日本共産党

2003年8月30日(土)「しんぶん赤旗」

地震活動期に入った日本列島


 日本列島は地震の活動期に入ったといわれています。政府の地震調査委員会が発表している「長期評価」でも、二十一世紀前半には、多くの地域で大地震が起きる可能性が指摘されています。今年は十四万人以上の犠牲者を出した関東大地震から八十年。大地震への備えを改めて見直す必要性が指摘されています。(前田利夫記者)


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 大地震を引き起こす原動力は地球表面を構成しているプレート運動にあると考えられています。日本列島は四枚のプレートの境界近くに位置しており、そのために世界有数の地震多発国になっています。(図1)

 北海道から東北、関東地方の太平洋岸に沿って太平洋プレートが日本列島の下にもぐり込んでいます。また、東海地方から四国、九州の太平洋岸にかけてはフィリピン海プレートがもぐり込んでいます。

 これらのプレートのもぐり込みにともなって、日本列島が乗っているプレートも引きずり込まれます。プレートの動く速さは年に数センチメートルで、年ごとに地殻のひずみが蓄積されていきます。ひずみの蓄積が上のプレートと下のプレートとが固着している部分を破壊する大きさになったとき、海溝型の大地震が起きると考えられています。

 地殻のひずみは、陸域の活断層にも影響をあたえます。海溝型の大地震が起きる前後には、活断層の活動も活発になります。一連の地震によってひずみが解消されると、地震発生のすくない静穏期に移行します。

M8級各地で

 図2は、最近四百年間の東京での有感地震の数を震度4、5、6について示したもの(防災科学技術研究所の岡田義光・地震調査研究センター長が作成)です。一九二三年の関東大地震、一八九四年の東京地震など、大きな地震の前後に震度5の地震も多く発生しています。一九四〇年から一九八〇年の間は、震度5以上の地震がない、静穏期にあたります。一九八五年と一九九二年に震度5の地震が起こり、新たな活動期に入った証拠と専門家はみています。

 西南日本では、一九四八年の福井地震などの後しばらく静穏期が続いていましたが、一九九五年の兵庫県南部地震が次の活動期の本格的な始まりを告げるものとみられています。

 東北では最近大きな地震が相次いでいます。

 政府の地震調査委員会が発表した海溝型地震と、陸域の活断層の長期評価で、発生確率が高い地震を図3に示しました。

 マグニチュード(M)8以上の巨大地震となる東南海地震、南海地震が三十年以内に発生する確率はそれぞれ50%と40%。五十年以内だと80%以上の高確率になります。

 長期評価には含まれていませんが、東海地震(M8程度)は、いつ起きてもおかしくないといわれています。

 確率がとりわけ高くなっているのが三陸沖から茨城県沖にかけてです。三陸沖北部は、十年以内が60%程度、三十年以内が90%と予測されています。さらに、宮城県沖は三十年以内が99%。三陸沖南部が同じく70−80%となっています。

 北海道の十勝沖、根室沖も高確率です。

予想外の場所も

 陸域の活断層は、地震を起こす活動の間隔が千年から一万年程度と長いため、いつ地震が起きるか正確に予測するのが難しい問題があります。一九九五年に発生し、大きな被害をもたらした兵庫県南部地震(M7・3)は、地震調査委によると、発生直前の確率は0・4−8%だったといいます。

 これにくらべて、糸魚川−静岡構造線、三浦半島断層群などは要注意ということになります。

 七月に起きた宮城県北部地震(M6・2)や、二〇〇〇年十月に起きた鳥取県西部地震(M7・3)では、地震を起こす活断層の存在が事前には知られていませんでした。M7級の地震でも、予想外の場所で起こりうることを示しています。

 長期評価には載っていませんが、南関東地域の直下型地震は「切迫性」が指摘され、この地震によって震度6相当以上になる可能性のある地域として一都六県があげられています。南関東地域のM7前後の直下型地震は、いつどこで発生するかはわからないものの、次の関東地震までに複数個発生すると考えられています。

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被害想定にもとづく対策を

藤井陽一郎 茨城大学名誉教授

 日本列島は新たな地震の活動期に入ってきたのではないかと、多くの地震学者が考えています。

 切迫性が指摘されている首都圏直下型地震をはじめ、今後予想される大地震では、前回の活動期とは異なる条件が存在しています。災害の規模は、地震の破壊力と社会の防災力で決まります。

 首都圏直下型地震にたいしては、それぞれの自治体が被害想定を発表しており、いずれも甚大な被害を予測しています。被害想定は、防災対策の前提となるもので、それ自体は大きな一歩といえます。

 しかし、被害想定はあくまで防災対策を進めるための前提であって、それにもとづいた被害防止策こそが必要です。その点から見ると、家屋をはじめとした各種建造物の耐震性の確保、火災多発にたいする備え、いざという場合の避難場所の確保など、きわめて不十分な状況です。国、自治体、住民が協力して、きたるべき大地震に備えた点検と、それにもとづく被害防止策を急ぐ必要があります。


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