日本共産党

2003年8月23日(土)「しんぶん赤旗」

“片道切符が往復切符に”

ボッシュの転籍やめさせた

「愚痴る会」結成し学習・交流

組合、家族、地域に運動広がる


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 自動車部品製造大手のボッシュ東松山工場(埼玉)の労働者からさまざまな要求が出されました。リストラに労働組合(連合・JAM加盟)が要求をくみ尽くせず、たたかえないなかで、労働者が切実な要求を束ねて立ちあがりました。

弁護士を講師に

 労働組合に対しては、活動の当初から職場小部会を中心に労働者の要求を取り上げ、本来持っている役割を果たすよう働きかけました。

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 「遠隔地配転、玉突き配転、転籍(移籍)、退職強要、復職を考える会」−リストラで生まれている労働者のさまざまな要求を掲げた長い名称の会が昨秋、結成されました。通称「愚痴る会」といい、NTT労働者が組合所属の違いを超えてNTTリストラを考えようとした「ぐちる会」運動に学んだものでした。

 「愚痴る会」は、自由法曹団の弁護士を講師にのべ十回近くの学習・交流会を開き、「愚痴り合いました」(労働者)。

 参加者は、労働者以外にも広がりました。一人息子が秋田に行かされたという母親が「もう辞めたいといいだしている」と訴えたり、「出向していたら、転籍をしなくてもすむのか」という質問も次々と出されました。

 山崎徹弁護士が、賃下げを伴う転籍は労働者本人が同意しなければできないことや、玉突き配転は業務上の必要性がないことの証明であり、会社側に道理がないことをていねいに明らかにしました。

 「愚痴る会」は学習・交流会を重ね、昨年暮れに家族も加わる「ボッシュリストラを考える家族の会」へと発展します。

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緑に囲まれたボッシュ東松山工場=埼玉県東松山市

なんとかしたい

 学習・交流会で学んだことをビラにして労働者に何度も配布しました。リストラの意味や対応方法などが職場の労働者の心に届いていきました。「なんとかしたい」という声が職場から日増しに広がり、「転籍承諾署名はしない」ことで労働者が団結してきました。部分的ながら、切実な要求を実現する活動がリストラに反対するたたかいの原動力になりました。

 こうした変化が生まれるなかで、労働組合も動き出しました。

 地域でも、「リストラ反対、地域経済を守れ」と運動が広がりました。比企労連(全労連・埼労連加盟)や東松山民主商工会などの団体や個人が加わって、「ボッシュ問題と東松山の地域経済を考える会」が結成され、今年四月には坂本祐之輔市長に要請しました。

 ボッシュは一昨年十二月、四十八億五千万円の経常赤字(連結決算)でしたが一転、V字回復し〇二年十二月は九十三億八千万円の経常黒字に。〇三年十二月には黒字は百二十億円に増えると予測されています。

 職場での労働者の団結と地域の運動とも結びついてボッシュを追い詰めていきました。

 ボッシュは(1)転籍対象者の五百人を三百人とし、労働条件・賃金については、退職時に積み増し、六十歳までの生涯賃金の格差をほぼ解消する(2)ユニシアへの転籍は変わらないものの、もしユニシアが倒産した場合、ボッシュが引き取り、職を確保する(3)秋田への転籍はない。ボッシュ籍で出向し、期限を三年とする(4)滑川工場の労働者は転籍だが、定年まで働ける(5)“玉突き配転”も中止する−と当初の計画を大きく手直しし、労働者の要求が実現しました。

 秋田へ出向している労働者は「片道切符が往復切符になった。三年で埼玉に帰れる」と大喜び。一方で、期限付きの出向となっても家庭の事情から、退職せざるをえない労働者も出ました。

 ユニシアに転籍した労働者も「転籍による賃金切り下げも解消させた」「工場閉鎖のときはボッシュが雇い入れることになり、雇用不安が解消された」と喜んでいます。

9月3−4日に全国交流集会

 「リストラ反対、雇用と地域経済を守る全国交流集会」(九月三−四日、静岡県熱海市のニューフジヤホテル)は、こうした全国各地で広がる草の根のたたかいを交流し、雇用と地域経済を守る新しい運動の発展方向を話し合う場として注目を集めています。


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