日本共産党

2003年12月20日(土)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい特集

経団連、同友会首脳ずらり

政府審議会

大企業本位の政策実現迫る


図

 財界首脳が網の目のように政府の審議会などに加わり、国家機構全体を自分たちの利益実現のために最大限利用している実態が、十九日までの本紙の調査で浮き彫りになりました。

 経済運営や財政・予算編成の方針をまとめている経済財政諮問会議には、日本経団連の奥田碩会長とともに、経済同友会の牛尾治朗元代表幹事が参加し、財界の要求実現を迫っています。

 また各省庁が所管している審議会でも財界人が委員をつとめています。日本経団連の奥田会長は、産業構造審議会の会長、交通政策審議会の会長を兼任しています。産業構造審議会は、大企業本位の産業構造づくりを進めています。交通政策審議会は、道路、空港、港湾など交通政策全般にわたる問題を取り扱っています。

 奥田会長と経済同友会の北城恪太郎代表幹事とがコンビで入っている審議会が、国土開発幹線自動車道建設会議、財政制度等審議会と二つもあります。


 「〇〇審議会が答申を首相に出しました」「〇〇審議会の委員長は、政府に強く政策の実行を求めました」……。すでに決定された政策であるかのように、商業メディアが大々的に報道します。実は、これらの審議会のメンバーの多くが大企業の役員で、日本経団連や経済同友会などの首脳・幹部をつとめる財界人たちです。日本の政策立案が、財界によって決定されるような状況がつくられているのです。これでは、まるで財界管理国家です。

利益に直結、産業政策

 国の経済運営を決めている経済財政諮問会議(1面所報)のほかにも、金融、財政、産業、規制緩和、労働分野などの主な審議会に財界人がメンバーとして参加しています。

 とくに目立つのは産業政策分野です。財界・大企業にとって産業政策はみずからの利益に直結します。

 企業活動にとって障害になる各種の規制を取り払うことを提言している総合規制改革会議の議長は、経済同友会の宮内義彦副代表幹事(オリックス会長)です。労働、教育、医療、福祉、農業分野の規制を「緩和・撤廃しろ」と主張していますが、委員十五人のうち、消費者や労働者の代表は一人もいません。

私的懇談会の形でも

 審議会とは別に、首相や大臣の私的懇談会の形で政策立案をおこなうこともあります。労働者をリストラすればするほど減税される「産業再生法」は、一九九九年に小渕首相(当時)の私的懇談会としてつくられた「産業競争力会議」で財界側が要求した法律です。今井敬経団連会長(新日鉄会長)、牛尾治朗経済同友会代表幹事(ウシオ電機会長)、奥田碩トヨタ自動車社長(いずれも当時)など財界首脳がズラリとならびました。

 設立当時の経緯を今井経団連会長(当時)は、「(一月末に)小渕総理にお会いし、官民のトップが一堂に会し、官民それぞれの取り組みを率直に話し合う場の設置をお願いいたしました」と、財界の要求で発足したことを明らかにしています。その狙いについても「経済界が政府に『お願いをする』場ではなく、経済界としてコミット(関与)すべきはコミットした上で、政府に(企業活動をよりやりやすくするための)環境整備を求める場であり、政府と民間が双方向で話し合います」(一九九九年三月二十五日の講演)と大企業本位の政策実現へ向けた会議であることを露骨に語っています。

 この法律が大企業の人減らしを後押ししました。実際、一九九二年から二〇〇二年で製造業の就業者は三百四十七万人減少しましたが、そのうちの三割が〇一年、〇二年の二年間に集中しました。大企業は大もうけをあげる一方で、製造業現場でのリストラは、相次ぐ大企業での事故の背景にもなっています。

企業リストラまで

 平沼赳夫経済産業相(当時)の私的懇談会として二〇〇一年に設置された「産業競争力戦略会議」は委員十一人中十人までが奥田碩トヨタ自動車会長など財界・大企業の首脳陣でした。「競争力のない企業は、市場からの退出または強い企業への編入が円滑に進む環境を整備する」と労働者のリストラばかりでなく、“企業リストラ”まで求めました。これを受け小泉内閣は、今年四月、「産業再生法」の認定対象を拡大し、産業再編をおこなえるよう改定「産業再生法」を成立させました。

 審議会の委員 政府は審議会の構成について次のように決めています。委員は原則として二十人以内。これを上回る場合には三十人を超えないことになっています。

 また、「審議会等の運営に関する指針」は、委員によって代表される意見、学識、経験などが公正かつ均衡のとれた構成になるべきであるとしていますが、これは「留意」事項にとどまり、違反しても罰則などはありません。個人ができる委員数は最高で三つ。特段の事情がある場合でも四つを上限としています。

 また、通常の委員のほか、臨時委員、特別委員、専門委員をおくことができます。

 臨時委員とは、特別の事項に関する調査審議にたいして意思決定の議決権を持っています。これにたいして特別委員は議決権を持っていません。

 専門委員は、専門の事項を調査するために置かれる補助的職員で、意思決定への議決権は持っていません。


財界ポストを制限し、民主化

日本共産党は提案します

 日本共産党は、かねてから財界・大企業の代表が国の重要な政策決定にかかわる審議会に支配的なポストを占めていることについて、少数者による権力集中をやめさせることを求めています。

 すでに、『新日本経済への提言』(一九九四年)では、「政府の審議会などの構成を民主化し、その決定や、立案される政策、計画などから大企業が直接大きな利益を引き出すことを防止するため、大企業、財界団体の代表の参加を制限する」ことを求めています。

 そして「各審議会により、大企業・財界団体の代表のポストを、三分の一以下、あるいは四分の一以下に制限すること、同一大企業の代表が複数の審議会には入れないことなどを実行する必要がある」と強調しています。


かけもち こんなに

奥田碩 日本経団連会長 ・トヨタ自動車 会長

 ・経済財政諮問会議 議員

 ・産業構造審議会 会長

 ・交通政策審議会 会長

 ・国土開発幹線自動車道建設会議 委員

 ・社会保障審議会 委員

 ・財政制度等審議会 臨時委員

北城恪太郎 経済同友会代表 幹事・日本IBM会長

 ・関税・外国為替等審議会 委員

 ・国土開発幹線自動車道建設会議 委員

 ・財政制度等審議会 臨時委員

 ・国家公務員倫理審査会 委員


金融

●金融審議会

<会長代理>

片田 哲也 日本経団連前副会長 小松製作所相談役特別顧問

規制緩和

●総合規制改革会議

<議長>

宮内 義彦 経済同友会副代表幹事 オリックス会長

<委員>

河野 栄子 経済同友会副代表幹事 リクルート会長

高原慶一朗 日本経団連評議員会副議長 ユニ・チャーム会長

労働

●労働政策審議会

<使用者代表委員>

安西 邦夫 日本経団連人事労務管理委員会委員長 東京ガス会長

柴田 昌治 日本経団連副会長 日本ガイシ会長

寺田千代乃 関西経済同友会代表幹事 アートコーポレーション社長

樋口 公啓 日本経団連広報委員会委員長 東京海上火災保険相談役

矢野 弘典 日本経団連専務理事

財政・社会保障・税制など

●財政制度等審議会

<会長代理>

西室 泰三 日本経団連副会長 東芝会長

<委員>

井上 礼之 関西経済連合会副会長 ダイキン工業会長

柴田 昌治 日本経団連副会長 日本ガイシ会長

立石 信雄 日本経団連国際労働委員会委員長 オムロン相談役

宮原 賢次 日本経団連副会長 住友商事会長

●社会保障審議会

<委員>

奥田  碩 日本経団連会長 トヨタ自動車会長

●税制調査会

<委員>

千速  晃 日本経団連副会長 新日本製鉄会長

●関税・外国為替等審議会

<委員>

北城恪太郎 経済同友会代表幹事 日本IBM会長

三木 繁光 日本経団連副会長 東京三菱銀行頭取

御手洗冨士夫 日本経団連副会長 キヤノン社長

宮原 賢次 日本経団連副会長 住友商事会長

産業政策

●産業構造審議会

<会長>

奥田  碩 日本経団連会長 トヨタ自動車会長

<委員>

宮原 賢次 日本経団連副会長 住友商事会長

河野 栄子 経済同友会副代表幹事 リクルート会長

森下 洋一 日本経団連評議員会議長 松下電器会長

●郵政行政審議会

<会長>

森下 洋一 日本経団連評議員会議長 松下電器会長

<委員>

柴田 昌治 日本経団連副会長 日本ガイシ会長

西室 泰三 日本経団連副会長 東芝会長

●国土開発幹線自動車道建設会議

<学識経験者>

奥田  碩 日本経団連会長 トヨタ自動車会長

御手洗冨士夫 日本経団連副会長 キヤノン社長

北城恪太郎 経済同友会代表幹事 日本IBM会長

上村多恵子 京都経済同友会常任幹事

●交通政策審議会

<会長>

奥田  碩 日本経団連会長 トヨタ自動車会長

●食料・農業・農村政策審議会

<専門委員>

立花  宏 日本経団連常務理事


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