日本共産党

2003年9月26日(金)「しんぶん赤旗」

社会リポート

都立盲・ろう・養護学校の性教育

民主・自民都議、都教委が攻撃

教職員92人処分の異常

親、教職員から批判相次ぐ


 東京都議会本会議での、民主党・土屋敬之都議の質問(七月二日)をきっかけに、東京・日野市の都立七生養護学校(三苫由紀雄校長)にたいする都教育庁の高圧的な調査が行われ、九月には他の都立盲・ろう・養護学校も含む教員の処分が行われる異常な事態になっています。「教育内容・現場に不当な支配をしようとするものだ」と父母や教職員、教育研究者から強い批判の声があがっています。

研究者から高い評価

 七生養護学校の性教育は、障害や発達の程度に応じて、親の同意を得ながら教職員が一体で進めており、教育研究者からも高く評価されています。

 土屋都議の質問は「最近の性教育は、口に出す、文字にするのもはばかられるほど」などというもの。質問直後の七月四日、自民党の古賀俊昭、田代博嗣両都議と連れだって七生養護学校を視察し、性教育用教材を提出させ、二十三日に教材を都議会談話室に展示しました。

 一部都議の動きと呼応した都教委の動きも素早く、同九日に三十人を超す指導主事を動員し、同校の教員全員に「拒否はできない」と言い渡したうえで事情聴取。十二日に性教育の全教材を提出させました。

 さらに、八月二十八日には、この問題を契機に都教育庁内に設置された都立盲・ろう・養護学校経営調査委員会が、「都立盲・ろう・養護学校の半数にあたる二十八校で学級編制や教員の服務で不適正な実態があった」などとする報告書を都教育委員会に提出。都教委は九月十一日、校長、教頭、教職員九十二人を処分するという事態になっています。

 しかし、この問題は障害をもつ子どもが増え、教員、教室不足の中でグループに分け授業するなど、子どもの学ぶ権利を守ろうという現場の努力を踏みにじるものです。

現場の実態全く無視

 一連の動きに、七生養護学校の父母からは、「教育現場の実態をまったく無視したもの」と怒りの声があがりました。七生養護学校の在校生・卒業生の保護者の会は日野市に、「七生養護学校の性教育を正しく理解してください」とする趣旨の要望書を提出しました。

 労働組合や教育研究団体、障害者団体など十九団体が七月二十二日に緊急集会を開き三百人を超す人が詰めかけたのをはじめ、都内各地で学習会が開かれています。

 実際に障害児の性教育にたずさわっている女性教諭は、「抽象的な理解が苦手な知的障害児には、教材で具体的に教える必要があります。一部で報道されたような形では決して使わない」とのべ、“過激”という攻撃はあたらないと反論しています。

 清水寛埼玉大学名誉教授(障害児教育)は、「ゆがんだ性情報がはんらんし、障害児が性被害に遭いやすいなかで、こころと体の大切さを、親、学校一体で真摯(しんし)に進めている」と七生養護学校の性教育を評価しています。

 教職員の処分を強行した都教委の動きにたいしては「『不適正な学級編制』などといいますが、子どもの学ぶ権利を守ろうという現場の工夫に、必要な条件整備を怠ってきた自らの責任を転嫁するもので、許されません」(永野幸雄元長野大学教授)という声もあがっています。(室伏敦記者)


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