日本共産党

2003年5月26日(月)「しんぶん赤旗」

献金あっせん復活

日本経団連「カネも出すが口も出す」

消費税率大幅アップ、法人税引き下げへ


 日本経団連は、企業・団体献金の「促進」方針を決め、一九九三年にとりやめた「あっせん方式」を事実上、復活させました。腐敗事件の絶えない自民党政治に財界が資金の手助けをし、影響力強化に乗り出した形です。(古荘智子記者)

政党を「評価」

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1月に発表した日本経団連「新ビジョン」に沿って講演する奥田碩会長=1月20日

 十二日に決めた企業献金あっせん復活の方針は、今年一月に発表した経団連の新ビジョン「活力と魅力溢れる日本をめざして」に基づくものです。経団連内につくる「政経行動委員会」(仮称)で「優先政策事項」を設定し、新ビジョンで掲げた消費税率の大幅アップや法人税引き下げなど財界が要求する政策に基づいて政党を「評価」します。

 「優先政策」を取り入れた政党には献金するよう、会員企業に「自主的に判断し実践するよう呼びかける」といいながら、寄付総額の目標や企業ごとの献金額の目安も決めるとしています。

 これでは、企業の資本金や利益に基づいて金額を割り当て、献金を募る従来の「あっせん方式」と変わりません。奥田碩会長も「あっせんかそうでないかはクリアカット(区別)できない」と会見でのべています。

 奥田氏はムネオ疑惑が噴出していた就任時のインタビュー(二〇〇二年五月)で「企業も個人の一部と考えると(政治献金を)出してもよい」「カネも出すが、口も出す」とのべ、財界の影響力を増す考えを表明していました。その言葉通り企業・団体献金の強化への道を進もうとしています。

影響力を拡大

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 旧経団連のあっせん方式は、一九五四年の造船疑獄で政財官界が汚職に染まったことに危機感を持った財界側が「自由経済体制を堅持する保険料」と位置付けて始めたものです。ゼネコン汚職や金丸脱税事件が噴出した九三年に世論の批判を浴びて中止するまで、年間百億円以上の企業・団体献金を保守政党に供給し、政治を大企業本位にゆがめてきました。

 現在はパーティー券など形を変えた献金を除くと二十―三十億円程度に減少したといいます。奥田会長は十二日、「政治資金規正法(の上限枠)をフルに各社が実行すれば八百億円ぐらいの金額になるが、現在はだいたい二十億から三十億ぐらいだ」と不満を表明。「金額自体を増やしたいのか」の問いに「そういうことだ」と答えました。

 企業献金の金額増だけでなく、質的な拡充を図るねらいも重大です。

 九三年にあっせんをとりやめたときの経団連の見解では、企業献金について「一定期間の後、廃止を含めて見直すべきである」としていました。しかしその後、「廃止を含めた見直し」は進まず、日本共産党以外の全政党が企業献金を受け取る一方で政党助成金に大きく依存してきました。

 こうした現状に対し、奥田会長は「公的助成への依存度を高めている政党が多いが、企業寄付を含む民間の自発的な寄付の意義を再認識すべきだ」とのべ、企業献金の割合を強める意図を説明しました。「政治への影響力を強めたいという意識もあるのか」との問いに「当然そういうことも考えられないことはない」と答えています。

 経済団体は株価対策や税制改革などを政府・与党に要請したり、発言しています。奥田氏の発言は、財界の要求する政策を、カネの力で実現させようとするものです。

時代逆行の方針

 今年二月、熊谷組の自民党への献金をめぐり福井地裁で判決が出されました。このなかで、企業献金について「政党の政策が会社あるいは産業団体からの政治資金の寄附によって左右されるとすれば…選挙制度の意義を否定し、その根幹をも揺るがす」と指摘。献金は「謙抑的でなければなら」ないとの判断を下しています。

 奥田氏の構想はこうした企業・団体献金の規制・禁止の流れに逆行するだけでなく、九三年の旧経団連の認識よりも後退したものです。

 ムネオ疑惑や大島理森前農水相の公共事業口利き疑惑、自民党長崎県連の違法献金事件、坂井隆憲衆院議員の巨額ヤミ献金など企業・団体献金にからむ事件が後を絶ちません。わいろ性を持つ企業・団体献金が政治をゆがめてきた教訓に照らせば、今回の日本経団連の方針は時代逆行といわざるをえません。


政策実現へ戦略的に利用

北九州市立大学法学部 上脇 博之教授の話

 今回の日本経団連の方針により、政党の評価に応じた企業献金が行われることになりますが、総額は今より増えます。結果として日本経団連の政治的発言力を強め、経団連が推進する政策が政党―国会で実現することになります。つまり、個々の企業の政治献金が経団連の発言力を強化し、経団連の政策が国家の政策となるという策略です。

 財界は、経済においては弱肉強食の奨励や自己決定・自己責任の強調によって社会的弱者に対する政府の責任を放棄・軽減する新自由主義、政治においては保守二大政党制で議会制民主主義を形がい化させ、首相のリーダーシップを強化し、アメリカの戦争に協力する新保守主義の実現をめざしています。

 このような方向で政策を考え、実行しようという政党だけが日本経団連に高く評価されることになり、多額の企業献金も集まることになります。

 この日本経団連の立場は、企業献金について「廃止を含めて見直す」という九三年の方針をほごにするものです。衆院の選挙制度も小選挙区本位にし、憲法「改正」容認政党の過剰代表と、憲法「改正」反対政党の過少代表が実現し、政党助成も導入されたので、今度は企業献金を戦略的に利用しようとしています。

 また、九四年の政治資金規正法改正の付則第一〇条は企業・団体献金の五年後の「見直し」を規定し、それは「全面禁止」を意味すると期待されていましたが、この国会公約にも反します。

 本来なら、企業・団体献金の「見直し」が一切行われないという違法状態を追及すべきであるにもかかわらず、逆に違法状態に乗じて経団連が個々の企業の政治献金を通じ自己の政治的発言力を強化しようというのは、企業献金を受け取る政党を財界政党にし、それと共謀して、新自由主義と新保守主義の悪政を推進するものです。


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