日本共産党

2003年6月26日(木)「しんぶん赤旗」

10月実施のディーゼル車排ガス規制

買い替えか、減車か、廃業か


 「買い替えか、減車かそれとも廃業か…」。十月から実施されるディーゼル車の排ガス規制を前に、不況に苦しむ中小・零細ユーザーは苦境に立たされています。一方、トラックメーカー各社は「買い替え特需」に沸き、急きょ増産体制をとっています。

中小ユーザー

規制実現は共通の願い

 初年度登録から7年たったディーゼル車は、この10月1日から東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県で走行できなくなります。ディーゼル車の耐用年数は一般に15年、走行距離100万キロメートルです。耐用年数を大幅に残した車が使用できなくなると中小・零細業者が頭を抱えています。このままいけば資金難の業者が本拠地を規制対象外に移したようにみせかけて対策をくぐり抜けるなど、規制の実効性が骨抜きにされるのではと懸念の声があがっています。

 実効ある対策を実現させようと、東京大気汚染公害裁判原告団・弁護団と、ディーゼル車を所有する業者、労働者が「ディーゼル車対策共闘会議」を結成して活動しています。同共闘会議は、シンポジウムも開いて、公害に苦しむ人たち、不況の中で営業に苦しむ人たちが、それぞれの立場から、窒素酸化物(NOx)と粒子状物質(PM)両方を低減する後処理装置を開発するなど、メーカーの責任ある対応を求める点で一致しました。また、国などと交渉しディーゼル車対策と業者の営業が両立できる措置を求めています。

 「青い空を取り戻したい」。ディーゼル車から排出されるNOxとPMによる深刻な大気汚染をなくすことは共通の願いです。

写真

東京都内で開かれたディーゼル車対策共闘会議のシンポジウム=10日

借金の悪循環

 廣利運輸の廣田利男社長(65)=東京・文京区=は、経営状況を赤裸々に訴え「今が思案のしどころだ」といいます。

 トラック三十一台を所有し発送、引っ越し業を全国展開しています。今年、東京都の走行規制の対象になる車は十八台、うち対策を講じきれない車が十一台残っています。

 バブル当時三億円あった売り上げは約半分。運転資金など借金の返済が月々四百万円近くあります。

 「減車したくても売り上げが減るし、借金の返済も滞る悪循環だ。不況と排ガス対策は自分が頑張ればどうにかなるような話ではない」と訴えます。

自社ビル売却

 「苦しい絶頂」というのは都内のバス・旅行業社社長(73)。観光バスなど十五台のうち五台が走行規制の対象です。

 PM除去装置DPF(百二十万円程度)五台分で六百万円必要です。都などの助成はメーカーへの支払い後に振り込まれます。「とても工面ができない」と会社と自宅兼用のビルを売却する決意です。

 「メーカーはただ車を売りっぱなしだ。問いただすと『国が決めたこと』と逃げる。四千万円もする観光バスを簡単に買い替えることはできない」と憤ります。

メーカーは特需

 国の「低公害車普及促進対策補助金」は二〇〇三年度予算で、PM除去装置に四十億円を組んでいましたが、補助枠を超える五十九億円の申請があり十一日に受け付けを打ち切りました。

 東京都の本年度の補助枠は二万八千二百台分、五十九億円です。現在までに一万六千二百台分の申請がありました。しかし都内の対象台数は二十万二千台です。

 こうした業者の苦境をよそに、トラックメーカー各社とも前年比150%増の「規制特需」「買い替え特需」に沸いています。

 いすゞ自動車は、川崎工場の大型トラック組み立てラインを藤沢工場へ移転する計画を先延ばしに。二交代制を再開して残業、休日出勤でしのぐとしています。三菱ふそうも前年同月比140%を超える拡大で、生産効率を上げるラインの改良などを行っています。日野自動車では、期間従業員を二百人増やしました。

装置開発、助成継続を

 同共闘会議は、メーカーに対して、国のNOxとPM両方を低減する後処理装置の開発を、国と自治体には、助成措置の継続を強く求めています。東京都などのPM規制をクリアしても国のNOx・PM規制を次の車検時にクリアすることにはならないからです。

 国の規制をクリアするには今のところ新車の代替しかありません。中小・零細業者にとって新車への買い替えは過酷です。支援体制の強化が求められています。

ディーゼル車排ガス規制の概要
(環境省、国交省、東京都の手引きから)
 自動車NO X・PM法車種規制首都圏1都3県の運行規制
規制地域東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、三重県、大阪府、兵庫県の対策地域東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の全域
規制車種トラック、バス、ディーゼル乗用車トラック、バス
規制物質窒素酸化物(NOX)、粒子状物質(PM)PMのみ
規制内容
(使用過程車)
猶予期間後に車検が通らなくなる猶予期間後に走行できなくなる(規制地域内を走行する全国のトラック・バスが対象)
猶予期間初年度登録から
小型貨物車8年
ディーゼル乗用車9年
普通貨物車9年
マイクロバス10年
大型バス12年
初年度登録から7年
対策新車代替(現在まで、NO XとPM両方を低減する後処理装置がないため)各都県が指定するPM減少装置を取り付ける

国と自治体の規制

 ディーゼル車の排ガス規制には、国のNOx・PM法による「車種規制」と東京都など一都三県の条例に基づく「運行規制」があります。(別表)

 国の「車種規制」は一定の猶予期間をすぎると車検が交付されなくなります。現在まで、NOxとPMの両方を低減する後処理装置が開発されていないため、新車への買い替えを余儀なくされています。

 東京都などの「運行規制」は、初年度(新車)登録から七年をすぎた車は、PMの低減装置をつけないと運行できなくなります。一都三県に乗り入れる全国の車が対象です。

 都などのPM低減装置を付けても、国のNOxやPMの規制値をクリアすることにはならないため中小・零細業者は苦境に立たされています。



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