日本共産党

2003年10月31日(金)「しんぶん赤旗」

事故風化させないで

えひめ丸遺族寺田さん夫妻

米国各地で訴え


 二〇〇一年二月にハワイ沖で米海軍原潜「グリーンビル」が宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」に衝突した事故の犠牲者、寺田祐介さん(当時十七歳)の両親、寺田亮介・真澄さん夫妻が十月末、米国本土を訪れ、「米軍が起こした事故を風化させたくはない」との思いを訴えました。

 二十五日、首都ワシントンでの反戦・平和集会。寺田夫妻は「息子は米海軍に殺されました。二度と繰り返さないで」と書いたパネルを胸に掲げて参加しました。グリーンビルが所属する米軍真珠湾基地で働くハワイからの参加者が夫妻の姿を見つけ、「(あの事故の)記憶はいまでも頭から離れない。集会によく来てくれました」と話しかけました。

 えひめ丸の船体引き揚げ、米軍を相手取っての補償交渉も区切りとなり、寺田さんらが求めていたグリーンビルのワドル艦長(事故当時)の訪日、面会が実現。その後、周囲では忌まわしい事故は終わったとの雰囲気が流れ始めました。

 寺田夫妻の心情はまったく違います。亮介さんは「日本政府は『米軍による事故の再発防止は図られている』とくりかえすだけ。日本国としてどれだけ米国に働きかけたのでしょうか」「米国が世界最強の軍隊を使い、他国に戦争を仕掛けることをやめない限り、米軍による犠牲者は無くならない。えひめ丸事故がまたくりかえされる」と不信感を抱きます。

 真澄さんは「息子を亡くした悲しみは二年十カ月たち、さらに深まっています。事故は風化させたくない。米国の人たちにこのことを聞いてもらいたかった」と訪米した理由を話します。

 二十四日、ミネソタ州ミネアポリスで開かれた民主的法律家の組織「ナショナル・ロイヤーズ・ギルド」の全国総会に出席。約二百人を前に、真澄さんは「母親として息子のことを伝えることが平和につながる種をまくことになるのではと思います」と発言。出席者の一人は「事故は恥ずかしいこと。申し訳ない」と夫妻に語りかけました。

 地域経済まで軍に依存し、米軍批判はタブーなことなど、夫妻にとって唯一の超大国・米国の実態をあらためて認識する旅にもなりました。一方で、同時多発テロ被害者遺族の会「ピースフル・トゥモローズ」の代表の一人、コリーン・ケリーさんら戦争に反対する国民の存在も知りました。寺田さん夫妻は「米国に来て良かったとストレートにいうことはできないが、(平和を求める)大きな力をみることができた」といいます。(ニューヨークで遠藤誠二)


 えひめ丸事故 二〇〇一年二月九日、ハワイ・ホノルル沖で米海軍真珠湾基地所属の原潜「グリーンビル」が水面に緊急浮上中に愛媛県立宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」に衝突し、実習生四人を含む九人が死亡した事故。


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