日本共産党

2003年10月4日(土)「しんぶん赤旗」

情勢は日本共産党の前進を求めている

党の値打ちを縦横に語り、情勢を開く攻勢的な選挙戦を

日本武道館での演説会 不破議長の訴え


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訴える不破哲三議長

 日本共産党の不破哲三議長が一日に日本武道館でおこなった演説(大要)は次のとおりです。

 みなさん、こんばんは(「こんばんは」の声)。この広い武道館を会場いっぱいに多くのみなさんがお集まりくださいまして本当にありがとうございます。まず最初に心からお礼申し上げます。(拍手)

 いよいよ解散・総選挙目前という情勢になりました。二十一世紀の最初の総選挙であります。

 この新しい世紀にどんな日本をつくっていくのか、これが一番の問題のはずですが、今の日本ではどっちを向いても先が見えないということがどこでも言われます。選挙を争う政党の中で、誰が先をしっかりと見て、日本の、そして国民のすすむ道をしっかり示しているのか。私はこれが一番問われる問題だと思うんです。

 先日、臨時国会が開幕し、小泉首相が所信表明の演説をしました。私はそれを聞きながら、“この人は先が見えないどころか、今も見えないんだな”ということを痛感しました。(拍手)

 「民間設備投資も上向いた」、「二百万人の雇用をつくりだした」、「新しい企業がどんどん増えている」、「中小企業金融の新しい動きが始まった」――国民の実感とはかけ離れたこんな空宣伝がさんざんやられた上に、空約束を経済だけでもなんと四十二も並べて見せました。その上で、「構造改革の痛みを我慢しよう」という、例の呼びかけであります。

 この先日本がどうなるのか、暮らしがどうなるのか、さっぱり見えない演説でした。マスコミでも“無味乾燥な願望を並べただけ”といった批評が並びました。

これが、日本共産党の「日本改革」の方針です

 みなさん、これに対して日本共産党は、先をしっかり見とおした、「日本改革」の政策をきちんと持っています。私たちは近く党大会を予定しており、その大会で綱領の改定をおこなうことにして、七月にその案を発表しました。

 党の綱領というのは、何も難しい問題ではないのです。国民のみなさんと一緒にどんな日本をつくってゆくのか、政治を変えたらどんな日本ができるのか。そのことをしっかり見定めようというのが、綱領の一番の中身であります。つまり、“先が見えない、しっかりした展望を”という国民のみなさんの求めに、一番ぴったりこたえているのが私たちの綱領案だということを、まず申し上げたいのであります。(拍手)

 私たちのめざす改革には大きな柱が二つあります。経済の改革と安保・外交の問題です。

経済の改革

日本経済を悪くしている三つの根源

 まず、経済の問題ですが、日本経済がとんでもない状態になって久しいわけですから、もうどこでも、あきらめの声が聞かれます。“誰がやっても仕方がない”、“改革をやっても大したことにならない”。

 しかし、今、自民党小泉内閣がやっている「改革」というのは、誰のために経済のどこを直すのかが初めっからはっきりしない「改革」でした。これでは、「改革」という言葉がいくらあっても、それが国民のみなさんの暮らしにずっしりと伝わってこないのは当たり前じゃないでしょうか。

 だいたい、どこの国でも、経済を支える一番の力は、国民の暮らしの活力であります。一人一人のみなさんの暮らしの力は大きなものではありません。しかし、一億二千万の国民の暮らしの活力を全部合わせれば、それは経済の中でも一番の土台をなす一番大きな力になります。ところが、同じ資本主義国の中でも、日本は、この国民の暮らしの活力が、実は一番具合の悪い状態、一番不利な状態に置かれているのです。経済のしくみの問題にくわえ、政治も、大企業や財界の注文にこたえることにばっかり熱心で、国民の暮らしはそっちのけになっている。そこに実は、いまの日本経済のさまざまな矛盾や悩みなどの大もとがあるのです。

 日本共産党の経済改革の方針は、そこにメスを入れよう、そこを大きく改めて、日本経済の大きな改革をしよう、というものです。

 綱領の改定案にも書きましたが、私たちは、経済の改革をやるときに目を向けなければいけないことが三つあると思っています。

 一つは、日本ではルールがおかしい、ということです。

 二つ目は、税金の使い方がおかしいということです。

 三つ目が、なにもかもアメリカに指図されているということです。

 実はこの三つが日本経済を悪くしている一番の根源なんですね。

せめてヨーロッパ並みの「ルールある経済社会」をつくろう

 ルールのことから見てみましょう。ほかの国と比べながら暮らしをしている人はあまりいませんから、日本の経済のルールとヨーロッパの経済のルールとどれだけ違うのか、あまり知らない方が多いと思います。

 実は、このあいだ七月に日本共産党の創立八十一周年の記念講演会がありまして、そのときに私は、労働者の暮らしぶりを取り上げて、経済のルールがヨーロッパのドイツやフランスとどんなに違うかという話をしました。

 たとえば有給休暇です。日本では最高二十日と決まっていますが、だいたいどこの職場でも二十日まとめてゆっくり休みをとるなんて方はいません。病気のときに、きょうは有給休暇で休むとか、そういう使い方が一番多いようです。

 ところが、ドイツやフランスでは、有給休暇で四週間の夏休みと二週間の冬休みをとる。それが労働者の当たり前の暮らしかたになっている。この話をいたしました。

 このときの講演は、全国に衛星通信で放映したものですから、“そんなに違うのか”とあちこちで大反響があって、有給休暇をまとめて取ろう、こんな運動が始まるということまで起こりました。

 それから、リストラは、不況のなか、ヨーロッパでもなかなか激しいものがあります。しかし、会社から解雇された労働者は、失業保険をどれだけもらっているかというと、日本では失業保険の支給は、最高十一カ月ですが、ドイツでは三十二カ月、フランスでは六十カ月。失業した立場は同じでも、置かれる境遇がまったく違ってきます。

 同じ資本主義国でも、日本では働く者の暮らしや権利を守るルールがこれぐらい弱い、あるいはない。ここが実は大問題なんですね。

 では、ルールのないことで、ほかの国に比べて大きな被害を受けているのは、労働者だけかというと、そうではないのです。

 たとえば、きょうは中小業者、中小企業のみなさんもおいでだと思いますが、税金の問題は、いつも頭が痛い問題でしょう。税務署とのあいだでいろんなトラブルがよく起きます。

 ところが日本には、税務署の側はこういう点を守らなきゃいけないというルールがまとまった形で決められていないのです。だから、いきなり未通告で調査にきて、たいへんな目に遭ったりもする。税金を納めている人たちこそ国の財政の主人公のはずなんだが、その納税者の権利を守るルールがないのです。

 世界ではいま、納税者の権利をうたった「納税者憲章」というものがつくられています。たとえばサミット八カ国をみても、「納税者憲章」は、アメリカにもイギリスにもフランスにもイタリアにもドイツにもカナダにもある。これをもたない国は日本とロシアだけです。これも大きな問題です。

 それからまた、これは、十年ほど前に、ある大企業の経営者が、こういうことは世界では通用しないのだと告白したことですが、日本では親企業と下請け企業の間に対等平等の関係がないでしょう。親企業と下請けの関係を結んでいたら、だいたい工賃はたたかれて当たり前、納期は無理を言われて当たり前、支払い条件も悪くて当たり前、それが嫌ならやめてくれ、こういう目に多くのかたが遭われているでしょう。

 ところが、その大企業トップ経営者は言うのです。“欧米では親企業と下請け企業との立場は「対等平等」だ、そのルールが日本の経済界にはない”。

 みなさん、同じ資本主義の国だといっても、私たちの国は、国民の、とくに働く者の暮らしや権利を守るルールがこれぐらい欠けているんです。それをせめてヨーロッパ並みに「ルールのある経済社会」に変えてゆこうじゃないか、これが私どもの経済改革の第一の方針であります。(拍手)

医療・年金・介護──財政の逆立ちをただせば、希望ある道が開かれる

 二番目は税金の使い方の問題です。税金というのは国民からお金を集めてそれを国民のために使うのが筋道ですから、多くの資本主義国で、税金の使い道では社会保障が主役になっています。社会保障は、国民みんなの暮らしを支える一番の制度ですから、ここにたくさんのお金をつぎ込んで当たり前ということです。

 ところが日本では、銀行を助けるのに何十兆円のお金をつぎ込むとか、ゼネコンが喜ぶ大型公共事業を中心に年間五十兆円もの公共事業予算を組むとか、そういうことが先にたって、社会保障のお金はわき役にされています。ですから、社会保障への財政支出が二十兆円で、公共事業への支出がその二倍半の五十兆円だといった状態が長く続いてきました。こんな逆立ち財政の国は、日本以外には世界のどこにもありません。

 こんなことですから、社会保障の必要が広がると、予算が足りなくなる。足りなくなったら、保険料を上げる、サービスを下げる。政府の社会保障対策といえば、いつも国民の負担を増やす改悪の話ばかりです。

 小泉さんになってからでも、去年はお年寄りの医療の改悪がありました。今年は健康保険の本人負担の改悪に年金の改悪、来年はまた年金の改悪と、まさに社会保障改悪の連続でしょう。

 これではいったいなにを頼りにして生涯の生活設計をしたらいいのか、こういう声がいたるところで起きています。その大もとは、税金の使い方の逆立ちぶりにあるのです。

 一昨日、国会の代表質問で、共産党の志位委員長が追及しましたが、みなさんが納める税金のうち社会保障でどれくらい返ってくるかということを計算して、ヨーロッパの国ぐにやアメリカと比べてみると、日本でいま社会保障に使っているお金を五割ほど増やして初めて世間並みになるということが分かりました。十兆円以上の新しい財源を積み増して当たり前だということです。

 そうしたらみなさん、年金の問題でも、医療の問題でも、介護の問題でも、もっと希望の持てる安心して頼れる社会保障の制度ができるではありませんか。(拍手)

 こういうことをやろうというのが、私どもの経済改革の第二の方針であります。

アメリカの指図いいなりの経済から抜け出そう

 三番目には、いつもアメリカに指図されている経済、これも大問題なんです。みなさん方が、おかしいと思われていることの中で、これもアメリカの指図かと、びっくりされることがずいぶんあると思いますよ。

 先ほどお話ししたように、公共事業に毎年五十兆円ものお金を使う、社会保障に二十兆円しか使わない、こういうことが九〇年代からずうっと続いてまいりました。なぜこんなことになったのか。実は、そのそもそもの始まりは、十四年前(一九八九年)、おやじさんのブッシュ大統領の時代に、日本では海部内閣の時でしたが、アメリカから日本はもっと公共事業に金を使えと言われて、十年間に四百三十兆円使いますという約束をしたのです。

 そうしたら、クリントン大統領の時代になって、日本では社会党・自民党の村山内閣の時代です。まだ足りない、もっと増やせと言われて、十年間で六百三十兆円の公共事業をやりましょうと約束した(一九九四年)。期間だけはあとで少し延ばしたのですが、六百三十兆円の公共事業をアメリカに約束したものだから、無駄な事業であろうがなんだろうが、年間五十兆円分はやめられない、こういう状態がずうっと続いたんです。

 それから今、小泉内閣では、「構造改革」という名前で金融の締め付けがはげしい。その看板とされているのは「不良債権の早期処理」です。不良債権というものを片付けなくてはいけないということは前から言われていたのですが、経済ではこれが一番大事なんだ、早く全部片付けろということを大方針にし、そのために経済の流れが狂ってきてもしかたがないということまでやり出したのが、小泉内閣でした。

 小泉さんも総裁になる前から言っていたわけではないのです。一昨年の六月、総理になって初めてアメリカに行って、現在のブッシュ大統領と会談して、これが大事だといわれた、それが絶対の大方針になって、今の締め付け経済が始まったわけです。

 もう一つ言いますと、みなさんが銀行にお金を預けても、いまは利子がついてきませんよね。こんな超低金利、ゼロ金利というのは世界では例のないことですが、いま日本ではそれが当たり前になっています。ゼロ金利の時代が始まった時には、多くのお年寄りから生活設計がくずれたという悲鳴があげられたものでした。

 これも誰が始めたのかというと、アメリカの注文であります。日本の金利をアメリカの金利よりも4〜5%は低くしていないと、お金が日本からアメリカに流れ込んでゆかない、だからアメリカの金利よりもずっと低い所におさえろ、そういう圧力がずうっと掛けられて、世界でも例がないゼロ金利が何年も続いている。

 みなさん、こういう調子で、経済の大事な要(かなめ)の一つ一つを、アメリカに指図されているような国では、本当に国民のための経済改革ができないのは当然ではないでしょうか。(拍手)

 国民の暮らしを守る経済のルールをつくる、社会保障を中心にするように税金の使い方をまともに正す、アメリカに指図されないで経済の方針は自主的に日本の実態に合ったやりかたで決める、こういう方向で経済の改革をすれば、みなさん、どんな問題でも、小泉流の逆向き「改革」とはちがう、すばらしい答えが出てくることは間違いない。このことを私は申し上げたいのであります。(拍手)

外交・安保の面で

「日本はどうしてアメリカに反対といえないのか」

 改革の第二の柱は、外交と安保の問題です。

 日本の外交はこれまで、どの内閣のときでも、世界ではたいへん影が薄いものでした。なぜかと言いますと、日本はいつもアメリカのいいなりで、アメリカの言う通りに行動しているから、どんな国際問題が起きても、わざわざ日本の意見を聞く必要はない、そう言われたものでした。だから日本で大騒ぎして総理になって、ヨーロッパをたずねても、訪問した日の新聞を見ると間違って別の人の名前が書かれている(笑い)、そんなこともよくありました。

 しかし、小泉さんになってから、とくに去年から今年にかけて、影が薄かった日本外交ががぜん目立ってきたのです。アメリカいいなりをやめたから目立ちだしたのではないのですね。世界中が反対しているアメリカのイラク戦争に、日本の政府が賛成しているということが、世界でたいへん目立っているのです。

 イラク戦争の問題では、国連の事務総長までが、アメリカの行動について、これは国連の原則にたいする「根本的な挑戦」だ、こんなことが認められたら、世界の平和のルールが壊れる、そういう告発演説を国連総会でやっています。「大量破壊兵器がある、その証拠を握っているから戦争でこの危険を取りのぞくんだ」と言って始めた戦争ですが、戦争が終わったら、アメリカが何の証拠ももっていなかったことが、はっきりしてきました。だから、アメリカが始めたこの戦争にほとんど世界中が反対しました。

 その中で日本の小泉内閣は、“断固として”ブッシュ政権を支持し続けているのですから、いまや世界で日本外交はたいへん目立っているわけです。その目立ち方は情けない目立ち方で、私も外国に行きますと、「日本はどうしてアメリカに反対と言えないのか」、しょっちゅうこの質問を受けます。

 ここを変えなければ、日本が二十一世紀の世界を堂々と生きてゆくことはできません。ここでもいくつかの転換が大事です。

自主独立の外交で、国際的な平和のルールを守る

 第一。どこかの国のいいなりになる、これでは外交じゃありません。外交では、日本国民を代表する日本の国の政府として、日本の利益および世界平和の利益と道理に立って、進んでゆく道を自分で決める、自主独立のこの態度がなにより肝心であります。

 しかも今の世界では、世界中の国が集まって国連という組織をつくっており、そこには国際社会が認めている平和のルールがあるのです。戦争というものは、国連が決議したとき以外はどの国もやってはいけない。唯一の例外は自分の国が外国から武力で攻撃されて、それに反撃する時だけだ。そういうことが国連憲章できちんと決まっているんです。そのルールを一貫して守る、ルール破りの戦争をする国があったら「それはルール破りだ」と言って正面から批判する、これが自主独立の外交であります。

 この立場を日本が取り戻すこと、これが第一であります。

憲法の精神をまもり、海外派兵をきっぱりやめる

 第二に、日本はその世界の中でも平和の憲法を持っている国、戦争をやりません、だから戦争のための軍隊は持ちません、そういうことをはっきり書いた憲法第九条を持った国です。だからこそ日本は、平和の問題で、世界の先頭に立つ責任があるのです。その憲法の精神を取り戻すことが、私は非常に大事だと思います。

 自民党の政治家たちは「あんな憲法があると肩身が狭い」、そんなことをよく言います。しかしこれは、アメリカのブッシュ政権など、自民党が付き合っている狭い範囲での話でありまして、世界のいろいろな国の憲法の中で、日本の憲法第九条はもっとも高い評価を受けているものの一つだと思います。

 アメリカにも「第九条の会」といって、日本の憲法九条の精神を世界に普及しようという会までできているんですよ。

 この間、衆議院の超党派の調査団がイラクに最近の情勢調査に行きましたが、その調査から、イラクの学生や青年のあいだに広がっている、こういう声が伝わってきました。「私たちは以前は平和憲法を持ち、平和主義で国の経済を繁栄させた日本にあこがれていた。ところがなんとその日本が、今度はイラクに軍隊をよこすそうじゃないか。信じられない。いったいイラク国民の敵の側に回るのか?」

 本当に日本が世界から信頼される国、尊敬を受ける国、世界平和の活動で頼りにされる国になろうと思ったら、憲法の精神をしっかり守って、海外に軍隊を送るようなことをいっさいやめる、これがまず大事なことであります。(拍手)

 きょうも予算委員会ではイラクに軍隊を送る、送らない、で大論争になりましたが、この憲法を持ちながら自衛隊をイラクに派遣するとは、とんでもない話であります。

国民の意思で、軍事同盟から非同盟の日本へ

 第三。アメリカいいなり外交の根源にあるのは安保条約で、これをやめなければなりません。

 みなさん、アジアをごらんなさい。いまアジアの国で、アメリカと軍事同盟を結んでいるのは、韓国と日本だけです。韓国は、ご承知のように三八度線を挟んで北朝鮮と対峙(たいじ)しており、朝鮮戦争のあと米軍がずっといるという特別な事情があります。そういう事情がないのに、いまだにアメリカと軍事同盟を結んでいるのはアジアでは日本だけです。

 しかも、日本にいるアメリカの軍隊は、日本を守るためではなく、海外遠征を任務にした部隊ばかりです。横須賀の第七艦隊はインド洋・中東方面にいつも出動している。沖縄の海兵隊もそうです。横田の飛行場もそういう役目をしている。全部海外出動を任務にしたいわゆる“殴り込み部隊”で、そんなものに自分の国土を提供しているという国は、世界でも日本以外にないのです。

 私たちはこの面でも、日本は、安保条約をなくしてこそ、アメリカの基地などない非同盟の国になってこそ、平和外交で世界に貢献できる国になれると確信しています。(拍手)

 「いったいそんなことができるのか。横田基地だって石原都知事がいろいろいっていたが、さっぱりうまくいかないじゃないか。横田基地ひとつでさえ片付かないものを、日本中の基地を取り払ってアメリカに帰ってもらおうなどということが果たしてできるのか」

 しかしみなさん、これができるのです。安保条約をなくすことは、しくみのうえでは簡単なんですよ。この条約は、日本とアメリカの二つの国が結んでいるものですから、片方の国がこの条約はもういらないという態度を決め、そのことを相手の国に通告したら、一年間の猶予期間を置いて一年後には、条約も米軍基地もきれいさっぱりなくなる。安保条約の第十条にそういう取り決めがちゃんと書いてあるのです。だからこれは、安保条約のもとでの基地の取り扱いとちがって、別にアメリカとの事前合意はいらない。日本の国民と政府の考えだけで実現できることです。だから、日本国民の多数がその考えになり、そしてそういう政府ができたら、廃棄の通告だけで、安保条約から抜け出して外国基地のない、本当の自主独立の国に変わることができます。

 実はこの廃棄条項というのは、いまの安保条約が結ばれて十年たたないと発動しない条項でした。ですから、一九七〇年に十年の期限が切れて、これからはいつ通告しても安保はやめられる、そういう時代になったときは、日本中が本当に熱い期待でこの日を迎えたものでしたが、残念ながらこれを発動する条件ができないまま今日まできたのです。

 みなさん、早くみんなの声をまとめて、この廃棄条項を発動させ、日本が軍事同盟のない国になり、アジアの多くの国といっしょに非同盟の仲間になる。そして世界の平和のネットワークの中にしっかりと入る。こういう道を開こうではありませんか。(拍手)

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聴衆の声援にこたえる候補者と不破議長(中央)=1日、東京・日本武道館

日本共産党は、野党の段階から、政策実現の努力をつくしている政党です

 私たちはこういう改革──「資本主義の枠内の民主的改革」と呼んでいますが──をめざしています。そしてこの改革を支持する人たちが国民の多数を占めるようになったら、国会の多数を基礎に民主連合政府をつくって政府としてこれを全面的に実行する。こういう展望を持っています。

 しかし、日本共産党はその日がくるまで静かに待っているだけという政党ではもちろんありません。いま野党でいる段階でも、この方針を現に行動に移し、その実現のために国の内外で奮闘している政党であります。

野党外交で世界の政治に直接働きかける

 外交の分野では、私たちは世界政治に直接働きかける野党外交を展開してまいりました。いまのイラク戦争の問題でも、小泉さんは最初から戦争賛成でしたが、私たちは、世界政治の上で反対の世論を広げるために、昨年来ずっと活動してまいりました。

 去年の八月には私が団長となって中国を訪問し、中国の首脳部と会談を重ねました。さっきいいましたように「国連にはルールがある。それを破って勝手に戦争を起こすものに対しては相手が誰であろうと反対だ。この立場でアメリカのイラク戦争に一致して反対しようではないか」、こういう話を積み重ねました。そして最後に当時党総書記・国家主席だった江沢民氏との会談で完全に意見が一致しました。中国がイラク戦争反対という態度を公に表明したのはこのときが最初だったのです。(拍手)

 外交というのは、どんな行動や提案をやるときにも、どういう道理にたってそういう態度をとるのかということが一番大事なのです。

 私たちは、中国での会談で議論しあって打ち立てたこの道理を持って、十月には緒方靖夫さん(党国際局長、参議院議員)を団長とする代表団が中東のイスラム諸国を訪問しました。どこでもこの道理で完全に意見が一致しました。アメリカに自分の国の防衛を全部任せているような国でも「全く賛成だ」と意見が一致するわけですね。十二月に志位委員長がインド、スリランカ、パキスタンと南アジア三カ国を訪問したときにも、どこでもこれで一致しました。

 私たちはそういう経験から、国際政治の上でイラク戦争反対の国際世論が多数になるという状況をつくりだす上で、私たちの野党外交が一つの力になった、そのことを実感しておりますし、そのことを誇りともしているものであります。(拍手)

 こうして、平和をめざす連帯のネットワークをわれわれが築いてきたことは、長い将来を考えても、そういう国ぐにと日本の国民との間の連帯の広がりという点からいって非常に大事な意味を持つと思います。

全党の草の根の活動こそ野党外交の最大の推進力

 そして私がここで強調したいのは、こういう活動の背景には、私たちの外交活動が世界に通用する道理をいつもふまえていることと同時に、日本共産党が日本の活動で勝ち取ってきた地位と立場が非常に大きく働いている、ということであります。

 私は外国を訪問するとき、いつもこれを持っていきます(リーフを掲げる)。これは、「日本共産党とはどういう政党か」ということを英語とフランス語で書いたそれぞれ四ページのリーフレットです。

 その一番最初に、党員は約四十万、党の支部は二万五千、機関紙の読者は約二百万、特派員は世界十一の都市にいる、国会議員は衆参四十議席――これは七つある政党の中で四番目――、地方議員は四千二百人で、これは政党の中で第一党、こういうことをまず書いてあります。

 このリーフレットを受け取った人はまずここから読み出して、“世界にはいまこんな元気な共産党があるのか”と、そこから話が始まるわけですね。

 この間私はチュニジア、北アフリカのイスラム国ですが、その国の政権党の大会への招待を受けて訪問してまいりました。そこで女性の大臣に会った時、政治活動への女性の参加がたいへん大事だということが話題になって、日本での女性議員のことを聞かれました。私が、“私たちの党の地方女性議員は千三百名以上いて、ほかの政党の女性議員を全部合わせたよりも多いんだ”といいましたらたいへん驚いて、改めてしげしげと日本共産党を見直す、こういうことが表情にもありありと出ていました。

 実際、去年の十二月の政府の統計によりますと、共産党の地方女性議員は千三百三名、自民党、民主党、公明党、社民党、自由党──他の政党の女性議員の合計が九百七十一名。わが党一党の方がはるかに大きいんです。(拍手)

 野党外交というのは、日本共産党のそれを担当している幹部だけの仕事ではないんですね。日本共産党はこういう力を持った党だという、その力をつくり上げている全党の草の根の努力とその成果が、実は野党外交の最大の推進力になっている、そのことを、私はこの機会にみなさんに報告したいのであります。(大きな拍手)

 ですから私自身、こういうときには、日本のみなさんの活動の姿をいつも頭に思い浮かべながら話しているわけです。

国内政治では、国会活動と各地の努力が結びついて

 では国内では何をやっているのか。野党であっても、わが党の道理ある立場が政治の現実を動かし、経済の現実を動かしてきたという問題は、本当にたくさんあります。

 たとえば、先ほど公共事業の話をしました。七、八年前でしたか、私たちが、テレビでの討論会などで、公共事業五十兆円などは間違ったやり方だ、これが国民の暮らしをひどくし、日本の財政を破たんさせているんだ、そういう話をしますと、当時は、自民党などは、なにしろアメリカとの約束があるわけですから、頭から問題にしないという態度でした。ほかの野党も多くは冷たい態度を取りました。

 しかし、この間の自民党の総裁選挙のときに、自民党のいろんな幹部がテレビでものをいうのを聞いていたら、でたらめな公共事業が多い、なかでも東京湾横断道路はひどいとか(笑い)、関西で国際空港を二つもつくろうというのは問題だとか、日本共産党が前から主張していたことを自分の以前からの主張であるかのような顔をしていっている幹部が次つぎ出てくるのです。これは、自民党でも、でたらめな公共事業をいままでのように勝手にやるわけにはいかなくなったということです。ゆがんだ形ではあるが、私たちの主張が自民党の中にもそこまで浸透してきたわけであります。(拍手)

 ルールの問題では、私たちは「サービス残業」の問題をずいぶん取り上げました。国会で二百回をこえる質問をしました。「サービス残業根絶法案」も具体的に提案しました。政府も、残業させてお金を払わないのは「犯罪」だと国会で答弁し、通達を二度にわたって出しました。

 私たちのこういう活動と結びついて、いろんな職場の人たちが奮闘し、この二年半の間に全国で「サービス残業」による不払い賃金を百五十億円以上も支払わせました。こういう流れをつくりだしているわけであります。

 みなさんの身近な問題では介護保険の問題があります。私たちは介護保険が実施される前から、「保険への機械的な切り替えで福祉の制度を断ち切ったらたいへんなことになる。低所得者に対する保険料や利用料の減免制度を取り入れるべきだ」ということを主張し、制度が実施されてからも具体的な提案を五回もしてきました。

 政府は最初、「減免制度などを入れたら、制度の基本が壊れる」などの妨害発言をずいぶんしていたものですが、私たちのこの活動は全国各地の多くのみなさんの活動と結びついて、現在までに、これは四月現在で政府が調べた数字ですが、六百九十五の自治体で保険料の減免制度が実現し、九百八の自治体で利用料の減免制度が実現する、私たちの提案はここまで実りを見せてきました。

 これはごく一例です。このように私たちは、民主的改革を実行する民主的な政権づくりに奮闘すると同時に、野党である現在の段階でも、一歩一歩、国民要求の実現のためにがんばる党だということを、みなさんにご紹介したいのであります。(拍手)

自民党と財界は、二つの大悪政の地ならし作戦を開始しました

 さらに私がいま訴えたいのは、いまの日本の政治の現状のなかには、この党がもっともっと大きな力を持つことを求めている特別な状況がある、ということであります。

 小泉政治は国民に痛みを押しつける悪政です。しかし、この一年ぐらいの間に、政府、自民党、財界が、「構造改革」のつぎにやろうとしている大悪政、その大きな二つの目標を持っていることが非常にはっきりしてきました。これが計画通りに実行されたら、二十一世紀の日本国民の前途が黒い雲で覆われてしまう、そういうたいへんな問題であります。

憲法改悪

 一つは憲法の改悪です。

改悪の眼目は、気兼ねなく戦争のできる条件をつくること

 先ほど憲法九条の話をしました。九条には条文として二つの中身があるんですね。一つは“戦争をしない”という条項。そのために“戦力(軍隊)を持たない”という条項。この二つが憲法九条の大きな柱となっています。

 歴代自民党政府は、まず「戦力(軍隊)を持たない」という条項を棚上げして、自衛隊をつくり、これを軍隊としてだんだん大きくしてきました。つづいてこの数年の間に、憲法九条のもう一つの条項、「戦争をしない」という条項までひっくり返そうとくわだて、海外派兵の一連の法律をつくってきたのです。

 周辺事態法とか、テロ対策特別措置法とか、イラク支援法とか、自衛隊を海外へ出す法律をつくってきました。しかし、海外へ出ていった自衛隊が軍事行動をやれば、憲法の持つ“戦争をしない”という条項をあからさまに踏みにじることになる。それが国会でいつも議論されるわけです。さすがの自民党も、そこまでやるとは言えないわけで、海外へは出すが、“戦争には参加しないんだ”という言い訳をいつもします。

 テロ対策法でインド洋に自衛艦が行きました。国会でわれわれが追及するものですから、インド洋へは行くが戦争行為はやりません、というのが政府の言い訳です。そしてアメリカの航空母艦などに給油する、そういう仕事をやっているだけだから憲法違反じゃないんだと言い訳をします。

 しかし、そういう言い訳の枠内で海外に自衛隊を出しているのでは、もうアメリカの注文に応じられない。ここまできたわけですね。「日本の自衛隊はイラクに行っても戦争行為はやりません」、そういうことはいっていられない。そこまできた。

 そこでいよいよ今度こそ憲法の九条そのものを変えて、もう憲法への気がねなしに海外で平気で戦争ができる状態をつくろう、これが大きなねらいであります。

 その憲法改悪について、小泉首相は、再来年十一月が自民党の結党五十周年にあたるから、それまでに自民党の憲法改悪案をつくるんだと、日取りまで決めて宣言しました。こういうことを宣言した首相は歴代の自民党首相のなかで小泉さんがはじめてであります。

 まさに、小泉政治は、つぎの戦略目標として、憲法第九条をやめることをはじめ、憲法の改悪をやってのけるんだという大目標を掲げたのであります。

消費税大増税

財界が主役、小泉内閣の三年間は地ならしの役目

 二番目は消費税の大増税です。こっちのほうは、財界が主役なんです。

 いきなり自民党が言い出すと今度の選挙で風当たりが強くなる、だから自民党のスポンサーである財界がまず声をあげました。日本経団連という団体がありますが、「いまの5%消費税を二ケタにして、将来は16%、さらには18%をめざす」という目標を発表しました。それから税制改革の方針を政府に提案する、税制調査会というのがありますが、この調査会も六月の答申で、消費税率を二ケタまで上げるべきだという提案をしました。

 さらに日本経団連は、これから政党に献金するときには、消費税の値上げと法人税の引き下げに賛成するかどうかを最優先の基準にして献金をする、つまり財界の献金で、消費税二ケタ値上げの方向で政党にヒモをつける、こういうことまで宣言して増税大運動を開始しました。

 国会を見ていますと、小泉さんが「消費税の値上げは三年間はやらない」と盛んにいいます。これを見て、「小泉さんがああいっているんだから安心だ」と思ったらたいへんなんです。

 実は財界でも、今言い出したらすぐに来年からできるなんて、誰も考えてはいません。前の消費税導入のときにも、いちばん最初に自民党がいい出してから竹下内閣が導入するまでに十年かかりました。国民の気持ちを「増税やむなし」という方向にもってゆかなければ、政権の命運にもかかわる大失敗になりますから、世論づくりだけでも三年間くらいの時間は最初から予定しているのです。

 政府税制調査会の会長の石弘光さんという人は、消費税増税の答申をした後、記者会見で「国民世論の形成には二、三年かかる。小泉首相にはその地ならしをやってもらいたい」と言いました。小泉改造内閣の役目は地ならし役だということを正直に発表しているのです。

 だから小泉さんは、国民向けには「三年間はやらないよ」と言いながら、改造内閣をつくって谷垣(禎一)さんを財務大臣に指名したときには、「準備をちゃんとしろ」と話をしたようで、谷垣財務相はその日の記者会見で、「消費税率引き上げの議論を積み重ねること」を自分の任務の一つにあげました。

 これも憲法改悪と同じで、消費税の二ケタ税率への引き上げを、何年がかりの大戦略の目標として、財界と自民党が打ち出したということです。

 みなさん。消費税の増税がおこなわれたらどうなりますか。税率1%当たり二兆五千億円の税金です。今は税率5%ですから十二兆五千億円。10%になったら二十五兆円。日本経団連がいう16〜18%になったら四十兆円から四十五兆円という巨額にのぼります。

 今年の予算では、国税・地方税あわせて税金はぜんぶで七十六兆五千億円です。その半分以上にあたるものをみなさん方の毎日の売り買いのなかから取りたてよう。一方、企業にかかる税金はもっと安くしてゆこうというのです。財界・大企業にとっては笑いのとまらない話だが、国民にとっては、こんなにひどい税金地獄はないのではないでしょうか。

どちらが国民の多数派になるか──大政治戦が始まる

 私は、今度の選挙を考えるときにも、自民党政府・財界が小泉構造改革の次の目標として、かたや憲法改悪、かたや消費税大増税、この目標をはっきり打ち出し、そのための地ならし作戦を開始したということが、非常に大事だと思います。

 小泉政治の今後の三年間は、一面では、彼らがその環境づくりをやろうとする三年間となるでしょう。つまり、憲法改悪賛成の多数派づくり、消費税増税やむなしの多数派づくりをやろうとするでしょう。それにたいして、国民の側が憲法改悪は許さないという多数派づくりで立ち向かう、消費税の増税は許さないという多数の声の結集で立ち向かう、この大きな政治の対決がいよいよ始まります。

 これが二十一世紀の運命を分ける大対決だということを、ぜひみなさん方の胸にしっかりとめていただきたいと思うのであります。(大きな拍手)

 わが党はもちろん、どちらの計画にも絶対に反対であります。平和を願い生活向上を願うすべての国民とともに、国民多数の世論を結集して、この野望を打ち破るために全力を尽くします。

野党のあり方も、選挙戦の大きな争点の一つです

民主党は、憲法改悪も消費税増税も「反対」の立場をとらない

 しかし野党の戦線を見ると、たいへん危険な状況があります。野党第一党の民主党は、憲法改悪にたいしても「反対」ではないんです。消費税増税にたいしても「反対」とはいわないんです。

 憲法問題ではどうかときかれると「論憲だ」といいます。“議論を大いにやりましょう”ということで、そのうち「憲法改定」の民主党案も出てくるかもしれません。つまり憲法擁護じゃなしに、「改定」そのものは結構だ、中身を考えましょうというのですから、最初から一歩譲っています。

 消費税はどうか。増税して社会保障の財源にあてようという考えが民主党のなかにはきわめて有力な形でありますから、これも「増税反対」とは絶対に言わない立場なのです。

 みなさん。よくマスコミでは、一口に与党・野党とまとめて、野党の代表は民主党だと簡単にいいますが、野党といっても、日本の平和と国民生活の根幹にかかわる相手側の大攻撃をめぐって、こういう大きな立場の違いがあるんです。

 私たちは、意見や立場が違っても、自民党の悪政に反対し、国民の要求を実現する立場で前向きの一致点があれば、国会の野党共闘の発展に努力してきました。この立場は選挙後の新しい国会になっても変わらないつもりであります。

 しかし、選挙でどの党を選ぶのか、しかも野党のあり方が問われるときには、野党のなかにもこういう違いがある、どちらの立場が国民の利益になるのか、それを選ぶことが選挙の大事な争点なんだということを、私たちは率直にみなさんに訴えなければならないと思っています。(拍手)

 憲法や消費税での相手側の大攻撃にたいして、民主党がどうしてそういう態度になるのか。民主党の多くはかつては自民党にいたり、一緒に政権を組んだことがある人たちですから、この党の政策そのものが、自民党政治の大枠からなかなか抜け出られないという弱点がもともとあります。

 しかし、それに加えて新しい問題も生まれています。「政権公約(マニフェスト)」づくりといいまして、“政権をとったら当面こうやります”ということを、民主党はいま選挙の中心にすえようとしています。そうしますと、悪政に反対する野党の責任がおろそかになって、自民党はこうやっているが、私たちは、ここをこう変えますということだけが前面にでてくる。やればやるほど悪政反対の野党の立場を、自分で掘り崩す結果になる。こういう問題が最近の論戦の中でずいぶん出てきます。

 私はこれは、野党としては邪道だと思います。

比例代表議席80削減──こんな「政権公約」をかかげる政党がどうして「民主」の党と言えるのか

 しかもその「政権公約」のなかにたいへん危険な“毒まんじゅう”が含まれているのです(笑い)。比例代表議席を八十議席減らす、きょう(一日)も予算委員会で菅さんが小泉首相に賛成かどうかを盛んに追及して、「賛成だ」といわせて喜んでいました。

 選挙制度についての民主党の方針は、やがては比例代表を全部なくして、小選挙区制一本にする、かつて自民党の一番のタカ派的な選挙制度改悪派がとなえた方針です。その第一段階が比例代表の議席を現在の百八十から百に減らしてしまおうという、「政権公約」となって現れているのです。

 比例代表というのは、今の選挙制度のなかでは、国民の考え方、「民意」が一番的確に反映される部分です。民主党以外の野党は、私たちの党も社民党も、多くの議席を比例代表で得ています。それを大幅に減らし、やがては全部なくしてしまうというのですから、これは結局、選挙制度を変えて自分たち以外の野党は国会から追い出してしまおう、こういうことではありませんか。

 そういうやり方で、人工的に二大政党にもっていって、これが二大政党だという体制づくりをする。私は、これは、最悪の党利党略だと思います。

 しかもみなさん、どういう名目でこれを主張しているかというと、政権公約の「税金の無駄遣いをやめる」というところに入っているんですよ。八十議席を減らしたら、五十八億円節約になるそうです。節約をいうなら、みなさん、なんで三百十七億円の政党助成金に手をつけようとしないのでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)

 選挙制度というのは、国民の意思をきちんと反映するのが一番の眼目であります。それを体現しているのが比例代表の制度であります。その比例代表の制度を「税金の無駄遣い」呼ばわりして、政権をとったら来年すぐその法案を出します、自分たち以外の野党つぶしをすぐ始めます、そんな「政権公約」を掲げる党が、どうして「民主」の党といえるのでしょうか。(拍手)

 私は、このような反民主主義の暴挙は、絶対に許すわけにはゆかないと思います。(拍手)

 みなさん、自民党小泉政治と対決するうえでも、財界の野望を打ち砕くうえでも、二十一世紀の新しい日本に道を開くうえでも、野党のこの二つの流れの、どちらを選ぶのか、このことが今度の選挙で問われているということを、私は強く訴えたいのであります。(大きな拍手)

草の根の総力で、日本共産党躍進への情勢を切り開こう

自民・公明の反共攻撃は戦前の共産党「国賊」論の復活

 みなさん、日本共産党が伸びてこそ政治が国民のものになる。相手はそのことをよく知っています。だからこそ、毎度、毎度の反共攻撃であります。

 しかし、選挙のたびにおこなわれている汚い反共宣伝は、戦前の軍国主義の時代を思い起こさせるような、いわば共産党「国賊」論──共産党であるから悪いという共産党「悪者」論であります。こういう反共宣伝を現代の日本で平気でやるということは、日本の政権党、自民党や公明党が、民主主義からどんなにかけ離れた政党であるかを物語るものであって、私はそれは、世界の現状を見るとよくわかると思います。

イスラム世界と日本共産党の交流の発展

 いまの世界は、そんな反共主義は通用しない世界になっています。私は、その本当にいい例が、私たちとイスラム世界との交流のなかに表れていると思います。

 イスラムの国ぐにと日本共産党との交流は、私が団長となって四年前にマレーシアを訪問したときからはじまりました。そのときに会談したマレーシア政府の幹部が最近、当時をふりかえって、いうんです。“自分の長い外交官生活でもあれは、忘れられない緊張した会談だった。しかし、そこでの意見交換が自分の認識の視野を広げてくれた”。こういうことまで話してくれます。

 よく聞いてみますと、イスラムの世界では、宗教の立場でいいますと、“神を信じない共産党は「絶対悪」”ということだったとのことでした。その「絶対悪」に属するはずの日本共産党と会い、実際の方針・姿を知って、友好関係が積み重ねられてきたのですから、おたがいに深い感慨をもつのも当たり前です。

 イスラム世界との付き合いが広がるなかで、去年は、緒方さんを団長とする代表団が、サウジアラビアを訪問しました。サウジアラビアというのはイスラム教の教祖ムハンマド(マホメット)が生まれたところで、イスラムの“盟主”の国と呼ばれている国です。サウジアラビアやイスラム世界の様子を知っている人たちは、そこへ共産党が迎え入れられて、会談をするなんてことは、“考えられないこと”だったとみな言います。

 ところが、現に、日本共産党の代表団がそこへ迎え入れられて会談をし、イラク戦争の問題で完全に意見が一致したのです。どうしてそういうことになったのか、いろいろ聞いてみますと、別にサウジアラビアが方針を大もとから変えて、どこの共産党でも迎え入れようという態度に変わったわけではない。ある政党を迎え入れるには、徹底的な調査をして、その調査に合格しないと入国を認めない、これが当たり前だというのですね。日本にいるサウジアラビアの大使が、本国政府から求められて日本共産党の活動についての非常に詳細な報告を本国に送ったそうです。そういうことも全部吟味して、日本共産党を迎え入れようということになったのです。

 その話をしてくれたマレーシアの政府の幹部は、“あなた方はサウジの高い敷居に合格したんだ”と言いました。(拍手)

 私も、緒方代表団の訪問は、おそらく共産党の代表としては、サウジアラビアへの最初の訪問だったと思います。

 そしてその幹部は続けていいました。“そこで会談し、意見が一致したということは、これからあなた方がイスラム世界で交流する上で、ものすごい説得力を持ちますよ”。サウジアラビアの“高い敷居”に合格した党だから絶対大丈夫だ、いわば身分証明書のようなものだ(笑い)、ということです。

世界から見れば、日本の政権党の反共主義は本当にみすぼらしく見える

 ここでうれしい報告があります。イスラム諸国会議機構の首脳会議が、この十月半ばに、マレーシアの首都クアラルンプールで開かれるんです。世界五十七カ国、十二億をこえる人口を代表する国ぐにが参加する大会議です。いまの世界情勢のもとで、イスラム世界の首脳がいっせいに集まるわけですから、国連の事務総長もくるし、世界の注目のまとになる国際会議です。

 その会議に、日本共産党の国際局長である緒方さんが、ゲストとして招待されることが決まったのです。(驚きの声と大きな拍手)

 かつては、「絶対悪」と位置付けていた党を首脳会議に招待する。これはイスラム機構の三十二年の歴史ではじめてのことだと思います。もちろん日本共産党にとっては、歴史上はじめてのことです。(拍手)

 マレーシア訪問からちょうど四年ですが、イスラム諸国と日本共産党との友好・信頼の関係がここまで発展したというのは、私自身本当に感慨深いことです。ここには同時に、二十一世紀の、平和と進歩に向かう世界の変化が力強くあらわれているではありませんか。(大きな拍手)

 そしてそのなかで見ると、日本の政権党の反共主義は本当にみすぼらしく見えるではありませんか。(大きな拍手)

 みなさん、わが党は国民とともに日本の安心できる未来を切り開く方針と展望を持っています。

 世界政治のなかでも、交流しあう国が年ごとに増える、どんな壁ものりこえて、平和と連帯のネットワークを大きく広げている党であります。

 そしてわが党は二十一世紀に実現すべき大きな理想を持っています。戦前のあの暗い時代、私たちの先輩たちは、「国民が主人公」の民主主義の実現のために命がけで奮闘しました。その理想は、戦後、民主主義と平和の憲法として実現しました。

 いま私たちは、当面の民主的改革──資本主義の枠内での改革をめざしてがんばっていますが、やがては日本社会は、さらによりすすんだ改革──資本主義をのりこえて、日本の大きな経済力が社会と国民のために働く新しい社会に向かう道に進むだろう、こういう確信を持っています。つまり政治だけでなく、経済の上でも「国民が主人公」になる社会、これが私たちの理想であります。

 このように日本共産党は、「国民が主人公」の信条にたち、どんな場合にも国民の利益を守る立場を貫き、日本社会の進歩と発展のために力を尽くす政党であります。

 みなさん、この党が国民との結びつきを広げ、力を尽くしてがんばるなら、どんな反共攻撃をも打ち破って、情勢を大きく変え、日本共産党の躍進の成果をこの手に握れる、その条件は実際にあります。

 私たちは、党員、読者、後援会員、党支持者、他のどの党にも負けない、草の根の力を持っています。その草の根の総力をあげて躍進の情勢を自分の手で開く、こういう選挙戦を展開しようではありませんか。(拍手)

総力で躍進の情勢をつくりだし、比例で三議席(東京ブロック)をめざす攻勢的な選挙戦を展開しよう

 東京ブロックは、前回の総選挙ではわずかの差で、不破、山口、二名の当選にとどまりました。十一の全国の比例ブロックの中で、票数からいって新しい議席の獲得に一番近い位置にあるのが、私は東京ブロックだと思います。

 私自身は、今回で三十四年の国会活動に区切りをつけ、より若い候補と交代することにいたしました。この機会に、この間のみなさんのご支援に、あつくお礼を申し上げるものであります。(拍手)

 少し歴史を言わせてもらいますと、中選挙区で九回、比例で二回、当選しました。この間の政治情勢には、前進と後退の大きな波が何回もありましたが、四人区で九回連続当選して、共産党の議席を守り抜いたというのは、全国でも旧東京六区だけでありました(拍手)。これは選挙区のみなさんの奮闘で、厳しい情勢をその都度のりこえて勝ち取った成果でした。さらに、比例の二回は、全都のみなさんの力の結晶でした。こうして連続十一回当選という、ほかの選挙区にない記録を勝ち取ったことも、私は東京の力強い伝統に属している、このことを強調したいのであります。(大きな拍手)

 今度の選挙では、比例代表五人の候補者、この五人を含めて小選挙区二十五人の候補者、この人たちを先頭に、草の根の総力をあげて、躍進の情勢をつくりだそうではありませんか。その意気込みで、比例代表では現有の二つの議席をどういうことがあっても確保すると同時に、さらに前進して新しい議席を獲得する。三つの議席をめざす攻勢的な選挙に、知恵と力を尽くそうではありませんか。(拍手)

 日本共産党の躍進へのご支持、ご協力をお願いして、終わるものであります。お互いにがんばりましょう。(大きな拍手)


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