日本共産党

2003年12月4日(木)「しんぶん赤旗」

ついに武井会長逮捕

武富士 のしあがり ウラ構図


 創業者で、ワンマン経営者である武井保雄会長(73)が電気通信事業法違反(盗聴)という容疑で逮捕されたサラ金最大手の「武富士」。日本経済でその位置をみると驚きます。日本経団連加盟。東証一部上場。申告所得は東京三菱銀行などをはるかにしのいで全企業の十一位。武井容疑者自身が日本一の資産家…。高金利商法でそこまでのしあがれた背景には何があったのでしょうか。


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盗聴事件で捜索がおこなわれた武富士本社=2日、東京・新宿区

 「武富士」は、武井容疑者が一代で築きました。出発は団地の主婦相手の“高利貸し”商売でした。

 「なぜ団地金融か。…都営住宅は一度入居するとなかなか引っ越さないため、逃げられる心配がなかった」。武井容疑者が、武富士の社内報(二〇〇一年九月発行)でそうふりかえっています。貸し付けは高利。社員を猛烈に働かせ、取り立てを徹底。現在の武富士のひながたです。

 1・85%。現在の武富士が金融機関などから調達する資金の平均金利です。この金を利息制限法(15−20%)を超える違法金利で貸し付けるという、貸せば貸すだけもうかる構造のもとで武富士は急成長してきました。

 社会的な批判も受ける異常な商法。それを政治・経済・社会で“一流企業”に見せる仕掛けをつくってきました。

 武富士は九六年に株式を店頭公開、九八年東証一部に上場、昨年、日本経団連への入会が認められました。

 同社でブロック長などの要職を務めた元社員はいいます。「武井容疑者の個人商店が、上場企業にまでなった。あいさつが悪いからクビにするような会社なのに…」



政官財界工作 暴力団から助力

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会長の逮捕を受け、会見で頭を下げる武富士=2日夜

 社会的に認知を得るにはさまざまな工作が必要でした。

 武富士は、株式店頭公開の準備で、元大蔵省銀行局長を監査役に迎えました。警察からも、元警視総監が顧問に入っています。公開すれば高値をつけると見られていた同社の未公開株が、元銀行局長、元警視総監のほか、小川新一郎元公明党衆院議員、元大蔵省関税局長、日本テレビ専務、経済評論家らに渡りました。

 武富士は、監督官庁の旧大蔵省や証券会社幹部を何人も役員に迎えました。現在の副会長は元大蔵省印刷局長、社長は主幹事証券の野村證券元専務です。

 店頭公開では一方で、右翼などの街宣活動などをおさえるために、右翼・暴力団に解決依頼していたことも民事訴訟で事実認定されています。そのために億を超える資金が流れました。

 ことしになって、武富士と警察のあいだで犯歴やサラ金借り入れ状況などの情報がやりとりされ、約一千枚のビール券が同社から警察に渡っていたことも明らかになりました。

 武富士は、週刊誌などに批判記事が出ると、高額の損害賠償訴訟をしかけました。一億一千万円の賠償訴訟を武富士に起こされているフリージャーナリストの三宅勝久さんは「札束と司法を悪用した批判封じで、まともな議論は一つもない。許せない」と話します。

 逮捕容疑の盗聴の対象者は、同社に批判的な記事を書いたとみられたフリージャーナリストでした。

 武井容疑者はまた、高金利維持のために政界工作するサラ金業界の政治団体に献金。この政治団体は自民、公明、民主各党の八十四人から約九百三十一万円の政治資金パーティー券を購入しています。政界工作もまた、高金利商法継続のためでした。


共産党・「赤旗」の追及 恐れていた

 日本共産党は、ことし四月に佐々木憲昭衆院議員が武富士の過大なノルマと違法業務、五月に宮本岳志参院議員が武富士と警察の癒着問題を追及してきました。武富士はある裁判のなかで「現在、武富士に三つの方向から攻撃がされている」とし、そのひとつとして「日本共産党が、政治方針として原告に対して行っている」などとのべています。日本共産党や本紙の追及を恐れていたのです。


サラ金CMの中止

問われるテレビ局

 武富士会長逮捕で、テレビにあふれているサラ金CMの中止の問題が、改めて問われています。

 民間放送局でつくる日本民間放送連盟(民放連)では、武富士のCMが今後どうなるかについて、「加盟各社の判断」としています。

 民放連は「放送基準をもとに作られている各社の番組基準に照らして自主的に判断すること。放送基準は、CMの表現を定めたもので、不祥事があったから、取りやめようとか、民放連が決めるという仕組みではない」と話し、とくにこの問題で正式なコメントはないとしています。

 テレビ局では武富士CMの自粛の動きが広がっています。東京のあるキー局広報部では「代理店からの中止要請があった。間に合うところから、別なものに変えているところだ。CMの変更は、なかなか作業的にも大変だが、広告収入の面からも心配だ」と説明しています。

 盗聴事件の発覚した直後には、専務逮捕後の十一月十五日から十七日までの三日間、広告代理店の要請で在京民放キー局が武富士のCMを中止しました。「なぜ三日間だけなのか」と批判の声が出ていました。

 サラ金CMをめぐっては、民放連は青少年に配慮するとした「見解」を発表。十月から午後五時から九時までの時間帯で自粛するという方針を打ち出していました。

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武富士をめぐる主な動き

 【1996年】

      小瀧国夫元専務が同社幹部ら7人の盗聴を始める

 8月   武富士が店頭公開

 【1998年】

 12月   武富士が東証一部に上場

 【2000年】

 3月   ロンドン証券取引所に上場

 6月   小瀧元専務が退任

 8月   中川一博元課長らが、武富士常務ら6人の盗聴を始める

 12月   中川元課長らジャーナリストの盗聴開始(01月2月まで)

 【2001年】

 1月   別のジャーナリストの盗聴開始(同年2月まで)     

 【2003年】

 4月22日 武富士の内部資料を利用した現金1億円恐喝未遂容疑で親子逮捕

 5月21日 警視庁、中川元課長ら4人も同容疑で逮捕

 6月9日 中川元課長、拘置理由開示で「武井会長の指示で盗聴」と陳述

   10日 警視庁、中川元課長を内部資料を持ち出したとして業務上横領容疑で再逮捕

 7月18日 武富士への情報漏えいで元署長を書類送検。3人を戒告などの処分に

 10月24日 電気通信事業法違反の容疑で横浜の探偵社を家宅捜索

 11月14日 小瀧元専務ら5人を同容疑で逮捕。本社を家宅捜索

 12月2日 武井保雄会長を同容疑で逮捕


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