日本共産党

2003年10月17日(金)「しんぶん赤旗」

ここが知りたい 選挙特集

憲法 日本共産党は守り抜きます。

憲法9条には日本国民の苦難の歴史が込められています


 小泉・自民党が「2005年、憲法改正に大きく踏みだします」と大号令をかけています。狙いは憲法九条の改悪です。第二次世界大戦での日本国民の苦難の歴史とその反省がこめられた憲法九条の改悪を許していいのでしょうか。


日本国憲法第9条

(1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

(2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

05年に改憲案 自民が大号令

「創憲」民主 改憲応援団に

表

 小泉純一郎首相が「(自民党)結党五十年に、党として憲法改正案を考えるのはいいことだ」として、二〇〇五年十一月までに自民党改憲案をとりまとめるよう指示したのは八月二十五日。そのときは「公約というのは当面のこと。(憲法)改正はちょっと先のことでしょう」と政権公約に盛り込むのは否定的で、自民党総裁選での小泉公約にも入りませんでした。

 ところが、十月十日に党総務会で了承された「小泉改革宣言」には、「憲法改正に大きく踏みだす」と明記されました。

 首相が憲法改悪の日程にまで踏みこんで指示したのも、自民党が「新しい憲法草案をつくる」ことを公約したのも、戦後はじめてのことです。

 この間に、アメリカからは、執拗(しつよう)なイラク派兵の要求がありました。アーミテージ米国務副長官は憲法問題で、中山太郎衆院憲法調査会会長に、集団的自衛権行使の「柔軟な解釈」を求めたのでした。

 もう一つ、民主党が改憲の応援団にまわったのも大きな影響を与えました。同党の「政権公約(マニフェスト)第一次集約」には憲法問題がありませんでしたが、十月一日の経済同友会との懇談で出された“要望”を入れ、「創憲」、つまり“新しい憲法を創(つく)る”ことを盛り込んだのでした。

 米軍と自衛隊の共同作戦を狙うアメリカと財界との合作で改憲競い合いの状況がつくられたのです。

 「加憲」に転換した公明党も「『改憲』まであと一歩」と語っています。


政府の狙いは 気兼ねなく戦争する国

表

 政府・自民党は憲法を変えて何をやろうとしているのでしょうか。

 アメリカ政府高官や国防総省OBは、日本が集団的自衛権の行使をできないとしていることが同盟協力、つまり米軍と自衛隊の共同作戦を「制約」していると繰り返し強調してきました。(別項)

 自民党の方も、「国会で議論をしているときに突き当たるのが集団的自衛権の問題と、日本は武力行使をしないという問題です」(中谷元・前防衛庁長官、『自由民主』〇二年十二月号)と告白。

 「さらに踏みこんで支援を考えるとなると、どうしても乗り越えなければならないのは、集団的自衛権との関係」だとのべています。

 集団的自衛権とは、自分が攻撃されていなくても、同盟国が攻撃されていれば武力反撃ができるとするもの。海外で戦争するための口実となります。

 憲法九条は、戦争の放棄、無法な戦争はやらない(第一項)、そのために軍隊をもたない(第二項)という二つのことを明確に定めた条項です。

 歴代自民党政府は、この条項とは反対に、自衛隊をつくり、それを大きくし、アメリカいいなりに海外派兵をすすめてきました。しかし、憲法九条がある限り、いくら自民党でも、“海外で戦争をやります”とはいえず、「戦闘行為には参加しない」「危ないところにはいかない」などの建前を掲げざるを得ませんでした。

 結局、いまの憲法改悪の最大の狙いは「九条」を全部なくして、なんの気がねもなく、海外での戦争に乗り出すことなのです。

●米国防大学国家戦略研究所特別報告(いわゆるアーミテージ報告)(二〇〇〇年十月) 「日本が集団的自衛権を禁じていることが、(日米両国の)同盟協力を制約している。これをとりのぞくことは、より緊密で効果的な安全保障協力を可能にする」

●アーミテージ米国務副長官(二〇〇三年六月九日) 「私はリポート(アーミテージ報告)の中で、(日本の集団的自衛権の問題について)日米の軍事協力を明白な理由で妨げてきたものとして言及している。日本政府の当局者たちが最近、その問題について遠慮なく話し、それを広める時だという見解を明らかにしていることを、非常に喜んでいる」(日本人記者団との懇談で)

●ジェームズ・アワー元米国防総省日本部長(「産経」二〇〇三年九月三十日付) (小泉首相が自民党の憲法「改正」案を二〇〇五年までにまとめると表明したことについて) 「自衛隊が自衛のための軍隊であり、日本は集団的自衛権を行使する権利があるということを明確にするためのものである」

戦争に命かけ反対した共産党

グラフ

 アジア諸国を侵略して二千万人を超える犠牲者を出し、三百十万人もの日本国民が、戦場で、あるいは本土空襲で、広島・長崎の原爆で、沖縄戦で命を失いました。この苦難の歴史と、その反省が込められたのが憲法九条です。

 最近でも商業新聞に、有事法制に危ぐを抱いた八十六歳の男性の投書が載っています。「敗戦となり、万死に一生を得て中国から帰国しましたが、痛切に思ったことは、『たとい殺されようとも、二度と戦争に従事はしまい。子や孫にはどんなことがあっても銃を取らせない』でした。憲法9条を『もう日本は戦争をしない』と心から喜びました」(「朝日」五月十三日付)

 日本共産党は、この戦争に反対し、天皇ではなく国民が主人公の民主政治を実現しようと主張して、多くの先輩が弾圧で命を落としました。それだけに、平和条項と国民主権の原則を刻み込んだ憲法を改悪することには絶対反対です。

 いま、世界は国連の「平和のルール」にもとづく秩序づくりを求めています。先制攻撃戦略というアメリカの横暴勝手から「平和のルール」を守るためにも、日本が憲法九条の精神で自主・平和の外交に乗り出すときです。

世界で広がる第9条への期待

バグダッドで

 日本共産党の赤嶺政賢議員も参加した衆院イラク等調査。バグダッドでの現地NGOとの懇談(八月三日)で、個人の資格で活動していた東京出身の女性(十九歳)は「私たちがいまイラクの人たちにプレゼントしたいのは憲法九条です」と発言しました。

カリフォルニアで

 衆院憲法調査会は八月から九月にかけてアメリカ、メキシコ、カナダでの海外調査(中山太郎団長)を行い、日本共産党の山口富男議員が参加。カリフォルニア州立大学バークレー校でスピーチした山口氏は「憲法九条は、侵略戦争にたいする反省にたったものであり、これを守ることがアジアと世界の平和と安定にとって重要だ」と訴えました。

 終了後、山口氏は同校の研究者やアジアからの留学生らに囲まれ握手攻めに。学生らは「九条を大切にしてください」と口々に語りました。

ハーグ市民会議で

 一九九九年五月にオランダのハーグで開かれた世界平和市民会議。百カ国のNGO代表や法律家、学者ら約一万人が参加しました。

 会議では行動準則としての「公正な世界秩序のための十の基本原則」を確認。その第一原則に「各国議会は、日本国憲法第九条のように、政府が戦争をすることを禁止する決議を採択すべきである」と明記されました。


自民・安保に関する改憲要綱案 (抜粋) 

 第一 国家の防衛

 日本国は、国家の独立及び安全を守るため、個別的自衛権及び集団的自衛権を有する。

 第二 自衛軍

 1 自衛軍の設置

 日本国は、第一に掲げる自衛権を行使する組織として、自衛軍を保持する。

 第三 国民の責務

 国民は、国家の独立と安全を守る責務を有する。

 第四 国家緊急事態

 2 国家緊急事態における措置

 (1)防衛緊急事態及び治安緊急事態における措置

 一 内閣総理大臣の権限

 ロ 防衛緊急事態及び治安緊急事態において、内閣総理大臣は、法律で定めるところにより、国民に対し、国家の独立と安全を守るために必要な措置を実施するため、命令を発することができる。

 第五 国際貢献

 国際貢献上必要と認められる場合において自衛軍の軍事力を行使するときは、原則として事前に、緊急の必要がある場合には事後に、国会の承認を得なければならない。

民主憲法調査会報告書 (抜粋) 

 国連集団安全保障と憲法の関わり−第五作業部会報告−から

 …現行の憲法解釈の下では、集団安全保障活動への参加が著しく困難であり、何らかの形での制度的枠組みの改革が必要不可欠であることは明白である。

 …今後、集団安全保障活動への日本の参加を可能にするためには、以下のような選択肢を検討する必要がある。

(1)憲法解釈の変更(略)

(2)安全保障基本法等による規定(略)

(3)憲法の条文改正

 憲法の条文そのものを見直す方法である。その場合、(1)日本が国際平和のために適切な役割を果たすことを明確にした上で、集団安全保障活動への参加を可能とする根拠を憲法条文に明記するか、(2)日本に認められる武力行使のあり方をより一般的な形で書き直し、少なくとも集団安全保障活動への参加を妨げる文言を置かないこと等が、現時点では考えられる。


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