日本共産党

2003年10月31日(金)「しんぶん赤旗」

総選挙の争点 働くルール

労働者を働きづめに

財界が新たな要求

派遣・裁量労働の拡大、健康管理義務の廃止


 日本経団連(奥田碩会長)は二十一日、「〇三年度日本経団連規制改革要望」をまとめました。このなかで「雇用・労働分野」を個別要望の第一にあげて、「更(さら)なる規制改革を早急に進めるべきである」と主張。不安定雇用をいっそう拡大し、ホワイトカラー労働者を労働時間規制の対象から除くなど、二十一項目の大改悪を要求しています。


企業に都合いい派遣労働の拡大

 要望の第一にあげているのは、派遣労働のいっそうの解禁です。

 派遣労働は、労働者を実際に使う企業にとって、実に都合のいい制度です。同じ不安定雇用でも、企業が直接雇用責任を負うパートや契約社員と異なり、派遣労働は企業が働かせる権利は持つが雇用責任は負わずにすみます。そのため、一方的な契約内容の変更や契約打ち切りなどを行っても、労働者は雇用契約を結んでいる派遣会社に改善を求めることしかできません。

 労働者にとってあまりに不利な働き方のため、労働者派遣法は不十分ながらさまざまな制限を設けています。労働者を特定する事前面接などの行為を原則禁止しているのもその一つです。

 日本経団連の要求は、労働者を自由に選別して、しかも雇用責任は負わないしくみをつくろうとするものです。労働者特定行為の全面解禁のほかに、医療関係業務の全面解禁や、製造業務をはじめ派遣全般の期間制限の撤廃を要求。有期労働全般を五年契約に延長することも主張しています。

裁量労働拡大でただ働き合法化

 もう一つは、いわゆるホワイトカラーの労働時間をいっさいの法規制から外すことです。

 まず、「労働時間でなく仕事の成果で評価する」という、企画業務型裁量労働制の対象拡大を打ち出しています。これまで企画、立案、調査および分析のすべてを行う労働者が対象でしたが、「営業職」にも拡大し、本人合意がなくても労使の合意で導入できるよう要求しています。

 裁量労働制は、仕事の裁量を労働者にまかせるかたちをとって長時間労働をおしつけるもので、違法なサービス残業を合法化するものです。

 そのうえ、さらにいっさいの労働時間規制の対象からホワイトカラーを除外するアメリカ型「ホワイトカラーエグゼンプション」制度の導入を主張しています。

 財界、大企業はいま、サービス残業を合法化し、長時間働かせるやり方として裁量労働制の拡大を追求していますが、労働基準法の八時間労働制の原則をくずすことになるので導入する際の制限があります。深夜・休日労働については、実際に働いた分の残業代を支払わなければならず、企業は労働時間の把握をしなければなりません。

 そういう制限にいっさいしばられず、まったく労働時間規制の対象外の労働者をつくろうというものです。限りない長時間労働を強いられ過労死しても、企業の責任を問うことが困難となります。

“健康管理は活動の障害”

 新たな要求として、厚生労働省の「過重労働による健康障害防止措置」の事実上廃止を求めています。

 この「措置」は、長時間・過密労働による過労死や健康障害から、労働者を守るために、月四十五時間を超える残業をしたら、産業医などによる助言や指導、健康診断を企業に義務付けているものです。

 日本経団連は、この措置を「企業活動の正常な運営に多大な影響を及ぼすことになる」と攻撃し、これを受けるかどうかは労使の話し合いに委ねるべきだ、と事実上の廃止を要求しています。もうけが第一、健康管理はどうでもいいという考えです。

 今年六月、財界の要求を丸のみした小泉内閣は、裁量労働制の導入要件の緩和、有期や派遣の雇用期間拡大などの改悪を強行しました。労基法は自民・公明・保守・民主各党の賛成で、派遣法は自民・公明・保守各党の賛成です。日本経団連の主張は、これにとどまらず、働くルールのさらなる骨抜きへ財界の欲望をむき出しにしたものといえます。


ねらいはコスト削減

 牧野富夫日本大学教授の話

 「要望」は、「多様な雇用機会を創る」「働き方の選択肢を多様化する」ためと称して、いっそうの規制緩和を主張しています。これはまったくのトリックです。「多様化」というと、何か自由な働き方のような幻想を与えますが、ねらいは、低賃金・無権利な不安定雇用増大によるコスト削減、必要なときだけ雇う人間カンバン方式の徹底などです。従来もすすめてきたことですが、これを徹底させようとしているところに今回の特徴があります。

 日本経団連は、経済のグローバル化を理由に国際競争力を強めないと企業も働く人も危なくなる、だから規制緩和だという「脅しの論理」を押しつけています。コスト削減のためのこのごまかしを見抜くことが大事です。


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