日本共産党

2003年9月14日(日)「しんぶん赤旗」

視聴者を欺く「ノンフィクションドラマ」の虚構


 フジテレビは十二日夜、「完全再現 北朝鮮拉致…25年目の真実 消えた大スクープの謎!」を放映しました。北朝鮮による拉致事件を追いかけた新聞記者ら三人の男たちの活動を描いた作品です。関係者の証言によるドキュメントと再現ドラマで構成された「ノンフィクションドラマ」というふれこみですが、元日本共産党の国会議員秘書であった兵本達吉氏にかかわる部分では、日本共産党にたいする誤った見方を与える重大な虚構(フィクション)がふくまれていました。

拉致追及の党のとりくみ

 その虚構とは、日本政府に初めて北朝鮮の拉致疑惑を認めさせた一九八八年の橋本敦参院議員の参院予算委員会での質問をはじめ、拉致問題の解決に早くから努力してきた日本共産党にたいして、とりくんだのは兵本氏だけで、日本共産党本部は拉致問題の調査をつづけたその兵本氏を「拉致問題」で除名処分にしただけのように描いていることです。これは、日本共産党の拉致問題のとりくみの点でも、兵本氏の除名理由の点でもまったく事実に反するものです。

 そもそも日本共産党は、北朝鮮の金日成個人崇拝が顕著になった一九七〇年代からそのおしつけに反対し、八〇年代のラングーン爆破事件(八三年)や、日本漁船銃撃事件(八四年)、大韓航空機爆破事件(八七年)など、北朝鮮の国際的な無法にたいしてもきびしく批判し、日本国民にたいする権利侵害や主権侵害を決して許さないという立場を貫いてきました。

 拉致問題でも、八八年の橋本質問で解明に向けて大きな一歩をふみ出したあと、事態の解明をすすめない警察にきぜんとした捜査を求めた諌山博参院議員の質問(九〇年六月、参院地方行政委員会)、横田めぐみさん事件をとりあげた橋本議員の質問(九七年六月、参院法務委員会)、拉致をめぐる日朝交渉の現状をただした木島日出夫衆院議員(九八年三月、衆院法務委員会)など真相解明と事態打開のために奮闘してきました。

 さらに、九九年には、不破哲三委員長(当時)が、代表質問で二度にわたって、拉致問題など日朝間の諸懸案の解決のためにも、日朝両国政府間の正式の交渉ルートを開くべきだと提案もおこないました。この国会質問が二〇〇〇年四月からの日朝国交正常化交渉と北朝鮮がはじめて拉致の事実を認めた昨年の日朝首脳会談へとつながったのです。

 兵本氏は、一九九八年八月の定年退職の直前に規律違反で除名されるまでは、日本共産党の国会議員秘書として党の拉致問題のとりくみの一端を担っていたのが実際のところです。番組のナレーションでは、「質問の内容を考えるのも兵本の仕事だ」とのべ、拉致問題の国会質問を準備したのはもっぱら兵本氏であるかのように描いていましたが、橋本元議員自身、兵本元秘書が『文芸春秋』二〇〇二年十二月号でおこなった拉致問題での日本共産党攻撃に反論したなかで次のようにたしなめています。「一九八八年の時点でこの問題を取り上げ質問しようと提起したのは、ほかでもない、この私である。質問原稿も、秘書二人の調査結果や資料をふまえつつ、私自身が自ら議員としての責任において苦労して練り上げて書いたのだ。私が兵本君のスピーカー役をつとめたかのような言い分は、思い上がりもはなはだしく、無礼というべきだろう」(パンフレット『北朝鮮問題 「反省」すべきは公明党ではないのか』に所収)

 この橋本論文に兵本氏は今日にいたるまで反論できていません。

兵本氏除名の真相

 兵本氏の除名についても真相はこうです。橋本質問から十年後の一九九八年三月に定年を迎えた兵本氏が、半年の定年延長中の退職間際の五月に、東京・赤坂の料理屋で警察庁の警備公安警察官と会食し、国会議員秘書を退職した後の「就職」あっせんを依頼していたことがわかり、日本共産党から除名されたのです。日本共産党などにたいし、違法な情報収集や謀略活動をおこなっている警備公安警察の関係者とひそかに会い、「就職」あっせんを依頼することは、日本共産党員と両立しないからです。拉致事件とは関係ありません。

 ドラマの後半で、兵本氏が「横田めぐみさん事件」の実名報道や拉致被害者の家族会結成に奔走するシーンがありますが、これも除名後のことではなく、日本共産党の一員としての活動です。

 現に兵本氏自身、日本共産党の国会議員秘書として「九七年から九八年にかけて私は全国を駆け回り、拉致疑惑の解明のために全力を尽くした」(『文芸春秋』二〇〇二年十二月号)と書いています。

 拉致事件を調査したから除名されたなどという、時間と空間を飛び越えた虚構は、兵本氏の言い分をうのみにした結果にほかなりません。

 番組の広報資料では、兵本氏や拉致被害者の家族など関係者に百五十時間にも及ぶインタビューをおこない、「すべてのシーンが事実の裏付けをとっている」と書いています。

 しかし、国会で政府を追及した当事者の橋本敦氏をはじめ、日本共産党にたいする問い合わせや取材は一度もありませんでした。兵本元秘書にかんする部分がドラマとしてもリアリティーに欠ける原因は、こういうところにあるのではないでしょうか。

 (菅原正伯)


【関連記事】

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