日本共産党

2003年10月21日(火)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい選挙特集

郵政民営化

銀行の要求で始まった

利用者、国民はそっちのけ


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 小泉首相は二〇〇七年四月から郵政を民営化するといっています。利用者である国民のことはそっちのけ。競争相手である郵便貯金や簡易保険がじゃまな大手銀行などの都合だけです。「民業を圧迫するな」と長年いい続けてきた銀行業界らの主張を受けたもの。民主党の枝野幸男政調会長も「郵便貯金が多過ぎる」「民業を圧迫するな」と迫っています。日本共産党は郵政民営化に反対し、国民のための改革をすすめます。

百害あって一利なし

 郵政民営化は、国民にとって百害あって一利なしです。

 郵政民営化は、もともと銀行業界などの長年の要求です。「本来の役割を超えた公的機関はあくまで縮小・廃止を検討することが先であり、民営化は次善の策として検討されるべきもの」(当時の橋本徹全銀協会長、月刊『keidanren』一九九七年四月号)などと主張してきました。

 銀行は、小口預金をコストのかかる「重荷」扱いにしています。すでに米国では、小口の預金口座には、利子をつけるどころか、反対に「口座維持手数料」を徴収するのが当たり前になっています。日本でも、ATM(現金自動預払機)などで時間外や他行の手数料をとるのが一般化しています。

 郵便貯金が弱体化させられたり、廃止となれば、小口預金、国民の多くの預貯金へのサービス切り捨てがすすむことになります。

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日本郵政公社=東京・霞が関

 地方や近所の金融窓口を確保するという点でもたいへんです。近所に郵便局しか金融機関がないというところは過疎地だけではありません。銀行のリストラで支店の閉鎖が相次ぎ、ATMだけの無人化もすすんでいます。

 ニュージーランドでは、郵便貯金を民営化した後、地方都市の郵便局廃止が相次ぎ、お年寄りが年金を受け取れないなどの問題が続出。そのため、二〇〇一年二月に国営の小口金融機関の復活を決めました。

 信書など郵便事業を民間に開放することは、さまざまな問題を生みます。すでに一部民間開放されていますが、採算だけを考えれば、個人や小口、地方のサービスが切り捨てられることになります。プライバシーの侵害は、郵便物の中身が読まれてしまうかどうかだけではありません。どこの家、どこの会社に、どんな郵便物がきているか、だれが差し出した郵便物がきているかなどもわかってしまいます。


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竹富郵便局と郵便ポスト=沖縄県竹富島

●自民党の政権公約

 郵政事業を2007年4月から民営化するとの政府の基本方針を踏まえ、日本郵政公社の経営改革の状況を見つつ、国民的論議を行い、2004年秋頃までに結論を得る。

●小泉首相

 郵政事業の民営化は、官業の構造改革の本丸。私の総裁選挙の公約にも19年(2007年)に民営化すると盛り込んでいる。再来年の国会には、民営化法案を提出する。(9月29日、衆院本会議)

●麻生総務相

 郵政の民営化というのは、民間でできるものは民間にというところが本来の目的と思う。(10月1日、衆院予算委員会)

●民主党・枝野政調会長

 郵便貯金が多すぎる。民間銀行があるのだから、郵便局が貯金を集めることを縮小していくことが第一歩。簡易保険も、民間でできることは民間でやる。民業を圧迫しない。公社化するのは結構だが、民業を圧迫してもらっちゃ困る。(10月1日、衆院予算委員会)

大銀行・財界の大合唱

●全国銀行協会

 私どもは、1日も早い郵便貯金事業の抜本的改革、すなわち、郵便貯金事業の廃止、もしくは民間金融機関との公正な競争を確保した上での民営化を強く望む。(2002年11月、「郵便貯金事業の抜本的改革を求める私どもの考え方」)

 郵便貯金は、わが国の個人金融資産の2割以上、個人預貯金の3割以上を占め、今やその残高が256兆円を超えるまで肥大化しており、民間金融機関の経営を圧迫している。郵便貯金の抜本的な見直しなくして、わが国の金融構造改革は達成されない。(1999年8月31日、意見書)

●生命保険協会

 簡易保険事業については、公社化にとどまらず、「本来的には縮小・廃止、仮に民営化する場合には、民間生命保険会社との競争条件を同一化した上での民営化」といった抜本的な見直しを行う必要性がある。(7月18日、森田富治郎会長、会長就任にあたっての所信)

●経団連

 郵便事業の国際競争の時代への対応の視点から、早急に民間参入を実現する必要がある。国内外にわたる自由な事業展開を可能とするため、郵便市場に大胆に競争を導入し、新規参入者も含めて強い郵便事業者の育成を図る必要がある。(2000年3月28日、「郵便事業への民間参入の速やかな実現を求める」)

●経済同友会

 2007年4月の日本郵政公社の民営化に向け、郵貯・簡保の縮小・廃止を前提とした具体的な改革の方向性を明示する。(9月22日、小泉第2次改造内閣への提言)


日本共産党

民営化に反対し、こう改革します

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庶民の貯蓄を守る

 郵便貯金は、一千万円以下の小口預金だけを対象に、零細な国民の貯蓄をまもることを目的とした国営の事業です。

 「虎の子」の生活資金を安全に貯蓄したいという国民の願いにそって、国営事業として運営していくのは当然です。最近の世論調査でも、国民の六割が「郵政事業は国営のままでよい」と答えています。

 日本共産党は国営事業としてのサービス向上をめざします。

資金は地域と中小企業に

 日本共産党は、郵便貯金や簡易保険の資金を地域経済や中小企業に供給する仕組みを強化します。

 小泉内閣の不良債権最終処理の加速策のもとで、銀行の貸し渋り・貸しはがしは激しさを増しています。銀行の中小企業への貸出残高は、小泉内閣のもとで四十七兆円も減らされました。

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 郵便貯金や簡易保険で集められた庶民の大切なお金を、国民のくらし・営業の資金として回るようにすることも、ますます重要です。郵貯・簡保の資金を、ムダな公共事業につぎ込んだり、投機市場で「自主運用」するのではなく、中小企業、住宅や福祉・医療施設など国民生活向け財投機関への出資をふやして、中小企業と地域経済に良質な資金を供給できるようにします。

全国一律料金で

 日本共産党は、全国一律料金の郵便事業を堅持します。

 信書など郵便事業を国営事業で一元的に運営してきたのには、ふたつの大きな理由があります。

 ひとつ目は、全国一律料金制が万国共通の大原則であり、日本中同じ料金だからこそ、切手をはってポストに投函(とうかん)すれば配達するという郵便事業が成り立つことです。

 ふたつ目は、信書の秘密、プライバシーの保護です。

 郵便事業の民間開放は、このふたつが大きくゆらぐことになります。

利権・不正にメス

 郵政事業をほんとうに国民に開かれた国営・公営の事業にするためには、大きな改革も必要です。

 郵政官僚を参院選で自民党の比例候補としてかつぎ、特定郵便局長や郵政職員をしめつけて自民党票をかき集めた高祖派選挙違反事件や特定郵便局長への渡切費流用事件のように、自民党の郵政事業私物化、特定郵便局長の「世襲制度」をはじめ利権と不正に徹底的にメスを入れることが大切です。


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