日本共産党

2003年12月18日(木)「しんぶん赤旗」

お年寄りにしわ寄せ

家計から税吸い上げ、大企業に

自民・公明税制「改正」大綱


 自民、公明の小泉内閣与党による来年度税制「改正」大綱が十七日、まとまりました。その中身は、庶民には増税で負担を押し付け、大企業・大銀行には減税で負担軽減という逆立ちそのもの。来年度税制「改正」で、ねらい撃ちされているのは、高齢者です。(山田英明記者)


庶民増税

表

 大綱は、老年者控除の廃止と公的年金等控除の廃止を盛り込みました。

 現在、六十五歳以上の高齢者の所得から年間五十万円を一律に控除しているのが老年者控除。そして、所得税算出の際に、公的年金の年間受け取り額から最低年百四十万円(六十五歳以上の人の場合)を差し引くのが公的年金等控除です。

 与党は、老年者控除を廃止し、六十五歳以上の高齢者の公的年金等控除の最低保障額を百二十万円に減額。定額部分も半額にすることを求めています。

 これらの両控除の廃止で、六十五歳以上の夫婦世帯(夫の年金収入が二百五十万円、妻の年金は八十万円)では、所得税は年間で二・九万円の負担増になります。それだけではありません。税法上の所得が増えたために、住民税二・四万円、国民健康保険料一・四万円、夫の介護保険料一・九万円、妻の介護保険料一万円がそれぞれ増加。総額九・六万円の負担増になります。また、夫の年金収入が百八十万円(妻の年金八十万円)の世帯では、国民健康保険料が一・四万円増加します。

 今年すでに、介護保険料が値上げされました。来年には、所得税の配偶者特別控除が廃止され、年金の物価スライドも実施されます。

 与党は、老年者と公的年金等の両控除の廃止・縮小を二〇〇五年から実施すると大綱に明記しました。高齢者へ痛みがじりじりと押しつけられることになります。


大企業・大銀行減税

不良債権処理を加速

グラフ

 高齢者に増税の痛みを押し付ける一方、大銀行・大企業には減税の甘い汁を吸わせようとするのが自民・公明両党による大綱です。

 トヨタ自動車など大企業の多くは、九月期の中間決算でも空前の利益をあげています。連結納税制度は、大企業が大幅な黒字でも子会社が赤字なら法人税額を軽減することができます。大綱は、同制度による税収減を緩和するために設けられた連結付加税の廃止を求めました。大企業グループは減税の恩恵を受けることになります。

 大綱は、不良債権処理で生じた赤字を、翌年以降の黒字と相殺できる繰越控除の適用期間を五年から七年に延長し、さらに、対象の赤字を二〇〇一年度の発生分にさかのぼって認めることを求めています。これらの「改正」によって、不良債権を処理した銀行が優遇されます。

 小泉自公政権によって不良債権処理が強引に推し進められ、中小企業は倒産や銀行による貸し渋り、貸しはがしに苦しんできました。与党がまとめた大綱は、税制上の優遇で不良債権処理を支援し、中小企業つぶしにさらに拍車をかけるものです。


消費税

07年増税へ本音出た

グラグ

 大綱は、「〇七年度から消費税を含めた抜本的税制改革を実現する」と明記しました。「抜本的改革」とは消費税率の引き上げを検討するということです。

 来年度税制「改正」にむけた与党内の議論では、社会保障財源をどこに求めるかという議論が焦点でした。

 とくに、基礎年金の国庫負担を三分の一から二分の一に引き上げる問題では、「(三年間の)任期中は(消費税率を)上げない」との小泉首相の方針のもとで議論が難航。結局、国庫負担引き上げを今後五年間かかって実施することにし、その財源の一部を、公的年金等控除と老年者控除の縮減に求めるものの、年金財源の「抜本改革」は先送りでした。

 「『もうこれ以上、予算を削減するのはやめてくれ』というときに初めて財源がないから消費税を上げるというのなら分かる」(九月二十二日)との小泉首相の発言どおり、国民にまず悲鳴を上げさせ、消費税増税の環境をつくるという段取り。自民党税調の議論は「将来的には税率引き上げを前提に、消費税で」という議論が大勢を占めました。町村信孝小委員長は「年金など社会保障の財源は消費税に求めるしかない」と語っています。

 政府税調の石弘光会長も、こうした議論を「つなぎで公的年金等控除、老年者控除(の縮減)をやって、そのあと消費税値上げだというストーリーは、苦肉の策だ」と解説しています。

 日本経団連も、〇七年から消費税を10%にというシナリオを考え、政府税調の石会長も年金財源を「すっきりさせるなら消費税しかない」と迫っています。

 財界と政府・与党が一体ですすめる消費税増税の足場づくり。大綱には、いよいよ彼らの本音が表に現れてきました。


税の原則

能力に応じた負担こそ

 自民・公明両党が示したのは、国民にいっそうの増税を押し付け、不況のもとでも空前の利益をあげる大企業に、いっそうの減税をもたらす逆立ちした税制「改正」大綱です。

 近代社会が確立してきた税や負担のあり方は、「所得や資産に応じて」「生計費非課税」という原則です。与党が示した大綱は、これらの原則に真っ向から逆行するものです。

 なかでも与党が、将来的に増加が予想される社会保障関係費の財源のためにとして打ち出した消費税増税は、低所得者の負担をますます重くする弱い者いじめです。

 日本共産党は、負担できる能力に応じて負担するという近代社会が確立してきた経済民主主義の大原則にたった改革で、大企業や高額所得者に応分の負担をもとめ、消費税増税に頼るのではなく、社会保障の財源を安定的に確保することを提案しています。


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