日本共産党

2003年12月12日(金)「しんぶん赤旗」

暮らし、福祉にしわ寄せ

国の補助金1兆円削減


削減される主な国庫補助・負担金など

 厚労省 公立保育所運営費、介護保険事務費
 文科省 義務教育費国庫負担金の退職・児童手当、公立学校施設整備費
 国交省 公営住宅建設費、地方道路整備臨時交付金、下水道事業費
 農水省 農業委員会交付金、農業農村整備事業、中山間地域等直接支払交付金
 経産省 地域再生産業集積対策事業費
 環境省 廃棄物処理施設整備費

 小泉首相が指示していた国庫補助負担金の一兆円削減問題は十日、政府・与党内の折衝が山を越しました。公立保育所運営費(千七百億円)を削減して一般財源化(地方に移管)する一方、生活保護費や児童扶養手当の補助率カットは〇五年度実施に先送りする方向です。補助金の多数を占める暮らしや福祉の制度が切り捨て対象とされ、小泉内閣は「三位一体」の掛け声で今後も削減対象をひろげていく計画。暮らしへのしわ寄せは避けられません。

公立保育所

1700億円削減、サービス低下に拍車

 公立保育所運営費の国庫負担金千七百億円を削減することで、保育の現場はどうなるのか。

 「今年度から障害児保育の補助金が一般財源化されましたが、それを理由にやめてしまう自治体も出ています。国庫負担金の削減で、保育水準が後退するのではないか」

 こう話すのは、全国保育団体連絡会の上野さと子会長です。

 公立と私立の認可保育所は全国に二万二千カ所あり、その運営費は、保護者からの保育料と国・自治体からの公費で賄っています。

 国庫負担(今年度は約四千二百二十億円)が公費の二分の一を占めます。公立保育所分を削減することは、国の財政責任の大幅な後退です。

 国庫負担は、国の最低基準に基づくものです。国の基準では保育料が高く(〇―二歳児で最高月八万円)、保育士の配置も不十分なため、各地方自治体が独自に負担して、保育料を下げたり保育士の配置を手厚くするなどしています。それだけに、自治体の財政責任が増せば、自治体が独自負担分を削ることで、保育料が値上げされたり保育士が減らされることなどが懸念されています。

 また、現在も公立保育所の民営化が問題になっています。先の上野さんは、国庫負担の削減で、「民営化など保育への公的責任の後退に拍車がかかる」と指摘します。

 小泉内閣の「骨太の方針」では、幼稚園と保育所を「一体としてとらえた一貫した総合施設」について二〇〇六年度までに検討し、その中で「関連する負担金の一般財源化」も検討します。公立保育所の国庫負担削減は、私立も含めた国庫負担削減の突破口になりかねません。

生活保護

批判広がり切下げ見送り

05年度の実施ねらう

 生活保護費の国庫負担率を四分の三から三分の二に引き下げる案(千六百八十一億円の削減)は、当初から、国民や地方団体の厳しい反発を招きました。

 全国知事会と全国市長会は「国の責任の後退を意味するものであり、単なる地方への負担転嫁」「弱い立場にある住民の生活に大きな悪影響を及ぼす」(十一月二十八日の「緊急意見」)と訴えました。

 憲法二五条の生存権を保障する制度に対する国庫負担削減という暴挙への批判が広がる中で、政府は来年度の実施断念に追い込まれたのです。

 しかし、補助金削減は来年度の一兆円だけではなく、三年間で四兆円です。財務省が削減対象にあげている国庫負担金(一般会計)の中でも、生活保護は四番目に大きい額(今年度一兆五千億円)となっています。

 坂口厚労相も、生活保護の国庫負担削減について、「今年にするか、来年にするか、再来年というのもあり得るが、そんなに違わない」と話していました(二日の記者会見)。これは、来年度以降も、国庫負担削減の検討は避けられないというものです。

 全国生活と健康を守る会連合会の辻清二事務局長は、「生活保護では老齢加算廃止や給付抑制などの圧力も強まっています。国庫負担削減を許さない世論と運動を広げたい」と話しています。

義務教育費の退職・児童手当

国庫負担金から除外

 公立小中学校の教職員の人件費の半分を国が負担する義務教育費国庫負担金(二兆八千億円)については、退職・児童手当への補助金二千三百億円が対象となりました。使途が地方に任される一般財源化が検討されていましたが、国庫負担金から外して「税源移譲予定交付金」(仮称)に切り替えることで決着しました。

 「教員の退職は今後増える。一般財源化しても地方の自由度は広がらないし、単なる負担の転嫁だ」(全国知事会)と反対する地方の声を無視できず、「交付金」として国の関与を一定残したことになります。

 しかし、政府はこれを「突破口」に教員給与そのものを一般財源化したい考え。「地方の自由度を高める」ことを大義名分にして一般財源化すれば、教員の削減や給与水準の引き下げの道を開くことにもなります。

 地方の財政力によって教育内容に格差が生じることを容認するもので、国の責任ですべての子どもたちにゆきとどいた教育を保障する義務教育制度を危うくするものです。

 全国都道府県教育委員長協議会や日本PTA全国協議会など教育関係十八団体は十一日、都内で緊急集会を開き、義務教育費国庫負担制度の堅持を求める決議をあげ、官邸や財務省に申し入れました。

4兆円カットの突破口

「三位一体」というが地方への税源移譲縮小

 国庫補助負担金の一兆円削減を決める一方で、国から地方への「税源移譲」は、たばこ税を軸にその半分にも満たない方向です。

 これまで財務、総務両省が合意した来年度の税源移譲額は四千二百億円。

 このうち二千億円は今年度に実施ずみの補助金削減にともなうもので、来年度の補助金削減一兆円削減に伴う税源移譲額はわずか二千二百億円となる方向です。

 もともと小泉内閣が掲げる「税源移譲」は、補助金削減分の「八割程度」しか地方に渡さない方針です。義務教育など地方で継続する事業についても「徹底的な効率化」が前提です。

 一方で、ムダ遣いの「ひもつき補助金」の中心を占める公共事業の補助金については温存・拡大をねらっています。

 例えば、各地で破たんしている駅前開発などに使われてきた補助金「まちづくり総合支援事業費」(今年度五百三十億円)は、「まちづくり交付金」に看板をかけ替えて継続します。

 小泉内閣は「骨太方針」(六月閣議決定)で、二〇〇六年度までに補助金を四兆円削減することを打ち出しています。

 スタートとなる来年度の一兆円削減は、その突破口となるものです。


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