、日本チェーンストア協会と公正取引委員会、農林水産省に消費税の総額表示に関連した申し入れをおこないました。

 申し入れ書によると、消費税を含めた価格表示の義務付けにより消費者に「(商品の)割高感が生ずることを避けるため」、大規模小売業者が現在の税抜き・本体価格をそのまま消費税込み価格として販売しようと、「一方的な納入価格の引き下げ」を納入業者に押しつけるよう動くのではないか、との懸念を表明。「大規模小売業者の優越的地位の乱用行為が生じないよう」公取委や農水省に対処を求めました。

 製造業やサービス業の委託・下請け取引でも、前回の消費税引き上げの際に「消費税分」の単価引き下げ要請などがおこなわれています。

相談窓口を設置

 これらの動きを受け、公正取引委員会は今月三日、「改正消費税法に基づく『総額表示方式』の実施に当たっての独占禁止法及び関係法令に関するQ&Aについて」と題する文書を発表。どのような行為が優越的地位の乱用にあたる行為になるのか、具体的事例を挙げて明示しました(別項)。そのうえで違反にたいしては「厳正に対処」するとし、公正取引委員会事務総局など全国九カ所に個別相談窓口を設置。商工会議所、商工会でも公正取引委員会に相談を取り次ぐとしています。

 独禁法上違反となる行為の具体的事例には▽総額表示に伴う一方的な仕入れ価格の引き下げ▽表示の値札変更にともなう納入業者への不利押しつけなどが示されています。


◆事例1◆仕入れ価格の引き下げ

  消費税総額を表示価格とすると、消費者に値上げしたかのような印象を与えるため、従来の税抜き価格をそのまま税込みの販売価格として用いることとし、その分、納入業者からの仕入れ価格を引き下げたい。

  小売業者自身が実質的に価格を値下げして売ることは問題ないが、この値下げのために納入業者からの仕入れ価格を一方的に引き下げることは優越的地位の乱用として独占禁止法に違反する(下請法では「買いたたき」に該当する)恐れがある。

◆事例2◆値札の税込み価格の要請

  納入業者には小売価格(税抜き)を記載した値札をつけて納品してもらっている。総額表示の義務化に伴い、税込み価格を記載した値札を付けて納品してもらうようにしたい。

  納入業者が値札の変更をおこなうために費用が必要となるにもかかわらず、その費用をまったく負担せず、または、考慮することなく、一方的に仕入れ価格を決めることは、独禁法に違反の恐れ。

◆事例3◆仕入れ価格の端数切捨て

  総額表示の義務付けに伴い、納入業者への発注書面も税込み価格でおこないたい。その際、仕入れ単価に生じる一円未満の端数を切り捨てた価格で発注する。

  端数切り捨ての仕入れ単価を一方的に定めることは独禁法違反(下請法では「買いたたき」)の恐れ。

◆事例4◆値札付替えの従業員派遣

  総額表示に伴い、3月末から4月にかけて店舗中の商品の値札を税込み価格に付け替えたい。ついては付け替える商品を納入した業者から従業員を派遣してもらい、実施したい。

  派遣の条件、対象商品などについて納入業者と十分協議することなく、一方的に派遣を要請することは独禁法違反(来年4月1日から施行される改正下請法では「不当な経済上の利益の提供要請」)の恐れ。


 〈注〉いずれも小売業者が納入業者にたいして取引上優越的地位にある場合の例。「取引上優越的地位にある」とは、取引の継続が困難となることで経営上大きな支障をきたすために、当該納入業者にとって小売業者の要請が著しく不利益なものであっても、受け入れざるをえないような場合のこと。


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