日本共産党

2003年10月4日(土)「しんぶん赤旗」

「年金改革」いうなら年金財政悪化の原因こそ改めよ

小池議員の総括質問(大要)

参院予算委


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質問する小池晃議員=2日、参院予算委

 日本共産党の小池晃議員が二日の参院予算委員会でおこなった総括質問(大要)は次のとおりです。

 小池晃参院議員 年金の問題についてお尋ねします。

 内閣府が六月に発表した世論調査では、67%もの人が日常生活で悩みや不安を感じていると答えております。悩みの中で最も多いのは老後の生活設計。老後の生活を支える年金への不安、これにほかなりません。しかし、政府から出てくる年金の改定案はどれもこれも大幅な削減ばかりです。これでは不安が募るばかりではないでしょうか。

 まず「削減ありき」の議論が横行していますが、現在の公的年金の水準を総理はどう見ておられるか。

 二〇〇〇年度で厚生年金平均月額十七万七千円、国民年金の平均で月額五万一千円、自営業者だと四万四千八百円にすぎない。日銀の世論調査(九月)でも、年金だけでは日常生活費程度も賄うのが難しい、こういう回答が増え、五割を超えています。これが国民の声ですが、総理は現状の年金水準をどう考えていらっしゃいますか。

 小泉純一郎首相 現状の水準のままずっと維持していきますと、これは給付の分を考えますと、保険料の負担が重過ぎる。給付と負担と、そして税金をどれほど投入するのか、両面を見なきゃいけない。

 公的年金に対する信頼性も維持していかなきゃならない。税制としてこの制度を支えるための安定した財源というのはどうあるべきかという点も考えなきゃならない。

 しかし、現状の給付水準を維持するということになりますと、とてもこの制度を支える若い人の負担は負担し切れないであろうという面も考えなきゃいかぬ。そこにこの改革の難しさがあると思っております。

給付大削減――国民の不安募るばかり

 小池 現状でも暮らしていけないという声に全く答えていないじゃないですか。

 さらに、給付の削減が不可避である、削らなきゃいけないんだというふうにおっしゃった。今、どんな削減案が出ているか。厚労省案は保険料を毎年引き上げ、二〇二二年までに(年収の)20%にした上で、二〇三二年以降は、現役世代の所得の60%を保障している年金給付を52%まで引き下げるという。モデル年金(夫婦、四十年加入の厚生年金)なら、月二万八千円、年間三十四万円もの減額です。

 財務省の案では、「年金は最低限の生活を保障できればよい」と。塩川財務大臣は「(現役所得の)40%程度を保障すればいいんじゃないか」と発言している。これでは三割以上の年金削減ということになるんです。

 総理にお尋ねしたいのは、こんなふうに給付削減の提案ばかりでは、ますます年金不信募るでしょう。そうすれば、将来の不安から消費を冷え込ませる、ますます景気を悪化させて、結局、将来のこと将来のことと総理おっしゃるけれども、年金財政の将来をどんどんどんどん火の車にしていく、そういう削減提案ではないか。

 首相 今の給付水準を維持しますと、負担し切れないような保険料を負担しなきゃならない、そういう点も考えなきゃならないということを言ったわけです。

 だから、保険料はこの程度が限度ですよ、そうすると給付水準はどうなりますかと。給付水準を50%がいいのか何%がいいのかというのはこれからの議論ですが、そのためにはどういう安定した財源を確保するかというのが今後まとめていかなきゃならない主要な論点だと思います。

 今の保険料を払っても、それよりも少ない給付しかもらえないという意見がありますが、決してそうじゃない。民間の年金に比べて損だとか、なくなるとかいう話じゃない。この公的年金には必ず税金投入されておりますし、給付だけでなくて負担の面も両方考えて改革案を取りまとめなければいけないと思っております。

景気の悪化とリストラ支援――2年で保険料収入3兆円の見込み違いに

 小池 社会保障の問題で総理と議論をすると、いつも「給付と負担の問題」だと言う。給付を増やしたいなら負担我慢せよ、負担がいやなら給付を我慢せよと。これでは国の責任はどこにも出てこない。

 年金財政が今急速に悪化している原因を明らかにすることなしに改革の方向というのは出てこないはずだと思うんです。そこで、急速に最近悪化してきている原因がどこにあるのか、これを議論したい。

 最大の原因は、政府のリストラ支援、中小企業つぶしのせい。この結果、年金の支え手が急速に減っているわけです。

 これは一九九九年に政府が立てた見込み、ごく最近立てた見込みと比べて、二〇〇〇年度、わずか一年後で二百十一万人減っている。二〇〇一年度には二百八十二万人、厚生年金の加入者が減っている。その結果、保険料収入は、賃下げの影響もあって、二〇〇〇年度で一兆一千億円、二〇〇一年度で一兆八千億円減っている。たった二年間で入るべき保険料が三兆円も入っていないわけです。

 見込み違いはもう一つあります。積立金の運用の失敗です。この二年間で運用収入が二兆八千億円、予想より減っているわけです。合わせると六兆円でしょう。前回(年金)改定からわずか二年で六兆円も見込みが狂っている。足元がどんどん今崩れているわけですよ、総理。

 景気の悪化とリストラの支援ということで年金収入が急速に悪化している。重大な事態だというふうに思われませんか。ここを直ちに立ち直らせなければ、年金の制度の未来はないと思う。総理答えていただきたい。

 坂口力厚労相 今見せていただきましたその数字というのは、それはそうなるかもしれません。景気が非常に停滞をしたときですから、働く人の数が一時的に減った。しかし、これは一時的な現象でありまして、景気回復されればまた働く人の数は増えてくるわけで、長期的な展望で見れば、それはなくなっていくものだと思っております。

 運用の面も、確かに昨年は株式が低迷いたしましたので下がりましたけれども、今年はかなり上がってまいりまして、減りました分は取り返していると思っているところです。

 小池 景気はこれから良くなるでしょう、株価も上がってまいります、根拠のないそんな見通しで今起こっている事態を正面から見ない。まったく無責任だ。

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20代の加入者が激減――現在と将来の支え手が減る二重の悪循環

 小池 なぜこのように厚生年金の加入者が減少しているのか。パネルをごらんください。(図表掲示)

 最も減少しているのは二十代の青年です。二十代の青年労働者が、厚生年金の加入者が激減をしているわけです。九六年度には九百七万人の加入者だったのが二〇〇〇年度には、予想は九百万人だった、ところがその予想を百万人も下回って、八百八万人。さらに二〇〇一年度には七百六十八万人。九六年度には47・4%だった加入率が42・9%まで下がってきている。現在、四割切っているかもしれない。これは、言うまでもなく雇用の流動化政策がもたらしている。一時的な現象じゃない。政府の政策がこういう事態を作ってきている。

 この層の加入者が減っていることによって厚生年金の基盤が急速に崩れてきているわけです。保険料の支え手が若年者で減るというのは、一つは保険料の支え手が減ることによって当面の財政が悪化する。それだけじゃありません。不安定雇用が増えれば晩婚化、少子化が進んでくる。そうすれば将来の支え手も減らしていくんです。現在の支え手を減らし、将来の支え手を減らす、二重の悪循環が起こっているわけですよ。

 こういう深刻な事態が進行しているときに、それに手を打たずに年金制度の安定なんて図れるんですか。総理、お答えいただきたい。

 厚労相 その表が示しておりますのは、現在の二十代前半の雇用の問題に関係していると思います。

 確かに、その時点におきます雇用というのは、非常に状況が悪いことは事実でございまして、今一生懸命手を打っている。そこの雇用の問題を解決をしていくことにこれからも努力をしたいと思いますし、そのことによって二十代、特に前半の皆さん方の低い加入率を上げていかなければならないと思っております。

 これは可能だと思っておりまして、来年からもデュアルシステムを新しく導入をして、お若い皆さん方にも一部勉強をしてもらいながら、お勤めをいただけるような課程も作りながら、その部分の雇用の回復に努めていきたいと考えているところです。

 小池 青年雇用対策を進めているとおっしゃいますけれども、内閣府の国民生活白書でも、フリーターの増加の原因というのは、「企業が新卒正社員採用を厳しく抑制しているため」とはっきり書いてある。

 ところが、今御紹介になった政府の「若者自立・挑戦プラン」、これは若者自身に頑張って挑戦しなさいよという話で、企業に対して新卒者の採用、若者の採用枠を増やせ、こういう施策一つもない。あるんだったら挙げてください。政府が大企業に対して若者の雇用責任を果たすよう働き掛けることこそ今求められている。そういう施策を一切打たずに、雪崩を打って雇用環境が悪化している状況に歯止めを掛けることなんてできないですよ。こういうことに本気で取り組むことこそ年金制度の立て直しにつながっていく。

 年金財政を悪化させたのはこれだけじゃありません。支え手を減らしたということを一つ挙げましたが、三つ原因があると思っています。

 まず、基礎年金に対する国庫負担二分の一への引き上げの先送りです。九四年の国会で、自民党も賛成して九九年までにやると付帯決議を上げて、実は四年前にやるべきことだった。それを先送りしたんです。そのうえ、来年度やらなければいけない二分の一への引き上げをまた先送りしようとしているじゃないですか。

 これは国民に対する約束ですよ。歳出見直しのあらゆる努力を行って、来年度やるべきことではないですか。

 厚労相 二分の一への引き上げにつきましては、政府として全力を挙げて取り組んでいるということです。

 それは今後どういう年金制度にするかということともかかわってくる話ですから、それを決める中におきまして基礎年金の国庫負担の問題も決着を付ける、こういうことです。

 小池 ごまかしですよ。やるって決めたんですよ。二〇〇四年までに財源を準備して二分の一に引き上げる。五年間準備期間があった、それをやらなかったのは政府の責任じゃないですか。今もう十月ですよ。来年までにこれをやれるんですか。先送りは断じて許されない。

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掛け金から90億円使った施設を3億円で売却――このうえ国民に“痛み”か

 小池 それから二番目、積立金の運用の問題です。

 株式の問題で大変な穴を開けているわけです。六兆円も穴を開けて、五年後までに積立金を全部自主運用に回そうとしている。これで一体どれほどの損失が出るのか。

 今日は、もう一つの損失の問題を取り上げたい。年金資金、掛け金を、どぶに捨てるように無駄遣いしてきたハコもの造りの問題です。グリーンピアの問題です。

 これは年金掛け金を利用してレジャーランドを造ったわけです、全国十三カ所に。それが大規模年金保養基地と言われている、通称グリーンピアです。

 先日、ある新聞で鹿児島のグリーンピア指宿(いぶすき)を特集していましたが、見出しは「百万坪の廃虚」という紹介をされていた。

 全国のグリーンピアが経営不振で、政府は再来年までにすべて廃止、売却をするという方針だと言いますが、売却できたんですか。売却の見込みが立っているところはあるんでしょうか。

 吉武民樹厚労省年金局長 グリーンピアは、大規模年金保養基地につきましては、年金の被保険者あるいは受給者のための総合的な保養基地、施設という構想がございまして、昭和五十五年から六十二、三年にかけまして全国十三カ所で開所しております。

 平成十七年度までに事業を廃止をする方針でございます。

 指宿につきましては、運営についても赤字が出だしましたので廃止しております。廃止をした後、地元のホテルのような方にも公募をいたしましたけれども、公募が今不調で、現在、地元の指宿市を中心に公的にこれを活用していただけないかということで検討をしていただいています。

 小池 売却の見込みが立っているところはどこですか。

 年金局長 現在、今年の秋に二カ所、地元の自治体を中心に協議が進んでいます。

 その一カ所は、いわゆる介護老人施設に活用していこうということでございます。それからもう一カ所は……

 小池 どこかと聞いているんです。

 年金局長 どうも失礼いたしました。一カ所は岩沼基地です。宮城県です。もう一カ所は福島県の二本松基地、この二基地です。それ以外の基地につきましても、地元の自治体を中心としてこれを利活用しようと、検討体制ができております。

 小池 そのほかは見込みが全然立ってないんです。売却が決まっているグリーンピア岩沼、グリーンピア二本松、ここにつぎ込んだ年金掛け金は、建設費、維持管理費で、過去どれだけになるんですか。

 年金局長 岩沼基地は建設費が七十七億です。維持管理費は、修繕それから固定資産税の負担を中心に出してますが、これが累計で九億です。二本松基地は建設費が八十億、維持管理費が累計で九億です。

 小池 それぞれいくらで売却する予定ですか。

 年金局長 ただいまその地元の自治体と売却の協議を行っているところです。まだその売却の契約が終わっておりませんので、最終的な譲渡額は確定をいたしておりません。

 小池 それぞれの市議会では発表されているんですよ。こういう数字を発表しないことが本当に年金不信をあおっていると思います。国民の掛け金じゃないですか。それを自分たちのもののように使っている。本当に許し難い。

 グリーンピア岩沼の売却価格は三億六百八十五万円ですよ。二本松は三億三千百九十万円。

 九十億円もかけて造った施設ですよ。それを三億円で売る。維持管理費九億円掛かっているんですよ。それを維持管理費の三分の一にすぎない価格で売りとばす。

 こういうやり方をしておきながらだれも責任を取っていない。年金掛け金を次から次へと株式に投資をし、あるいはこういうハコもの造りに投資をし、そして赤字で行き詰まったら二束三文で売り払う、こんなやり方をしていて、国民に対して年金を削減する痛みを押し付ける。総理、こんなことができるんですか。

 ところで、これは昭和六十三年に造った施設です。昭和六十三年に総理は何をされていましたか。

 首相 自民党の国会対策筆頭副委員長だったかな。平成元年に厚生大臣だと思います。

 今の話でもっともな点あるんですよ。私が厚生大臣のとき、何でこの年金福祉事業団の仕事が必要なのか、廃止しろと言ったら、みんなびっくりしましたよ。本当にこれはやる仕事かと。年金保険が、資金が、積立金がたくさんあるから、こういうものを造っていっちゃう。

 私は疑問に思ったから、二回目の厚生大臣やったときに廃止しなさいと言って、こういうことをするなと。無駄なグリーンピアなんてもう国がやる必要ない、事務次官の天下り機関にすぎないじゃないかと言ったのは私なんですよ。

 小池 昭和六十三年に総理は厚生大臣をやっているんですよ、これを造ったときに。今度二束三文で売り渡すところを。

 その後二回目の厚生大臣になって、そのときに、ああ間違ったことをやったのかなと思ったのかもしれないけれども。あなたが厚生大臣のときにこういうことをやっていたことははっきりしているんです。

 しかも、改革したとおっしゃるけれども、何が変わったんですか。年金福祉事業団、確かになくなりました。年金資金運用基金と名前は変わりましたよ。でも、年金資金運用基金の理事長はだれですか。厚生労働省の事務次官が天下りしているじゃないですか、いまだに。そして、株式運用をして大変な赤字を出している。何も変わっていないじゃないですか。

国庫負担――約束通り引き上げよ

 総理、はっきり答えていただきたい。今の年金制度をめちゃくちゃにしてきた三つの原因。これを変えるつもりがあるのか、きっぱり改めるつもりはあるのか。

 基礎年金に対する国庫負担を、約束通り来年引き上げる。そして、積立金でこれだけの損失を作ってきた。これを反省して、積立金は取り崩していく、そういう方向へ行くべきです。

 そして、リストラ支援の政策を根本から改めて、雇用を守っていく、大企業に対して責任守らせ、年金の支え手を増やす。こういう仕事をやらないで国民にだけ痛みを押し付けるなどという議論が通用すると思うんですか。

 首相 今挙げた三つの部分だけが年金財政悪化の理由じゃありませんが、雇用の問題、そして経済成長の問題、加入者の問題、それから給付と負担の問題があるので、(国庫負担を)引き上げろ引き上げろと今一番、税金を引き上げろ引き上げろと言うと共産党は絶対引き上げること、いざ具体的になってくると反対でしょう。どういう税金、じゃどこを税金引き上げるのかという議論はこれからなんですよ。

 負担の方は反対するけれども、年金にしても医療にしても介護にしても、給付だけでもたないんですよ。どこかでだれかが負担しなきゃもたない。

 そういう点を総合的に考えなきゃならないのが社会保障の難しさなんです。

 今、日本は予算の中で社会保障に一番金使っているんですよ。そこで、お互い給付だけのことは考えないでくれと。

 (基礎年金の)二分の一へ税金を引き上げるんだったらどういう税金を引き上げるのか、そんなに税金引き上げるのが嫌だったらばどれだけの給付でいいのかという、保険料、どの程度にするかと、なかなか解決しない問題なんです。

税金の使い方を変えれば財源は生み出せる

 小池 総理は「保険料で取るのか税金で取るのか」と。まるで右のポケットから取るのか、左のポケットから取るのかと、国民からしぼりとることしか考えていない。私は税金の使い方を変えなさいと言っているんです。保険料で取るのか税金で取るのかじゃない。税金の使い方を変えろと言っているんです。

 そもそも、国民が国と地方に納めている税金のうち、社会保障として返ってくるいわゆる見返り率。これを見ると、アメリカは47%です。イギリス43%です。ドイツ44%です。税金の四割が社会保障として戻ってくるんです。ところが日本は29%ですよ。サミット諸国で最低です。公共事業の無駄遣いが続いている。これをやめれば、欧米並みにすれば、年金財源、十分生み出すことできる。

 今のお話を聞いて、小泉内閣には年金財政立て直すことはできないということが、はっきりした。

 年金財政を悪化させた三つの原因を改めることこそ年金財政立て直す道です。徹底的に歳出を見直して、国庫負担を引き上げる。世界に例のない巨額の積立金を計画的に取り崩して年金給付と、保険料の軽減にあてる。大企業に雇用責任を果たさせ、年金の支え手をふやす。そして、深刻な年金制度の空洞化を解決するために、全額国と大企業の負担による最低保障年金制度を作っていくことを、私ども全力を挙げて進めてまいりたい。質問を終わります。


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