日本共産党

2003年7月13日(日)「しんぶん赤旗」

阪神タイガース

“猛虎復活”の原動力は


 十八年ぶりの優勝に向けて快調に走るプロ野球の阪神タイガース。圧倒的な強さで二位以下を大きく引き離し、八日にはセ・リーグ最速となるマジック(別項)49を点灯させ、連日その数を減らしています。その快進撃ぶりは、多くのファンをひきつけ、地元の商店街などを活気づけています。すでに社会現象になっている“猛虎復活”。躍進の原動力は――。 (プロ野球取材班)

驚異のチーム打率

3割をこえ12球団トップ

写真
選手と一体になって応援する阪神ファン=11日、甲子園球場

 「どんな投手でも今年はガンガン打つで!」。得意げなファンの声がきこえてきます。十一日の巨人戦。18安打14得点の猛攻に、甲子園は地鳴りのような応援がつづき、六甲おろしが響きわたりました。

 今年の最大の特徴は、その活発な打線です。チーム打率は三割をこえ、十二球団トップ。

 過去のプロ野球記録を上回る勢いです。一試合の平均得点は5・9点。昨年より二点以上増え、リーグの打撃成績上位には今岡、矢野、赤星の三選手が名を連ねています。

 打って走って、どこからでも好機がひろがり、点が入る。一番から投手までつながり、たたみかける迫力ある打線はファンを魅了しています。

 「打席での集中力がちがう」。現在、セ・リーグ首位打者の今岡選手は変化をそう口にします。甘い球を逃さない、ミスをおそれない、最後まであきらめない、全員が同じ意識をもつことでチーム力が向上しています。

 選手たちに自信をもたせるうえで、コーチの役割も大きい。

 和田豊打撃コーチは、リーグ最多の併殺打を記録している赤星選手を、「併殺はほめられないが打球は鋭い。(打撃)内容はいい」と評価しています。結果だけにこだわらず、成長ぶりを認めるコーチの存在は、選手の思いきったプレーにつながっています。

自主的なプレー

自分で判断し活路切り開く

 五日のヤクルト戦。今岡選手が三回二死満塁で意表をつくプッシュバントを決行。見事に成功し、勝ち越し点をあげました。「苦手な坂元投手が出てきたので、ファウルになってもいいから一回やってみようと。内野手がかなり下がっていましたから」。星野監督も感心したプレーでした。

 選手が自分で判断し、活路を切り開く―。今年の阪神は選手の自主的なプレーがみられます。

 二番の赤星選手と三番金本選手との、見えない連係プレーも光ります。現在、盗塁王の赤星の足を生かすために、後を打つ金本は打席で状況を判断し、走るチャンスをつくっています。試合前には、二人で相手投手のくせや走るタイミングを確認しあうそうです。

 ベテランの八木選手はいいます。「昨年はみんな自分の持っている力以上のことをしようとしていた。でも今季は自分の持っている力を百パーセント出し切ろうとしている」。優勝を目指して全員がまとまり、選手自身の自発的なプレーが表れているところに、チームの自信が感じられます。

けが防止、全体で

昨年の教訓生きている

 巨人やヤクルトなどに故障者が相次いだのとは対照的に、今年の阪神はけが人が少ない。

 じつは昨年の教訓が生きています。昨季の阪神は、好スタートを切りながら六月に失速。大きな原因に、片岡、矢野といった主力選手にけがが続いたことがありました。

 今季は、けがの防止にチーム全体でとりくんでいます。昨年前半は一度もなかった休みを週一回保障し、大差がついた試合ではベテラン選手らを休ませています。

 また専門的な知識をもつ前田健トレーニングコーチが加入し、選手一人ひとりの状態をよく把握して助言しています。試合前のストレッチも徹底。投手は登板後に、前田コーチの指導で肩やひじのけがを防ぐPNF(神経筋促通手技法)を行います。

 昨年は右肩を痛め今季から中継ぎに回った安藤投手は、「翌日に疲れが残らなくなった。毎日肩をつくる経験は初めてですから効果的です」といいます。


 マジックとは 優勝するためにあと必要な勝利数を表す数字。他チームに自力優勝の可能性がなくなった時点で出されます。

阪神のチーム成績(11日現在)
勝敗56勝22敗1分
(7割1分8厘)(1)
打率3割1厘 (1)
防御率3.46 (1)
盗塁数76個 (1)
本塁打数82本 (4)
(かっこ数字はリーグ順位)

日本野球救ってくれた

 日米の野球に詳しい作家のロバート・ホワイティングさん 予想をはるかに超える阪神の躍進ぶり。私もうれしい。それはなぜか。

 今季、日本のプロ野球は一つの岐路に立っていました。野茂英雄、イチローらに続き、「日本の四番打者」松井秀喜が大リーグでプレーすることで、日本の野球人気がしぼんでしまう。「どうしよう」との雰囲気がありました。しかし阪神がそれを救ってくれた。人々にふたたび野球に目を向けさせてくれた。

 大事なことは、阪神が勝っているという事実だけでなく、選手がいつも懸命に、勝負をあきらめず、ベストを尽くしているという、その姿です。

 日本はいま長い不景気のなか、元気を失いかけている。その中で阪神が、このスポーツの素晴らしさをもって、人々に喜び、感銘を与えている。それが、私は本当にうれしいのです。

暗い世相の中、希望の星

 尼崎中央商店街の吉岡健一郎理事長 いままでは息切れしてきたけど、六月の成績を見て、これはほんまものだと。よう打つし、試合を見ていても楽しい。マジックも出て、日を追って関連セールが増えてます。

 周りの雰囲気もいい。なんといっても、十八年ぶりの大きな夢の実現ですから。震災や長引く不況のなかで私らも大変やけど、そんななかで阪神の活躍は希望の星になっています。みんな前向きな話題で一緒に盛り上がれる。お客さん同士の格好のコミュニケーションにもなってますね。

 最近では西宮、神戸、姫路などの商店街とも、「次は何やるん?」といった横の交流もでてきました。暗い世相のなかで明るい話題を提供してくれてありがたいですね。


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