日本共産党

2003年11月15日(土)「しんぶん赤旗」

え? 男8分、女1時間36分

家事労働

統計からみえる男女共同参画への道


 女性と男性にどのような社会的差異が生まれているか、男女ともにどのような働き方やくらしを求めているのか、統計やデータを性別で調べると、格差や差別を是正する方向が見えてきます。


グラフ

グラフ

国際比較 差は顕著

 横浜市南区に住む田中真理さん(25)は、家事労働時間の男女差を示した資料(グラフ1)を見て驚きます。「男性八分。女性は一時間三十六分なんですか」

 共働きの田中さんは、一歳三カ月になる息子がいます。育児の多くが真理さんにかかっています。「最近は、夫も手伝ってくれますが、洗濯物をたたむ仕事は私ばっかり」

 育児期にある夫婦の育児・家事、仕事時間の国際比較では、「仕事は男性。家事は女性」という性別役割分担が日本の場合、はっきり現れています。男性の育児、家事時間は、スウェーデンの三・七時間、ドイツの三・五時間と比べて日本は極めて少ないのです。(グラフ2)

 感覚的にはわかっていたつもりの育児の分担の男女差が、「統計を見るとよく分かります。サービス残業を減らすことも含めて、家事分担をどうすればいいか、夫と話しあってみたい」と田中さんはいいます。

見比べ議論し発見

 国立女性教育会館(ヌエック・埼玉県嵐山町)で、同会館が作成した「男女共同参画統計データブック」(2003)を使ったワークショップが八日、開かれました。五、六人のグループに分かれて、統計資料で何が分かるかと話し合います。労働の実態、一般労働者とパートの賃金格差、児童虐待、それぞれのグループが思い思いのテーマを選び、グラフや表、統計資料を見比べます。

 生産年齢人口に占める労働力人口(労働力率)の推移を調べたグループでは、M型カーブを描く女性の変化、ほぼ横ばいの男性のデータを見て、「女性がM型になるのは、結婚と育児で仕事をやめざるをえないから。育児休暇後の仕事の保障も必要よ」「育児休暇に賃金の保障があれば、安心して子どもを産み育てられる。そうすれば、働き方だって変わる」と意見が出されました。「サービス残業や過労死の実態を示すデータも欲しいわ」という声もあがりました。

 参加した女性(50)=地方公務員=は、「仕事で統計は、よく使っていますが、こうやって自分たちの生活と重ねて話し合ったことはありませんでした。みんなで話し合うと資料からいろんなことが見えてきますね」といいます。「家事や育児など、さまざまな面で女性の負担や差別があります。女性が住みやすい社会になることは、男性にとっても住みやすい社会になるはずです。そういう社会に変えるためにも、こういう資料を活用したい」と話します。

グラフ

不十分な政府統計

 内閣府・男女共同参画会議の下部組織、苦情処理・監視専門調査会が七月、一つの報告書を出しました。男女間の格差や差別の状況が把握できる統計の整備がどこまですすんでいるかを調べたものです。

 結果は、政府統計といえども性別データの収集が十分ではないことが、明らかにされました。内職収入や資産の所有・処分、負債にかかわる性別データが把握されていないこと、パートで働く女性が多い従業員三十人以下の小規模事業所での就労状況にかかわる統計も整備されていません。

 重要な問題になっているサービス残業の実態は、これまでの調査では把握できないと指摘しています。さらに、セクシャル・ハラスメントや夫・パートナーからの暴力、性犯罪、売買春など性犯罪の調査は、性別におこなわれていてもデータが公表されていないものがあるとのべています。

 国立女性教育会館の研究国際室長、中野洋恵さんは、「数字のマジック」に陥らないようにするためにも、「性別や年代別、項目別に詳しくみるデータ」の必要性を強調します。

 高校以上の進学率で女性が男性を超えたとする統計(グラフ3)を例にあげ、大学、短大、大学院別にすると、女性が多いのは短大であり、大学や大学院への進学は依然として女性が少ないと説明します。「系統的な調査をおこない、女性も男性も置かれている条件をよりよく変えていくために、どのような施策が必要か、実施した施策を評価するうえでも性別に分けておこなう調査、統計の充実が大切になっています」と話します。

 第四回国連世界女性会議(一九九五年)は、社会における女性と男性の性差や差別にかかわる社会問題を反映させるため、統計を性別、年齢別にとり、集計することを行動綱領に盛り込みました。日本では一九九九年、男女共同参画社会基本法が制定され、男女共同参画基本計画(二〇〇〇年)に、そのことが明記されました。統計を用いて現状と問題点を数量的に明示して意識を高め、変革に向けた措置を激励するものです。

 政策の立案や計画、その実行状況の監視、評価のために男女共同参画の立場にたった統計、データは欠かせません。ジェンダー(社会的、文化的に形成される性別)統計とも呼ばれています。


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