日本共産党

2003年10月29日(水)「しんぶん赤旗」

21世紀 日本の未来がかかる選挙戦

日本共産党の前進で、

財界主導の野望を打ち破ろう

東京・新宿での 不破議長の第一声


 総選挙公示の二十八日、日本共産党の不破哲三議長が東京・新宿駅西口でおこなった街頭演説(大要)は次の通りです。


写真

訴える不破議長=28日、東京・新宿駅西口

 みなさん、こんばんは(「こんばんは」の声)。日本共産党の不破哲三でございます。

 冷たい雨のなか、たくさんのみなさんが私どもの演説に足を止めていただきまして、本当にありがとうございます。まず最初に、心からお礼を申し上げます。(拍手)

どの党も「改革」を言うが、

だれのための改革かが肝心

 きょう、いよいよ総選挙が始まりました。どの政党も「改革、改革」と叫んでいます。けさの新聞を広げましたら、自民党が大きな広告を出していて、「自民党は変わった、改革政党になった」と書いてありました。しかし、「改革」というが誰のための改革なのか、これが何よりの問題であります。そこが、今度の選挙で、みなさんにしっかり見分けていただきたい中心ではないでしょうか。

 小泉さんの「改革」は、小泉さんがこの二年半にやってきたことをみれば、誰のためのものかがわかります。

小泉「改革」――国民には1兆7千億円の増税 財界・大企業 には1兆3千 億円減税

 まず税金の問題です。お酒やたばこの税金の引き上げ、配偶者特別控除が切り捨てられる、消費税の条件が悪くなったなど、国民みんなにかかる庶民の税金は、この二年半に、一兆七千億円も増えました。

 ところが、財界・大企業のための税金は、減税であります。いろんな名目で一兆三千億円以上の減税で、そのなかにはとんでもないものもあります。

リストラ奨励減税まである――1人当たり90万円にも

 企業がリストラで労働者を解雇すると、「いいことをやった」と、おほめの言葉といっしょに減税になる、こんな制度まであるのです。一九九九年にできたものですが、小泉さんが延長をやりました。この減税法ができてから、いままでに二百十七の会社がリストラ計画を出し、八万九千人の労働者の首を切りますと申請して、なんと八百十億円の減税が決まりました。

 減税分を解雇される労働者数で割ってみたら、労働者の首を一人切るたびに、九十万円の減税になるという計算です。こんなことまでやって「リストラをやれ、リストラをやれ」とあおりたてている。これが小泉内閣の税金の扱い方であります。

社会保障――小泉さんが手を触れれば必ず国民負担が重くなる

 国民のくらしを支える社会保障はどうでしょうか。

 介護、年金、医療、雇用保険、小泉さんは、この四つの分野全部にわたって「改革」を四回やりました。どの分野も負担が重くなる、給付が切り下げられる、条件が悪くなるなどなどで、新たに国民の肩にかかった負担は、二兆七千億円にのぼりました。

 社会保障といえば、国民のくらしを支える大事な制度です。小泉自民党がそこに手をつけたら、みんな悪い結果になって、負担が国民の肩にかかってくる。こんなひどい話はないのではないでしょうか。(「そうだ」の声)

 これから、年金の「改革」だといいます。小泉さんが手をつけたら、年金もまた、いままでの改悪に加えてさらにひどいことになるんじゃないか。どこのマスコミの世論調査でも、年金への不安がずっと広がっています。小泉自民党の「改革」は国民のためのものではないことを、みんなが見抜いているわけです。

資本主義の国でも、日本ほど

政治がかたよっている国はない

 みなさん。なぜ、こんなことになるのでしょうか。税金の問題と同じで、政府の顔が国民の方を向いているのか、財界・大企業の方を向いているのか。そのことがここにもはっきりあらわれています。

 日本は資本主義の国だから、政府が財界の方を向くのは当たり前、こういう人がいるかもしれません。しかしみなさん、同じ資本主義の国でも、政治がこんなにかたよって、財界・大企業のための仕事ばかりやっている。わが日本ほどひどい国は、他の世界にはあまりないのです。

同じ税金をおさめても、国民に返ってくる分がこんなに少ない

 予算でも、日本では、一番大きい比重をしめるのは、ゼネコンが喜ぶ公共事業の予算です。国と地方を合わせて、毎年五十兆円のお金がこれにつぎ込まれてきました。ところが、社会保障に支出するお金は二十兆円です。「五対二」という関係が長く続いてきたのですが、こんな国は、世界にほかにないのです。

 社会保障といえば、国民全体のくらしを支えるもの。そこに予算を一番使うのは当たり前じゃないか。ヨーロッパでもアメリカでもそれが常識です。日本のように、公共事業への支出が社会保障への支出を大きく上回る、そんなことでくらしが成り立つかと、みんなびっくりします。

 この違いは数字にはっきり出るのです。みなさん方が税金を払う。そのうちのどれだけが社会保障で返ってくるかを比べてみますと、日本が一番悪いのです。一万円の税金を納めるとする。イギリスでは、そのうち四千三百円が、社会保障で返ってきます。ドイツでは四千四百円、アメリカでは四千七百円。半分近くが返ってくるというのが、資本主義国でもふつうのことです。

 ところが、日本では、一万円の税金のうち、二千九百円しか、社会保障で返ってこないのです。

 こんなことをやっていたら、年金の財政も、健康保険の財政も苦しくなるのは当たり前ではありませんか。

 税金の使い方のこういう逆立ちをきっちり正して、せめてヨーロッパやアメリカでやられているように切りかえたら、予算の枠を増やさないでも、社会保障に十兆円以上の新たな財源をまわすことができます。財界に顔を向けるのではなくて、国民に顔を向けるように税金の使い方を変えようじゃないか。これが日本共産党の社会保障の改革についての提案であります。(拍手)

自民、民主の「改革」論――“官僚が悪い”だけで、“財界のための政治”を問題にしない

 ここにも、政治の姿勢が最大の問題になります。財界・大会社のために仕事をする政治か、国民みんなのために仕事をする政治か、ここを大きく切りかえないと国民のための改革はできません。

 昨日の党首討論会ごらんになったでしょうか。改革というときに、小泉さんは、官僚が悪いんだ、ここを改革するといいました。民主党の菅さんも、官僚が悪いんだ、ここを改革するといいました。しかし、官僚だけが悪政をやってきたわけではありません。全国にばらまかれた大型公共事業のムダづかいにしても、自民党と官僚がいっしょになって財界・大企業のための政治をやってきた結果ではありませんか。

 政治が誰の方向を向いているか、財界のための政治を変えるという肝心のことをまったく問題にしないで、官僚が悪いとだけいう。この点では、「改革」にたいする姿勢、考え方が、小泉さんも菅さんもまったく同じです。私は、討論会を見ながら、そのことを痛感しました。

 野党第一党といっても、民主党は財界に大変弱い。小沢さんの自由党と合同して以後、とりわけ弱くなりました。

消費税増税――財界の要求通りに

なったら、税金地獄の日本になる

 しかもみなさん。問題はそれだけではないのです。いま国民は、小泉「改革」で痛い目にあっています。“この痛みをがまんしたら、明日はよくなる”と、小泉さんは思わせぶりなことをいってきました。

 しかし、そのあと何が出てくるのかについて、財界が政府・自民党をひきずる形で、小泉「改革」のあとにくる二つの大問題をはっきりと打ち出してきました。

 ひとつは消費税の大増税です。もうひとつは憲法の改悪です。どちらも今度の総選挙で、自民党の「政権公約」にはっきり書き込まれました。

 消費税といえば、弱いものいじめの天下の悪税です。橋本内閣のときに3%の税率を5%に引き上げた。それだけでみなさん大変な目にあいました。日本の景気もひどい影響を受けました。

 ところが、いま、財界や政府が考えているのは、2%引き上げなどという生易しいものではないのです。二ケタ増税だといいます。二ケタの税率といえば一番低いところで10%。今の5%を二倍の10%に引き上げようということですが、財界はもっと先まで提唱しています。財界団体の日本経団連は18%にしたいといっています。

 10%になったら消費税の総額二十五兆円、18%になったら四十五兆円、お子さんからお年寄りまで国民一人あたりなんと三十六万円の税金です。それをみなさんの毎日毎日の売り買いのなかから取り上げようという。そんなことになったら、私たちのくらしも、日本の経済も、ひどいことになります。

 そういう国民いじめの大増税を公然と旗印にして、財界が政府・自民党をひきずる形で、これを二十一世紀早々にやってのけようじゃないかといいだしたのです。

 消費税で怖いのは、なにしろ法律の税率の数字を書き直すだけで、すぐ税金引き上げになるのですから、一番、増税のやりやすい税金だということです。こんなことになったらまさに日本は税金地獄になるのではないでしょうか。それにくわえて、財界はいまは、企業にかかる法人税をまけてくれという要求まで出しています。これほど虫のいい話はありません。

憲法改悪――日本を気がねなく

戦争に参加できる国へ

 もうひとつは、憲法の改悪です。

戦争の苦難への思いこめた9条が危ない

 いろいろいわれますが、狙いは憲法第九条にあります。憲法第九条は、日本の国民が経験したあの戦争の大変な苦難をへて、戦後の憲法に書き込まれたものです。間違った戦争をやって、戦場で、沖縄で、広島・長崎で、東京を含む本土で三百十万人もの日本人が犠牲になりました。アジアの諸国民、二千万人以上犠牲者を出しました。

 もう二度とこういう戦争は繰り返さない決意を込めて、戦争はしないということと、戦争のための軍隊を持たないということを憲法に書き込みました。これが憲法第九条です。

 この憲法に背を向けて、今、小泉さんたちは自衛隊をインド洋に派遣し、今度はイラクに派遣しようとしています。いくら自民党でも、憲法第九条があるもとで、「戦争をやります」とはいえないのです。出かけていくけれども、戦争はやりません、危ないところには出しません、こういう言い訳をして、自衛隊を出しています。

 しかし、そのアメリカが日本はこれぐらい立派な軍隊を持つようになったのだから、憲法に気兼ねしないで戦争できるように、早く条件を整えてくれという圧力をかけてくる。それにこたえて、とうとう憲法の改悪に手をつけようというところに、小泉さんが踏み出しました。

 政権公約には「2005年、憲法改正に踏みだします」と、はっきり書きました。憲法を改悪すれば、アメリカの注文通り、日本の自衛隊が海外に出ていってまた戦争をやることになる。アジアの人たちはみんなそれを恐れています。

海外派兵型の装備ねらい、軍備拡大の新たな動きが

 しかもみなさん、こういうことになりますと、軍備の拡大が始まるのです。

 今でも世界は全体として軍縮の流れです。そのなかでどんどんどんどん、毎年軍備を増やし、軍事費を増やしている国がある。それが日本なのです。

 去年アメリカが同盟国全体を調べて、アメリカ中心の軍事同盟体制にどれだけ貢献しているかという報告を発表しました。一九九〇年から二〇〇一年の軍事費を調べてみると、アメリカとその同盟国二十五カ国、この二十六カ国の軍事費合計は、この十一年間に二割減っている。そのなかで、日本は、逆に軍事費を二割も増やした。すばらしいことだと言って、ほめそやしました。

 みなさん、アメリカの軍事同盟仲間のなかでも、日本の軍備の拡大はそれほどずば抜けているのです。十一年前には、アメリカの同盟国のなかで日本の軍事費は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスにつづく第五位でした。いまでは、ヨーロッパの三つの国を全部抜いて、アメリカに次ぐ第二位の軍事費大国になっています。

 ところがみなさん、憲法が変わったら、自衛隊の装備をもっと海外派兵型に装備変えする必要があるということで、新たな軍備拡大がはじまることは、まちがいありません。すでに、自衛隊や防衛庁や軍需産業の人たちなどが、盛んにそう言い出しています。

 一隻千三百六十五億円もするイージス艦、いまは確か四隻ですが、これも六隻ないと困るとか、ヘリコプターを運ぶヘリコプター空母、いま造り始めたところですが、これも四隻体制にしたいとか、海外に出て行く飛行機に途中で燃料を供給する給油機が必要だとか、そういう話が次々出ています。ミサイル防衛体制も、これは集団自衛権になるからどうかという議論がありましたが、憲法をかえれば、天下晴れてできる。この開発は、アメリカのある研究所の計算では日本の分だけでも六兆円かかるといわれるものですが、そういうところへ足を踏み出して、軍需産業が大もうけしよう、そういうねらいもあるのです。

 そのときには、消費税が軍拡の財源として、お役に立つ、おそらく、財界筋はそんな思惑も持っているでしょう。

 みなさん、消費税増税と憲法改悪、その両方がやられたら、二十一世紀の日本は、本当に暗い日本になってしまうではありませんか。絶対にそれは許さないというのが、私ども日本共産党の決意であります。(拍手。「そうだ」「よし」の声)

財界戦略で“日本の政治

地図”が変わった

 さて、みなさん。ここで不思議なことがあるのです。こういう大問題を財界や政府がぶつけてきたら、今までの日本の政治だったら、選挙のときにこれが与党と野党の大争点になるはずです。

消費税でも憲法でも、自民・民主は同じ側に立っている

 ところが、今度の選挙は、「政権を争う選挙だ」とあれだけいわれながら、この二つの大問題が自民党と民主党の間の争点にまったくなっていないのです。

 なぜかというと、民主党の発表した「政権公約」(マニフェスト)のなかには、消費税を年金改革の財源にするということが明記されています。自民党よりも先に消費税の問題を持ち出したのが、実は民主党なのです。

 憲法についても今までは「論憲」、つまり議論するだけといっていたのが、最後に発表された「政権公約」では、「創憲」、つまり憲法をつくるという立場がうたわれました。「つくる」というからには、いままでの憲法をご破算にして新しい憲法をつくることです。いまの憲法をご破算にするという点では自民党と同じなのです。

 だからみなさん。自民党と一番「対決」しているはずの民主党が、消費税増税の問題でも、憲法改悪の問題でも、自民党と同じ側に行ってしまっているのです。こういう変化がいま日本の政治に起こっています。

双方を財界がおすアメリカ型の二大政党制が目標

 なぜこんなことになったのか。みなさん、そこには、実は財界の戦略があるのです。

 今までの日本の政治といえば、自民党と公明党が与党で財界寄り、アメリカ寄りの政治をすすめる。これにたいして、野党は、立場の強い弱いはあるけれども、ともかく一致点をまとめて反対する、これがおおよその姿だと多くの人が見てきました。

 ところが、財界は、これが気に入らなかったのです。日本の政治がそういう形ですすんでいって、そこで自民党にガタがきたらどうなるだろう。そのときには財界にとってまったく先の見えない政治になってしまう。今のうちに日本の政治をアメリカ式の二大政党制に持ちこみたい、これが財界の戦略になりました。

 アメリカの二大政党制をご存じでしょう。アメリカの議会は、共和党と民主党だけで、他の政党は存在しません。そのどちらの政党も、財界が後押ししています。だから、民主党が失敗すると、共和党が政権を握る。共和党が失敗すると民主党が政権を握る、こういう政権のやりとりで、細かい点はかわっても、政治の大筋はかわらない。いつまでも財界が安心していられるのです。

 戦争の問題でもそうです。アメリカは一九六〇−七〇年代に、ベトナムへの侵略戦争をやりましたが、あの戦争を始めたのは民主党の政権でした。今度、世界中が非難するなかで、イラクへの侵略戦争をやりました。これを始めたのは、共和党の政権です。戦争の問題でも、共和党と民主党と、政権がかわっても、やることは似たようなものなのです。

 日本の政治をそういう二大政党制にしたいということで、去年の十月、財界団体の経済同友会が、日本の政治を改革する二つの提案を発表しました。

 いま、日本には政党が多すぎる、これを二大政党に整理するために、第一に、選挙のやり方を変えようではないか。政権党と次の政権をめざす野党が、お互いに「マニフェスト」を出して政権を争うという選挙に切りかえよう。そうすれば、より小さい政党が、口を出す余地が少なくなる。

 第二に、選挙制度も変えよう。十年前に小選挙区制に切りかえたのだが、比例代表の制度が入ったために、政党が二つにならず、多くの政党が残ってしまった。余計な政党をなくすために、比例代表制はなくして、小選挙区制一本の選挙制度にあらためよう。この二つの「改革」を提案したのです。

 これに飛びついたのが民主党でした。アメリカ式の二大政党制、大賛成だ、民主党がその一つになろう、ということです。

 国会解散の五日前に、今度の民主党と自由党の合併大会がありました。この合併のねらいは何かというと、財界が安心して支持できる新しい野党をつくるというところに一番のねらいがあったということを、ことがすんでから、菅さんや小沢さんが、雑誌のインタビューでそれぞれ話し始めました。この合併には財界もずいぶん動いたのです。

 合併に先立つ七月には、菅さんたち民主党の幹部が日本経団連を訪問しました。経団連の会長の奥田さんに会って、“われわれの政策は自民党とほとんどかわりがない、やる気だけは自民党よりもある。だから、財界も私たちにかけてもらいたい。政治献金を再開するようだが、それを民主党の方にも回るように仕組みを考えてほしい”。そこまで話をしたのです。

 私がもっと驚いたのは「政権公約」マニフェスト作成のいきさつです。民主党は九月に「政権公約」の第一次案を発表しました。これには憲法改定の話も消費税の話もなかったのです。

 十月一日に、民主党の幹部と経済同友会が、政策についての意見交換会をやりました。そこで、財界団体から、憲法改定がないのはおかしい、消費税を上げないと財政の見通しがたたないなどの注文がつけられたのです。それにこたえて、十月五日の合併大会で最終の「政権公約」が発表されたときには、さっきのべたように、新しい憲法をつくることと、消費税を上げることと、この二つの方向がはっきり書き込まれました。

 おまけに民主党の「政権公約」には、「比例代表制をなくす」という財界の考えに沿って、まずその第一歩として、比例の議席を八十議席減らすことまで書き込まれています。これは、自分たち以外の野党は国会から追い払おうということです。

 みなさん、財界の注文にこれだけ忠実な党だということになったら、自民党とはかわらないということになってしまうのではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)

 そういう政党同士が政権のやりとりをするというのでは、これはどっちに転んでも、国民は踏んだりけったりであります。

 今度の選挙を契機に、“日本の政党地図”は変わったのです。財界が後押しする二大政党の体制づくりが、そういう形で姿を現してきた。

 そういうものに二十一世紀の日本の政治をまかせるわけにはゆきません。本当に“国民が主役”の政治への改革をめざす力、消費税の増税も憲法の改悪も許さない力、それをうんと力を伸ばす国会が必要ではないか。私はそのことをみなさんに心から訴える次第であります。(拍手、「がんばれー」の声)

 日本共産党は、どんな問題でも国民の立場にしっかり立つ党であります。この日本共産党を大きくご支援いただいて、国民が安心して暮らせる日本をめざしたい。これが私のお願いであります。(拍手)

野党外交と21世紀日本の展望

 外交・安保の問題でも、同じ問題があります。

大きく変わったアジア、そのなかの日本

 みなさん、日本はアジアに生きていますが、そのアジアがすっかり変わりました。アジアでいまアメリカと軍事同盟を結んでいる国、アメリカの軍事基地を置いている国は、日本と韓国しかなくなりました。韓国は、北朝鮮があり、朝鮮戦争があり、そういう歴史のなかでいまの状態になりました。しかし、日本は違います。

 アジアには、日本より古くから、十九世紀からアメリカの基地を置いていたフィリピンという国があります。この国も国会が決めて、アメリカの基地は全部帰ってもらいました。だからいまアジアのどこにいきましても、いまいった二つの国以外には、アメリカの基地などありません。どこの国も、外国の基地のない独立の国として、自分の足で歩くという主権国家の気概に燃えています。

 しかし日本はどうでしょう。首都東京にまでアメリカの基地がある。横須賀からは外国に空母が出る。ベトナム戦争のときもイラク戦争のときも、日本から米軍が出て行きました。

 そのためにアメリカに対して、絶対に反対といえない。イラク戦争のように、その無法があまりにも明確で、世界中が反対している戦争に対しても、反対といえない。外国にいきますと、本当にいろんな人から、「なんで日本はアメリカにノーといえないんだ」と、まじめに聞かれます。

 そこで私が本当に情けないと思うのは、日本の政党のなかで二十一世紀を展望して、安保条約をなくし外国の基地のない日本をつくろうという政党が、日本共産党以外に存在しないことです。自民党も民主党も、安保絶対という点では変わりがありません。社民党も安保反対はいわなくなりました。

 しかしみなさん、二十一世紀の日本国の国づくりを考えたら、いつまでも外国の基地のなかで暮らさない。本当に自分の足で歩く自主・独立の国になるというのは、当たり前の展望ではないでしょうか。(拍手)

 自民党の人たちは「安保がなくなったら、外国から信頼されなくなる」などといいますが、とんでもない話です。

野党外交でアジア、イスラムの国ぐにと広い友好の輪

 私たちは、野党ではありますが、世界中のいろんな国とおおいに交渉し交流し結びつきを深める野党外交をやっています。アジアでもイスラム世界でも、うんと友だちが増えました。

 アジアの国、イスラムの国の多くは、いろんな歴史があって、自分の国では共産党を認めていない国です。そのアジアの国ぐにが日本共産党を知り、日本の過去の戦争をきちんと反省していること、自主独立、ソ連であれ中国であれ北朝鮮であれ、無法横暴があるときは断固反対をつらぬいてきたこと、日本の国の憲法を守ること、将来、非同盟・中立の日本をめざしていること、国連の平和のルールを守る立場を貫いていること、そういう私たちの姿を見ると、自分の国の歴史からいって共産党を認めていない国でも、日本共産党はいい政党だと、素直にわかって胸を開いてくれるのです。そういう交流の輪がうんと広がっています。(拍手)

 実は今年、マレーシアで大きな国際会議が二つありました。二月には世界の非同盟の百十六カ国、軍事同盟に入っていない国ぐにの大国際会議がありました。十月には、イスラム諸国五十七カ国の会議がありました。集まってくるのは全部政府です。そのなかでただ一つ、政党として参加した党があるのです。みなさん、世界中からただ一つ、そういう会議に政党として招かれまた参加したのが、日本共産党であります。(拍手)

 その二つの会議に、党の代表として参加したのは、きょう司会を務めていただいている緒方靖夫国際局長・参院議員です(拍手)。みなさん、日本共産党に対する信頼と友好が、それぐらい広がっているのです。

世界から見ると、日本の政治の現在と今後が見えてくる

 私は、こうした野党外交をふりかえりながら、二つのことが大事だと思いました。

 安保のない日本をめざす日本共産党、アメリカの横暴に反対する日本共産党が、これだけアジアやイスラムの国ぐにから受け入れられ、これだけの友好の輪が広がる。それなら、みなさん、日本の国そのものが、そういう平和の立場に方向を切りかえ、自主独立の立場を切り開いたら、日本の前には、二十一世紀に生きるすばらしい展望が開けるではありませんか。(拍手)

 もう一つ、日本では選挙になると、公明党や自民党の反共攻撃が盛んです。理屈もなにもない、共産党だから悪いという攻撃です。私は、それを見ながらいつも、戦前の軍国主義者の攻撃と同じだなと思いました。

 戦前は、日本共産党は、日本でただ一つ、国民主権の民主政治を主張し、戦争反対、平和の立場をつらぬいた政党でした。これがけしからんといって、軍国主義者は、無理無体な弾圧をやりました。

 戦後、民主主義と平和の日本になったのに、無理無体な攻撃だけは軍国主義の日本から引き継いで、日本共産党であるから悪い、そういっているのが、自民党と公明党であります。

 しかし、みなさん。そんな反共主義は、今の世界には生き残れません。私どもが付き合っているイスラムの国ぐにでは、宗教の立場からいえば、神様を信仰しない共産党というのは、一番悪い相手なんです。“絶対悪”といった人もいました。

 しかし、だからといって、そういう目で私たちを見ることをしないのです。日本共産党が何を主張しているか、何をやっているか、そのことをしっかり見る。そして、私たちとこの点で一致するとなったらとことん仲良くなれるのです。宗教が違おうと、文化が違おうと、そういう違いを超えて、世界平和のために、本当にしっかりと手を結べる。

 イスラムの会議に参加した緒方さんに聞いたのですが、会議が終わって別れるときに、イスラム機構の組織の政治部長がいったそうです。「日本共産党が、この会議に参加したということは、これから先、イスラムのどんな会議があろうと、あなたがたのための席はある、どこにでも、自由に参加できる一番のあかしです。どうか、いつでも、必ず出席してください」。それぐらい強い友好の関係が生まれているのです。

 私は、実は、緒方さんと、七月に、北アフリカのイスラムの国、チュニジアを訪問したのですが、そのときに会談をやった、ベンヤヒアさんという外務大臣が、今度のイスラムの会議に出席したそうです。

 緒方さんが、話にいって、私の「チュニジアの七日間」という「赤旗」の連載を渡したら、喜んでそれを見ながら、「今度は、不破さん、気候のいいときに来てもらいたい」。七月にいったときは、なにしろ四五度ですからね。「気候のいい二月ごろにきてもらいたい。そのときは、私が、サハラ砂漠を案内します」といってくれたそうです。そういう、あとあとに残る友好の関係が、宗教の違いや文化の違いを超えて、生まれるのです。

 みなさん、これが、今の世界です。

 その世界とくらべると、公明党や自民党の反共主義は、本当にみすぼらしく見えるではありませんか。(「そうだ」の声、拍手)

 みなさん、日本の未来を開くために、どうかこの選挙で、この日本共産党に、大きなご支援をお願いしたいと思います。

 東京では、前回の総選挙では、比例代表が二議席でした。三議席目は、残念ながら、次点になりました。今回はたいへんな選挙です。このなかで、どんなことがあっても、比例の二議席を守り抜きたい。そして、さらに力を伸ばして、三議席目を東京の共産党の議席にしたい。そのために、みなさんに、ご支援をお願いしたいのです。

 衆議院の選挙は、投票が二回あります。第一回は、小選挙区の選挙で、これは候補者個人の名前を書いていただかないと、票が実りません。それぞれの選挙区で、わが党の候補者の名前を書いていただきたいと思います。

 二回目の選挙が、比例代表の選挙です。ここは、「日本共産党」と書いていただかないと、私どもを支持していただくその気持ちが議席につながりません。個人の名前を書いたら、無効票になるという選挙です。

 この日本を、「国民が主人公」だといって、誇りのもてる日本にするために、そして、自分の足でたつ平和の国、自主独立の国として、二十一世紀をすすむ日本にするために、今度の選挙での日本共産党への温かいご支援を、心からお願いいたしまして、公示第一日目のお訴えに代えさせていただきます。どうも長い間、ありがとうございました。よろしくお願いいたします。(歓声、拍手)


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