日本共産党

2003年6月15日(日)「しんぶん赤旗」

列島だより

旧日本軍毒ガス遺棄 調査と対策急げ

土壌は? 地下水は?

地元と国会が連携
共産党 各地で活動



 茨城・神栖町
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被害住民の一人、萩原勇次さん(左)と話す関口町議=神栖町

 「ろれつが回らない。立っていられない」「めまいがする。ふるえてものがつかめない」−−。茨城県神栖町木崎地区の井戸水を利用し、有機ヒ素化合物による健康被害を受けた住民らの訴えです。この化合物は旧日本軍の毒ガスに由来するとものとみられています。

 日本共産党は地元の関口正司町議、県議団、国会議員団と連携して、現地調査し、被害者住民の救済に奮闘しています。

 「知事や関係機関が調査にきても、だれ一人として被害住民に声をかけなかった」と行政の冷たさを指摘する関口町議は、四月二十一日に町長あてに原因の究明、上水道加入工事費の補助、井戸水の水質検査、健康診断の無料受診などを申し入れました。これを受けるかたちで町も五月になって同様の要望書を県に提出しました。

 関口町議は住民説明会に積極的に参加するなかで、被害を受けた住民と知り合いになり、五月二日には日本共産党国会議員団、県議団が現地調査を実施。被害住民の症状や切実な要求に耳を傾けました。

 被害住民の一人、小沢栄子さん(39)は「共産党が国会でとりあげてくれて本当に助かりました」と話します。関口町議はその後も被害住民のもとに、こまめに足を運び、行政の情報や日本共産党国会議員の議事録などを届け、激励してきました。被害住民は「ヒ素汚染による健康被害者の会」を結成し、医療費負担や生活補償などを環境省に要求。こうしたなか、今月四日には、医療費支給などの緊急措置が環境省から発表されました。

 萩原勇次さん(52)、孝子さん(50)夫妻は「最初はだれも声をかけてくれませんでした。顔もみたこともないし、話したこともないのに、関口さんはよく動き、よくめんどうをみてくれました。心強さを感じました。“捨てる神あれば、拾う神あり”ですよ」と声をそろえます。

 関口町議は「戦後五十八年も経つというのに、戦争の遺物で被害を受ける人がいたとは。環境省の緊急措置は不十分。被害住民の救済に全力をつくしていきたい。もちろん六月議会でとりあげます」と話しています。

 (茨城県 栗田定一記者)



 神奈川・寒川町、平塚市

 神奈川県では、昨年九月に寒川町のさがみ縦貫道路工事現場、ことし四月に平塚市の平塚第二地方合同庁舎建設現場で、旧日本軍のものとみられる毒ガス事故が相次いで発生。作業員が発疹(ほっしん)や頭痛などの症状を起こしました。

 その後の調査で、寒川の現場から発見されたビールびんや土壌から、びらん性の毒ガス・マスタードやルイサイト、くしゃみ剤を検出。平塚では、土壌から微量のマスタードやヒ素が検出され、現在もボーリング調査や汚染土壌対策などが続けられています。

 寒川、平塚の各現場ともに、旧日本軍の相模海軍工廠(しょう)とその関連施設跡地です。一九七二年の政府調査資料では、終戦時に大量のマスタード、ルイサイト、ジフェニールシアンアルシン(くしゃみ剤)が保管されていましたが、「危険予測材料なし」とされていました。

 付近の住民から、「国は毒ガスの危険性は十分に分かっていたはず」「神栖町の事件のように、井戸水が不安。地下水の調査もきちんとやってほしい」などの声が党議員団に寄せられました。

 日本共産党は、大森猛衆院議員、畑野君枝参院議員が現地調査。寒川、平塚の党議員団、県議団と連携して、跡地全体の徹底調査や責任ある窓口の設置、情報公開を求め、各自治体や国土交通省に申し入れをおこないました。また、被災した労働者に対する国の補償も要求しています。

 (南関東総局 佐藤研二記者)



 栃木・益子町
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益子小で現地を視察する塩川衆院議員(左から3人目)=益子町

 栃木県益子町では、小学校の校庭に旧日本軍が、びらん性の毒ガスのイペリットガスをびんに五百から千c入れ、埋めたとされる問題が表面化、町民から「一刻も早く科学的な調査を行い、不安を取り除いてほしい」との声が広がり、環境省は十三日、現地に入り、「毒ガスが埋められている可能性は低い」との見解を示しました。

 問題が表面化するきっかけになったのが日本共産党国会議員の調査活動でした。

 神奈川県寒川町、茨城県神栖町に毒ガス遺棄によるものとみられる健康被害の続発を受けて、関係省庁から入手した「旧軍毒ガス等の全国調査」で、不明のまま放置されていることがわかりました。

 日本共産党は、塩川鉄也衆院議員らによる現地調査、国・県への徹底調査、要請など、問題解決に尽力。飯島秋子町議は六月議会で「国・県に一刻も早く調査させ、住民の不安を取り除くべきだ」と主張しました。

 環境省の現地入りはこうした党の活動や町当局の再三の要請にこたえたものですが、大岩正作町議は「対応も遅く、土壌汚染の調査もしていない。まだ不安が残る」と語っています。同町に住む飯島伊三郎さん(67)も「子どもたちが毎日、遊ぶ場。あいまいにしないでほしい」と話しています。

 (栃木県 団原敬記者)


統一した補償措置必要

日本共産党衆院議員 塩川鉄也

終戦時に毒ガス等が保有
されていたとされる場所
    保有部隊等  場 所
海軍航空廠千歳工場北海道千歳
大湊警備府管下青森県大湊
陸軍技術研究所米沢分室山形県米沢市
陸軍習志野学校千葉県習志野市
陸軍技術研究所東京都新宿区
海軍航空廠瀬谷工場神奈川県横浜市
相模海軍工廠神奈川県寒川
相模海軍工廠科学実験部神奈川県平塚市
陸軍技術研究所吉浜出張所神奈川県吉積
陸軍技術研究所三方原出張所静岡県引佐郡
三方原陸軍教導飛行団静岡県引佐郡
陸軍技術研究所高岡出張所富山県高岡市
陸軍造兵廠忠海製造所広島県竹原市
海軍航空廠切串工場広島県江田島
陸軍兵器補給廠大嶺常駐班山口県大嶺
陸軍造兵廠曽根製造所福岡県北九州市
海軍航空廠大分工場大分県大分市
海軍航空廠博多工場福岡県志賀島
(政府の全国調査=73年=から)

 この半年ほどの間に、旧日本軍由来のものとされる毒ガスの発見、被害が神奈川県寒川町及び平塚市、茨城県神栖町と相次ぎました。

 寒川・平塚では工事現場から不審ビンが発見されて作業員が被害を受け、神栖町では毒ガスの可能性が極めて高い有機ヒ素による健康被害が深刻となっています。これらは、政府が一九七三年にまとめた「旧軍毒ガス弾等の全国調査」では処理済または未記載となっているものであり、当時の調査が不十分だったことを示しています。

 この調査記録には栃木県益子町の小学校校庭に埋設されている毒ガスが未処理だとされていましたが、実際には元士官の証言のあった当時に、二度も発掘作業を行い、でてこなかったという経緯も明らかとなり、このようないきさつも記載されていない政府の調査報告のずさんさがうきぼりとなっています。

 この間、国会議員団では、小沢和秋、赤嶺政賢両衆議院議員の質問趣意書や大森猛衆院議員の国会質問で毒ガスの再調査を繰り返し要求し、政府として七三年の調査のフォローアップを決めました。また大森議員と藤木洋子衆院議員、私の三人が神栖町の現地調査を行い、被害者の方から直接お話も聞いて、それぞれ国会で徹底調査と被害者への補償措置を要求してきました。

 環境省は四日、神栖町の被害者への医療費支援を中心とした救済措置を発表したことは前進ですが、旧軍の毒ガスとの関連もはっきりさせず、被害者の切実な要望である生活保障は含まれていません。

 今後の課題として、毒ガス被害者への統一した補償措置が求められるとともに、旧軍関係者への聞き取りなど徹底した全国調査をおこなうべきです。


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