日本共産党

2003年9月4日(木)「しんぶん赤旗」

草の根運動 持ち寄り熱論

雇用と地域経済を守る全国交流集会


 三日、静岡県熱海市で始まった「リストラ反対、雇用と地域経済を守る全国交流集会」。全労連の熊谷金道議長の主催者あいさつ、全労連の寺間誠治総合労働局長、日本共産党の山下芳生リストラ反対・雇用を守る闘争本部事務局長の問題提起に続いて、労働者や中小業者、女性、弁護士、青年、国会・地方議員がリストラに反対し、雇用と地域経済を守る草の根の運動の経験を持ち寄り、全体会で活発に討論しました。


リストラはね返した

青年の雇用は大問題

発言から

 全国交流集会では、全国各地での草の根の運動やたたかいが生きいきと報告されました。

 長野県労連の菅田敏雄事務局長は、田中県政のもとで、ムダなダム建設の中止などで全国ワースト2の借金を減らす一方、三十人学級の実現や医療、福祉、教育の分野で四年間で二万人の常用雇用の創出をめざす自治体の変化について報告しました。

 無法なリストラをはね返した経験を報告したのは、埼玉県内の自動車部品メーカー・ボッシュの労働者で「ボッシュリストラを考える家族の会」の代表です。

 埼玉から秋田への遠隔地配転、秋田から全国への「玉突きリストラ」の計画に、労働者と家族の要求をとりあげて学習と交流を強めるなかで、労働者の団結が広がり、転籍を迫られた五百人の労働者のほとんどが転籍承諾書提出を拒否。労働組合も動かし、「秋田への転籍は撤回させ、三年を期限とする出向に。玉突きリストラもやめさせた。転籍にともなう生涯賃金の格差も解消させた」とのべ、大きな拍手を受けました。

 「青年に仕事を」の署名を全都道府県で開始したことを報告した日本民主青年同盟の近藤奈津子副委員長。「青年の雇用問題を、日本社会の将来にかかわる問題として、政府と大企業に解決を迫っていきたい」と決意をのべました。

高校生の就職難

 全国私立学校教職員組合連合の谷正比呂委員長は、就職率が16・6%に落ち込んだ高校生の就職難について報告。「高校生は給料を払わないと黙ってやめていくから、人件費がかからない」といってアルバイト代を払わなかったコンビニ経営者の例を紹介。会場から驚きの声があがりました。

 国立病院の職員でつくる全日本国立医療労働組合の代表は、来年四月に独立行政法人に移行する百五十四の国立病院で働く約七千五百人の定員外非常勤職員・「賃金職員」の雇用継続をもとめる運動を報告。「労働行政をつかさどる厚生労働大臣のおひざもとでの首切りは絶対に許せない」と訴えました。

 日本共産党岩手県議の斉藤信さんは、アルプス電気の工場閉鎖問題で、党県委員会に対策本部もつくって地元自治体へのとりくみをすすめ、企業の責任で退職者の約九割に再就職先を確保させたことを報告しました。

燕市のとりくみ

 日本共産党の新潟県委員会の川俣幸雄政策委員長は、金属洋食器などの地場産業と金属加工技術の街・燕市でのとりくみを発言。市の地域産業振興プランの策定委員に民主商工会の代表が選ばれ、積極的に提案。それをもとに市内全事業所の実態調査を実施、市長も高く評価し、日本共産党が提案した中小企業振興条例が全会一致で可決されたとのべました。

 新日鉄八幡党委員会の戸田実紀さんは、千六百度の溶けた鋼が流出し全身やけどで死亡したのをはじめ、労働者の死亡事故が今年だけで三人と続発している死亡災害を告発。「極限までの人減らし『合理化』で、食事もまともにとれないような人的余裕時間のなさが原因」とのべ、家族やOBとも力を合わせて命を守り、安全優先の職場づくりにとりくむとのべました。

 新日本婦人の会の井上美代会長(日本共産党参院議員)、日本共産党の小沢和秋衆院議員が全体会で発言しました。

全労連の熊谷議長

主催者あいさつ

 全国交流集会では、全労連の熊谷金道議長が主催者あいさつしました。

 熊谷氏は、五団体が共同してよびかけた昨年の全国集会から一年半が経過したが、いまなおリストラ「合理化」のあらしが吹き荒れるもとで、長時間・過密労働と過労死や過労自殺、中小企業の倒産と地域経済の疲弊がすすみ、「こうした状態は、日本社会が国際的にみてもいかに異常な社会であるかを端的に示すものだ」と強調。同時に、「もうがまんも限界」とリストラや大企業のルール破りと真正面から立ち向かい、雇用や地域経済を守るたたかいが職場、地域で地方自治体との共同も追求しながら果敢にとりくまれ、新しい変化と運動の流れを築き始めているとのべました。

 この間のたたかいで、(1)リストラ「合理化」を許さず職場に「働くルール」を確立していく運動(2)雇用創出を運動を前進させるためにも、サービス残業の根絶と長時間・過密労働の解消の運動―が前進したことを紹介。「ルールある社会」の確立を追求することは、いまや国際的な大きな流れになろうとしており、自分の職場や地域からだけ情勢をみるのではなく、全国的な運動の流れや国際的にも視野を広げ、生まれている変化にしっかり確信を持つことが大切だとのべ、「交流集会を運動発展の大きなバネになるよう熱心な討論を」とよびかけました。

ルールのある社会に

全労連総合労働局長

寺間 誠治さん

 リストラと雇用問題についての問題提起を全労連総合労働局長の寺間誠治氏がおこないました。

 寺間氏は、労働者・国民の状態悪化がすべての層をまきこみながら加速化していることを指摘。財界・大企業の戦略とそれを支える小泉「構造改革」は、“大企業栄えて民滅ぶ”戦略だと批判しました。

 同時に、こうした戦略は、労働者・国民の反撃のエネルギーを蓄積し、労働組合と社会運動の前進の基盤を拡大しているとして、小泉「構造」改革路線の無法な攻撃自体に矛盾と弱点があると指摘しました。

 次いで寺間氏は、この間のたたかいの教訓についてふれ、第一に「職場にルール確立を」のスローガンのもと、たたかいが大きく前進したことをのべました。

 サービス残業(ただ働き)根絶のたたかいでは、日本の労働運動にとって画期的ともいえる成果を勝ち取ったと紹介。その教訓を発展させ、長時間労働・サービス残業を根絶して、雇用を拡大する運動を前進させることを呼びかけました。

 職場でのたたかう組織づくりと労働運動の強化という点では、大企業の大規模なリストラ攻撃にたいし、国会論戦と結んで現行法と判例を駆使した反撃や「企業は社会的責任を果たせ」との職場・地域から共同の運動を発展させてきたこと、職場に「ぐちる会」などの要求実現の運動組織をつくり、労働組合に働きかけ、要求を実現させた経験を強調しました。

 「全員経営参加運動を推進しよう」など労働組合の「変質」ともいえる動きが生まれ、労働組合の存立の原点が問われているとして、職場から労働運動を強化することが求められていると提起しました。

 第二に、リストラ・雇用の問題で地域からのたたかいがおきていることを強調。自治体にも大きな変化が生まれ、自治体として雇用・失業対策の強化、雇用創出などがはかられるようになってきたことを指摘しました。

 第三に、労働法制改悪反対と医療改悪反対でかつてない運動のひろがりがつくられたことを指摘し、国民的共同のたたかいを前進させてきたことを確信にしていく必要があることをのべました。

 寺間氏は、運動の展望として、全労連が賃金引き上げ、雇用確保と結んで、年金改悪と大増税阻止の大規模なストライキを呼びかけていることを紹介。「大企業の社会的責任」を求めることは国際的流れとなっており、国際労働基準の実現を求める運動を提起。小泉「構造改革」のもと、労働者と国民各層の要求が共通のものとなっており、国民的視野をもってたたかうことが大切と強調しました。中央・地方で呼びかけ五団体など国民各層のネットワークを生かして運動の前進をはかろうと呼びかけました。

地域経済守る共同を

日本共産党リストラ反対・雇用を守る闘争本部事務局長

山下 芳生さん

 日本共産党リストラ反対・雇用を守る闘争本部の山下芳生事務局長が、雇用と地域経済について問題提起しました。

 山下氏は、「雇用と地域経済が全国どこでも深刻になっている。その背景には、大企業、財界の経営戦略がある」と指摘。日本の大企業は、地域から撤退し、中国、東南アジアへと生産拠点を移す多国籍企業化と国際的産業再編成の道をすすんでおり、国際的規模での企業や事業部門の合併・業務提携も活発化しているとのべ、「この大企業の戦略は、自らの利益のためには日本の経済を顧みないという亡国の戦略」と批判しました。

 歴代自民党政府がこうした大企業の戦略を支援しつづけ、小泉内閣の「構造改革」路線はこれらの政策をいっそう強引にすすめるものであり、日本経済、地域経済の危機をいよいよ深刻にしていると強調。

 同時に、「地域経済を守り、発展させたい」という願いが切実になり、従来の保守層との共同の可能性が大きく広がっているとのべ、「雇用と地域経済を守るたたかいは、大企業、財界の戦略、政府の政策と対決し、地域住民の暮らしと経営を守る共同を広げ、日本経済の再建をめざすたたかい」と訴えました。

 雇用と地域経済を守る取り組みに新しい発展の芽が生まれているとし、突然の工場閉鎖など大企業のリストラにたいし、社会的責任を求める要求と行動が自治体のなかに広がっていると強調しました。

 少なくない自治体で、雇用を創出し、地域経済を活性化させる努力がはじまり、貴重な実践と成果も生まれているとのべ、どこも公共事業依存や大企業誘致という従来のやり方がゆきづまるなかで、豊かな自然、技術・技能など地域の資源を生かした経済活性化のために模索し、苦労しながら挑戦していると指摘しました。

 こうしたとりくみの土台には、ねばりづよい住民運動があるとのべ、共通する教訓として(1)地域経済の実態をよくつかむことからはじめている(2)行政に対して、参加、提案型の運動を展開している(3)地域のなかで、さまざまな団体がそれぞれの持ち味を生かし、力を合わせている―をあげました。

 雇用と地域経済を守る取り組み、運動を全国的な流れにするために、政府、自治体、企業に対する要求を掲げて運動すること、全国的なネットワークをつくることをよびかけました。

 「雇用と地域経済を守るたたかいは、企業の社会的責任を問い、『ルールなき資本主義』をただし、国の予算の使い方を転換することに通じるたたかいであり、地方政治の新しい希望ある流れを広げるたたかいでもある。大きな展望をもち、日本列島津々浦々で共同して運動を起こそう」とよびかけました。


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