日本共産党

2003年12月8日(月)「しんぶん赤旗」

石原リストラ

都立大存廃の危機

立ち上がる教職員、学生、都民ら


 東京の都立の四大学(都立大学、短期大学、科学技術大学、保健科学大学)がいま、石原都政が打ち出した強権的なリストラ方針によって大学の存廃にかかわる危機にさらされています。(東京総局 室伏敦記者)


石原知事が協議無視

計画を一方的に押し付け

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学内で開かれた公開シンポジウムで発言する学生=9月28日、東京・八王子市都立大学キャンパス

 石原慎太郎知事は八月一日の記者会見で、大学側の代表も入って具体化が進められていた大学改革の大綱を突然一方的に破棄し、新しい構想で新大学をつくる計画を発表。以後、都は「大学改廃、設置は設置者の権限」として、大学側の批判、提案に耳を貸さず、強引に計画を進めています。

 「(都の姿勢は)設置手続き上、また市民常識的にも、正当なものだとは到底言えない」―都立大学の茂木俊彦総長が十月七日に発表した声明(「新大学設立準備体制の速やかな再構築を求める」)は、都がそれまで不十分ながらも大学と協議を重ねてきた経過を放り出し、強権的な対応に豹変(ひょうへん)したことを、異例の強い調子で批判しました。

 都大学管理本部は新構想発表後、新大学構想の具体化のために教学準備委員会を設置。そこに参加する学長・学部長らには、大学の代表としてではなく、あくまで「個人として」加わること、構想に積極的に賛同し、内容を口外しないことを求めました。

 さらに四大学の全教員の仮配置計画(助手を除く)を示し、全教員に「配置案に同意する」「内容を口外しない」などという同意書を新大学設立本部長あてに提出するよう求めました。

 「設置者権限」を盾にとって大学関係者の批判を一切聞かずに大学廃止と新構想を押し付け、その賛同者だけで具体化を進め個々の教員には「同意書」という名の“踏み絵”を踏ませるやり方に怒りが広がっています。

 都立大学生自治会が十月に実施した全学生アンケートでは86・5%が新大学構想に反対。82%が都から情報がないことを批判し、87%が学生の声は「まったく反映されていない」と答えました。

全国に悪影響も

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石原都政の強権的な「新大学」構想に大揺れに揺れる東京都立大学=東京・八王子市

 石原知事は、二〇〇〇年六月の所信表明で、「新しい大学のモデルを東京から発信することにより、…日本の教育を変える引き金にしたい」と発言しました。

 ところがその内容といえば、文部科学省が「国・公立大学独立行政法人化」の名で進める大学への支配・介入の動きを先取りしていっそう乱暴なやり方を押し付けるものでしかありません。

 ことしの七月には、経営効率化と大学の管理強化のために公立の大学を独立行政法人化できる法律(地方独立行政法人法)が制定されました。

 横浜市で中田市長が、一般会計からの横浜市立大学への支出を「赤字」だとし、横浜市大の私学売却か廃校をちらつかせながら「改革」を迫るなど公立大学の再編が全国各地で進められています。東京の強権的な大学「改革」は全国に大きな悪影響を与えかねません。

広く都民ら「会」結成

満席のシンポジウム

 九月二十八日、十一月一日、同二十五日と相次いで開かれた都立大学問題での公開シンポジウムは、それぞれ満員の参加者が会場を埋めました。

 十一月二十五日のシンポジウムでは、「現にある大学を廃止して新大学をつくるなど、都の改革は全国でも異例」「地方独立行政法人法の国会付帯決議は、『憲法が保障する学問の自由と大学の自治を侵すことがないよう、大学の自主性・自律性を最大限発揮しうるための措置を講ずる』ことを自治体に求めている。石原知事はそれに反している」などの指摘が相次ぎました。

 学生自治会の抗議声明(十月十日)、文系、理学、工学の助手会の相次ぐ質問書提出など、連日のように、教職員、助手、学生・院生の質問や抗議、批判が都に寄せられ、各種の集会が開かれています。

 「開かれた大学改革を求める会」など学生や院生、助手の組織が相次いでつくられ、それぞれ運動を進めつつ共同を強めています。十一月一日には広く都民も参加した「都立の大学を考える都民の会」が結成されました。各大学だけでなくマスコミにも批判が広がり、同意書の強要は事実上意味を失いつつあります。

 都立大学の築いてきた研究成果が失われることへの懸念、新大学構想への不安から、国内や海外で活動している都立大OBなどからも、都に抗議や要請のメール、ファクスが殺到。歴史学研究会や朝鮮史研究会幹事会が抗議声明を発表するなど、都の姿勢への怒りは学外にも広がっています。


都の「新大学」構想とは

 都の構想する新大学は二〇〇五年四月開校予定(大学院は〇六年)で、都市教養、都市環境、システムデザイン、保健福祉の四学部(仮称)と全寮制の「東京塾」を設置するもの。初年度学生募集数は千五百十人。教員定数は四大学の八百六十七人から五百十五人に減らします。

 「都市教養学部」は、現在の都立大の人文、法、経済、理、工の各学部を解体統合。外国文学系の教員の多くは研究室を追われて語学を担当し、教員定数を超える人員として扱われます。都は進学塾大手の河合塾に同学部の理念づくりなどを委託する方針。批判の声が高まっています。

 教員には不安定な任期制を導入。現在の人事・給与体系を選択することもできますが、その場合、現在の給与で据え置かれ、昇任もありません。

 七月まで都は、大学代表も入った新大学準備委員会で協議を進め、人文、法、経済、理、工、保健科学の六学部と大学院、法科大学院などを内容とする新大学の骨格をつくっていました。ところが都はこれとは別に、数名の有識者で秘密裏に検討を進め、八月一日に「都立の新しい大学の構想」を発表しました。

 十一月には新大学の理事予定者に、九九年都知事選時の石原知事の確認団体「『NO』と言える東京をつくる会」代表の高橋宏郵船航空サービス取締役相談役を決定しました。


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