日本共産党

2003年7月16日(水)「しんぶん赤旗」

どうみる東証株価の急回復

低迷する実体経済は置き去り


グラフ

 東京株式市場の株価が急回復をつづけ、東京証券取引所がある東京・兜町かいわいは熱気に沸いています。しかし、取引時間中に日経平均株価が一時一万円をつけた(八日)ものの、その後は一進一退をつづけています。実体経済を置き去りにしたままの「根拠なき株高」(市場関係者)との指摘もあり、先行きには慎重な見方が広がってきました。

 日経平均株価は、今年四月二十八日にバブル後最安値を更新して七六〇〇円割れ寸前まで下落。その安値から、わずか二カ月半で約三割の上昇となるなど急ピッチの値動きをみせています。東証一部の全銘柄の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)も25%前後の上昇率です。

 市場関係者の間で、急上昇の要因として、(1)米国景気に「持ち直しの兆し」がでて米国株価が上昇していること(2)日本でも六月の日銀短観で大企業・製造業の景況感が改善したこと−などがあげられています。しかし、実際には米経済にしても、六月の米失業率が6・4%にハネ上がるなど雇用情勢の一段の悪化が懸念されており、先行き不透明感が強まっているというのが実態です。

 日銀短観の結果にしても、大企業・製造業の景気判断の指数は改善したものの、三カ月後の予想ではさらなる改善を見込めない状況です。それに、大企業・非製造業は目立った改善はなくほぼ現状維持。日本の実体経済を支える中小企業は依然きびしい状況のままです。

 実体経済に「明るさ」など期待できる状況にないというのが現状で、「慎重論」が根強いのもうなずけます。企業経営者から、「消費や失業率、設備投資といった経済指標が好転しなければ株価上昇は続かない」(日刊工業新聞九日付)と指摘されるのも当然です。

 今回の株価上昇の動きをけん引してきたのは、米国系などのヘッジファンド(国際的投機集団)、投資銀行を中心とした「外国人投資家」と証券会社(自己売買部門)。それに株高の流れに乗ってインターネット取引などで売買を繰り返している個人投資家です。

 「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に明るい要素が少ない」(市場関係者)なかでの過熱相場だけに、先行き警戒感が強まっています。 (三浦照夫記者)


「改革の成果」などでない

経済評論家 奥村宏さんに聞く

 東京株式市場の株高についてどうみるのか。経済評論家の奥村宏さんにききました。

 ◇

 日本の最近の株高の要因は、アメリカの株が戻していることと、下げ過ぎの反動という二つです。塩川正十郎財務相がいっているように、企業の業績が上がったからでも、「構造改革の成果」でもありません。小泉内閣の「構造改革」で日本の経済が立ち直っていくなどとは、だれも思っていません。

 では、日経平均で一万円を切ってきた日本の株価が安すぎたのか。株価収益率は十五倍ぐらいが妥当だといわれていますが、いまは二十倍ぐらいで、安すぎるとはいえません。

 アメリカの株価の戻りも、企業業績が良くなっているからではありません。イラク戦争への不安感やエンロンなど会計不正事件による会社不信で売り込まれていた反動です。石油もそれほど上がらなかったですからね。まあ、小康状態というところです。

 日本の株価は外国人投資家が先導していますが、逃げていたのが戻ってきたということ。大口のファンドは、国際的に分散していますからね。日本株が売り込まれすぎたから、少し買い戻しておこうという反動。あくまで技術的なものです。

 株高、債券安となっています。もともと日本の国債に対する不信がありましたが、株安のもとで、銀行などは余ったカネで国債を買っていました。だから、国債は暴落しないですんできましたが、株高に向かえば、今後どうなっていくのか。

 実体経済は、良くなっていないだけに、きわめて危うい状況が続いています。株価は上がったといっても、みんな、おっかなびっくりですよ。

 阪神ファンの竹中平蔵金融・経済財政担当相や福井俊彦日銀総裁は、阪神が優勝すれば株が上がって景気が良くなるかのようなことを言いますが、せいぜいこれは阪神(半信)相場にすぎません。経済運営を担う者としては、真剣に実体経済を良くすることを考えてほしいものです。


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