日本共産党

2003年11月20日(木)「しんぶん赤旗」

社会リポート

学童保育全廃で開始 全児童対策事業

相次ぐ重大事故

川崎市

スタッフ不足 目届かず


 川崎市が今年四月から公立小学校で、学童保育を廃止して始めた「全児童対策事業」(わくわくプラザ)で十一日、一年生の男児(6っ)が建物二階の窓から転落し頭がい骨を骨折する事故が起きました。全国的にも、同市のような事業をすすめる動きが強まっており、安全対策を含め問題を指摘する声が出ています。(南関東総局 芦川章子記者)


 事故は川崎市川崎区の市立東大島小学校の「わくわくプラザ」で起きました。同プラザは約八十人の児童に対し、スタッフは七人。うち二人は体育館に、四人は建物一階でおやつを食べている約六十人を見ていました。二階で約二十人を見ていた一人が用事で一階に降りた間の転落事故でした。

 ここの運営を任されている社会福祉法人「青丘社」(せいきゅうしゃ)は、保育園での保育の実績などをもとに、手作りおやつを出すなど積極的に取り組んでいました。それだけに、事故は父母らに衝撃を与えました。

 「川崎には『わくわく』があるから安心して働けると思っていたのに、事故が起きてから不安でたまりません。家で一人で待たせていたほうがいいのでしょうか…」。娘が来年、小学校に入学する成田裕美さん(29)=会社員=は話します。

 川崎市の「わくわくプラザ」は、「学童保育の機能を継承したもの」という考えのもと、学童保育を全廃して、市内百十四校すべての公立小学校ではじめました。

7カ月で174件

 空き教室やプレハブなどを利用し、登録した小学生であれば誰でも利用可能です。「手軽に利用できる」などの期待感から、登録児童数は十月現在で三万六千二百三十六人。在校児童の56・2%に上ります。

 現在の「わくわくプラザ」のスタッフは、一人のスタッフリーダー以外は非常勤で週三日の交代制。学童保育と違い、おとなも子どもも日々顔ぶれが変わり、現場からは「児童の数が多すぎて目が行き届かない」「子ども同士の人間関係が希薄」「スタッフと子どもの信頼関係が築けない」などの声が聞かれます。

 ある「わくわくプラザ」のスタッフは「出欠カードの記入、おやつの準備、来ない子への電話連絡などで毎日目が回る。子どもと向き合う時間もスタッフ同士の連絡の時間も十分ではない。事故がおきないよう常に神経をぴりぴりさせていますが、事故はどこでも起こりうる状況です」といいます。

 じっさい、事業開始から約七カ月間で百七十四件の事故が発生してます。うち骨折が三十三件、縫合を要する裂傷が二十五件。五月下旬には三年生の児童がブランコから落ちて頭部を骨折する事故が起きているほか、角膜剥離(はくり)、脳振盪(しんとう)による意識障害など重大事故が多発しています。

党が改善要求

 日本共産党川崎市議団は、すでに五月に「児童の安全にかかわる」として、市に対しスタッフの増員、事故に正しく対応するための体制の整備と研修の徹底など緊急改善を要望していました。父母や「わくわくプラザ」関係者らによる、市に改善を求めるとりくみもはじまりました。

 今回の事故は、「わくわくプラザ」の抜本的な改善が待ったなしであることを示しています。

低予算化狙い各地で計画

 全国学童保育連絡協議会の真田祐事務局次長の話 これほど重大事故が頻発している例は学童保育ではありません。学童保育は、働く親を持つ子どもの継続した生活の場であり、子ども一人ひとりの性格やその日の様子を把握しながら対応しています。

 「わくわく」では、専門的訓練を経ていないスタッフのもと、大勢の子どもたちが遊び場として利用しています。どういう子どもか分からずに安全を確保するのは非常に困難です。学童保育を廃止し、こういったスタッフの雇い方をしている行政の責任が問われます。

 川崎市にならえと全国で「全児童対策事業」と「学童保育事業」の一元化を計画している自治体があります。低予算で放課後児童対策をする狙いがありますが、「生活の場」である「学童保育」と、「遊びの場」である「全児童対策事業」という目的も性格も異なる二つの事業の統合はあまりにも弊害が多く、見直しが必要です。


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