日本共産党

2003年12月23日(火)「しんぶん赤旗」

「規制改革」答申 問題点を見る

労災保険が営利優先に

医薬品販売 副作用の危険野放し


 総合規制改革会議が二十二日、首相に提出した最終答申のうち主な事項の内容、問題点は――。

労災保険の「民間開放」

 労災保険を、すでに民営化されている自賠責保険と同様に民営化の検討を打ち出しました。災害リスクに応じた業種ごとの保険料率の設定や労災病院など労働福祉事業の見直しも求めています。

 一部委員は、労災保険の民間開放について「労災の安全網の改善などに貢献するとは考えられない」と反対しました。

 労災保険は、労働者が業務上の災害にあったさい、事業主の負担で療養をおこなったり、あるいは労働者か遺族に一定の金額が支給される制度。全事業主が労働保険料を支払い、事業主の集団責任で、労働者への補償を確実におこなおうというものです。そのため保険料を払わない事業主にたいしては国が強制徴収の権限も持っている「強制保険」となっています。

 それを営利優先の民間保険会社にまかせれば、保険料を支払わない事業所はもちろん、経営悪化で滞納しそうな事業所も加入させないという事態になりかねません。

 改革会議の議論では、災害が少ないサービス業の保険料負担が高すぎると論議されました。経営者にとっては、労災保険を民間にまかせることで保険料を安上がりにすることができます。民間保険会社は、広大な市場を手に入れ、損害調査や契約事務処理の経費も含め、大もうけできる仕組みです。

医薬品のコンビニ販売

 コンビニエンスストアなど、薬剤師のいない一般小売店での医薬品販売について、厚生労働省は、整腸薬など約三百五十品目を認めました。答申は「薬効成分を変えることなく、医薬部外品として一般小売店での販売を認める措置を直ちに講ずべきである」として、二〇〇四年早期の実施を求めています。

 すでにビタミン含有保健剤など十五製品群が、一九九九年から「医薬部外品」として、コンビニなどで販売されています。医薬品販売を薬剤師のいる薬局・薬店に限定しているのは、副作用の危険を常にともなうため、薬剤師が服用の方法を説明する必要があるからです。コンビニなどで医薬品が販売されれば、こうした危険が野放しになります。地域の中小薬局・薬店の営業にも深刻な影響を与えかねません。

「混合診療」の解禁

 保険がきく診療と適用外の自由診療を併用する「混合診療」について、「新しい医療技術」も「『混合診療』を包括的に認める制度の導入をはかるべき」だとしています。

 いま、保険診療と保険外診療を合わせておこなった場合、診療費用は、全額患者の自己負担です。「混合診療」が新しく認められた分野では、保険診療の分は、保険でまかなわれることになります。

 しかし、逆に保険診療の範囲を小さくして、自由診療の範囲が大幅に拡大される可能性もあります。結果的に、患者負担の増大を招き、「お金がないため必要な医療が受けられない」という事態に拍車がかかることにもなりかねません。

幼稚園保育所一元化

 現在、幼稚園と保育所は制度の違いから、調理室や運動場などの施設設置、職員一人あたりの子どもの数、利用時間などの基準が異なっています。答申は、「構造改革特区」において両者の行政を一元化し、どちらか一方にのみ課されている規制については「緩和・撤廃すべき」だとしました。その例として、保育所のみに義務付けられている調理室設置義務の廃止をあげています。

 全国的な措置として、満三歳からとなっている幼稚園の入園年齢制限について、「緩和を図るべき」としました。しかし、幼稚園は全年齢が一学級三十五人ですが、保育園は年齢ごとに職員配置が違い、二歳児の場合は職員一人に子ども六人です。

 幼稚園の定数三十五のままで入園年齢を引き下げれば、子どもたちの成長・発達を保障できるのか心配されます。

「公物管理」の見直し

 「公共施設・サービスの民間開放の促進」、いわゆる「公物管理」の見直しを求めています。

 道路、河川、都市公園、港湾、下水道などは国や地方自治体の管理・運営です。答申では、その法的根拠を緩和・撤廃して、公共施設などの「民間による管理・運営の促進」「道路占有、使用許可の弾力化」などを要求しています。たとえば、河川の両側をオープンカフェやイベントに開放する、公園の地下に駐車場を設ける、道路にふたをして建物をつくる案など。

 同会議の第二次答申(〇二年十二月)では、民間参入の対象を水道事業、地方税の徴収、刑務所など十九分野をあげています。今回の答申は公共サービス、施設をいっそう営利の対象にする突破口にするものです。


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