日本共産党

2003年11月4日(火)「しんぶん赤旗」

世界は軍事費削減

85年比で4割減少

紛争続く中東でも

日本だけが異常な軍拡


 「対テロ戦争」を口実にブッシュ米政権が軍事費増額の圧力をかけても、世界の多くの国々は軍事費削減の努力をしています。ソ連崩壊後の軍縮の流れに逆行し軍事費を増やし続け、世界第二位の軍事費大国に躍り出た日本の異様さが浮かび上がっています。

ソ連崩壊で欧州主要国も

表

 ソ連崩壊を契機に米国を含む世界の多数の国が軍事費を減らし、一九九〇年代は軍縮の流れが続きました。ソ連打倒のためにレーガン米政権が大軍拡をした八五年と比べると、昨年の世界の軍事費総額は63・1%と、四割近くも減っています。

 ソ連崩壊後の過去十年間をみても、欧州主要国はどこも軍事費を削減しています。

 六月発表のストックホルム国際平和研究所(SIPRI)年鑑二〇〇三年版によれば、米国の「対テロ戦争」に最も密接に参戦してきた英国でも、昨年の軍事費は一九九三年比で13%も削減されています。フランスは10%減、ドイツは14%減です。スペインとオランダは3%減。スイスは25%も減らしました。イタリアは〇一、〇二年と軍事費を削減しています。

 このうちドイツは、〇六年までの軍事支出を名目で現在の水準にとどめることを決めました。これは物価上昇を考えれば今後、軍事費が実質的に削減されることを意味します。ギリシャ、オランダ、スペイン、スウェーデンも、軍事費を実質削減する方針です。

 紛争が続く中東でも軍事費削減の動きが出ています。レバノンは〇二年、軍事費を前年比で16%削減し、今後も削減の予定です。域内のテロ増大を前に、福祉など社会部門での支出の増大を求める国民の要求に応える措置です。オマーンも〇二年の軍事費を6%減らし、一億ドルを社会福祉に回す方針を発表しました。

米の圧力に各国は従わず

 イスラエルでは、〇二年秋以降のパレスチナ人に対する軍事行動の拡大により国内総生産(GDP)は10%減り、財政赤字が拡大しています。昨年七月には、軍事予算も聖域とせず、予算を7・8%削減することを決めました。

 アルゼンチン、グアテマラ、ベネズエラなどの中南米諸国や、内戦の政治解決が進んだスリランカなどでも軍事費が削減されています。

 東アジアでは中国、韓国などが軍事費を増やしていますが、SIPRI年鑑によれば、同地域で軍事費二位、三位の両国を合計しても日本を4%下回り、日本の軍事費は群を抜いています。

 ブッシュ米政権は、軍縮に向かう世界の流れを逆転させようとしています。一昨年の9・11対米同時テロ以降は「対テロ戦争」の看板を掲げて自ら大軍拡に転じ、その波を世界中に広げようとしています。SIPRI年鑑によれば、〇二年の世界の軍事費は前年比で6%増加しました。

 増加額の75%は米国によるもの。世界の軍事費の43%を占める米国が10%増額したことが、軍事支出全体を押し上げました。しかし世界の多くの国は、米国が吹く軍拡の笛に踊っていません。

 「世界の(軍事)支出の趨勢(すうせい)をみれば、米国以外の世界は、軍事費を増大する米国の見本に従う用意も余裕もないことが示されている」―SIPRI年鑑は結論づけています。

日本は世界の流れに逆行

 日本は、こうした軍縮に向けた世界の流れに逆らい、過去十年間ほぼ一貫して年平均で三億ドル強の増加を続け、今では米国に次ぎ世界第二位の軍事費をもつに至っています。八五年比では44%も増加しました。主要国サミット参加国で八五年より軍事費を増やしているのは日本だけです。

 もし日本が、一部で対米関係上の「モデル」視される英国なみに過去十年間に軍事支出を13%削減していたら、一兆円規模の資金が捻出(ねんしゅつ)され、福祉充実にあてることができたでしょう。

 日本共産党は、「五兆円にまで膨張した軍事費を『聖域』にせず大幅軍縮に転換させ」、年金など福祉拡充の財源にあてるという政策を掲げています。軍事費をめぐる世界各国の最近の動向をみても、この政策は完全に実現可能だといえます。(坂口明記者)

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