日本共産党

2003年5月14日(水)「しんぶん赤旗」

有事法案 民主、与党と「修正」合意

海外武力行使に道/米の先制攻撃に参戦

危険な本質 何ら変えず

衆院委できょう採決


 小泉純一郎首相と民主党の菅直人代表は十三日夜、党首会談を開き、有事法案の「修正」について、「基本的人権の尊重」を法案に明記することなど八項目で合意しました。与党三党と民主党との「修正」合意を受けて、衆院有事法制特別委員会は同日夜の理事会で、十四日に締めくくり総括質疑、採決を行うことを日本共産党と社民党の反対を押し切って決めました。与党側は十五日の本会議で衆院通過をはかる構えです。

 この日、民主党との「修正」協議をてこに採決強行を狙う与党に対し、労組や市民団体、女性グループなどが有事法案の廃案をめざして、終日、国会要請行動。日本共産党は特別委員会で、児玉健次議員が有事法案の危険な中身を厳しく追及しました。

 「修正」協議は、同日夕、与党三党と民主党の幹事長が国会内で会談し、民主党が求めていた「緊急事態対処基本法」の制定は「四党間で真摯(しんし)に検討し、速やかに必要な措置をとる」とすることで合意。「危機管理庁」の創設の検討については法案付則で対応することとしました。

 同日夜、小泉純一郎首相は、神崎武法公明党代表、熊谷弘保守新党党首と会談した上で、菅直人民主党代表との最終会談で、合意文書を取り交わしました。

 日本共産党は、児玉健次国対委員長代理が、野党四党国対委員長会談で、「修正」では有事法案の危険な本質は何ら変わらないと指摘し、十四日の採決に強く反対。特別委理事会でも、木島日出夫議員が徹底審議を要求しました。

市田書記局長が厳しく批判

写真

記者会見する市田忠義書記局長=13日、国会内

 日本共産党の市田忠義書記局長は十三日夜、国会内で記者会見し、小泉純一郎首相と菅直人民主党代表との会談で有事三法案の「修正」合意が行われ、十四日の衆院有事法制特別委員会で採決するとしたことについて、「合意した『修正』をみると、この法案の中心的な骨格、危険な本質を何ら変えるものになっていない」と厳しく批判しました。

 市田氏は、この間の国会審議で有事法案の危険な本質について、(1)海外での武力行使に公然と道を開くものであること(2)イラク戦争のような国連憲章違反のアメリカの先制攻撃の戦争に、日本が武力行使をもって参戦し、国民を罰則付きで強制的に協力させる法案−という二つが明らかになったと指摘。「与党と民主党間の『修正』合意の内容で二つの危険な本質は何ら変わるものではない」と強調しました。

 さらに、民主党が「基本的人権の尊重」の文言明記を「大きな前進だ」としていることについて、「もともと有事法案というのは、あらゆる分野で国民の自由と権利を制限し、強制的に無法な戦争に罰則つきで駆り立てる法案だ。『基本的人権の尊重』がうたわれたからといって、危険な法案の内容が変わることがないことも明らかだ」とのべました。

 市田氏はまた、四野党国対委員長会談で、法案に対する態度の違いはあっても徹底審議、公聴会開催を合意していたこと、民主党以外の三野党は「修正」案を一度もみていないことをあげ、「慎重審議というなら十四日の採決はありえない。徹底した審議を求める。もし強行するなら内容のうえでも、手続きのうえでも、与党、民主党も国民の厳しい批判をまぬがれないだろう」とのべ、徹底審議で廃案をめざして全力をあげる決意を表明しました。


与党3党と民主党の有事法案「修正」合意

 十三日、与党三党と民主党が合意した有事法案の「修正」内容は次の通りです。

 覚書

 自由民主党・公明党・保守新党の三党と民主党は左記の点について合意した。

 一、緊急事態にかかる基本的な法制については、四党間で真摯(しんし)に検討し、その結果に基づき、速やかに必要な措置をとる。

 二、武力攻撃事態対処法第三条第四項に関し民主党が修正するよう求めている事項については、「国民保護法制」で措置する。

 平成十五年五月十三日

 自由民主党幹事長 山崎拓

 公明党幹事長 冬柴鉄三

 保守新党幹事長 二階俊博

 民主党幹事長 岡田克也

 1「緊急事態における基本法」について

 (1)与党及び民主党で「緊急事態にかかる基本的な法制について政党間で真摯に検討し、その結果に基づき速やかに必要な措置をとること」を合意する。

 (2)民主党案で示された「危機管理庁」については、武力攻撃事態対処法附則において、別紙(1)のとおり規定する。

 (3)武力攻撃事態対処法第3条第4項を別紙(2)のとおり修正するとともに、「民主党修正案が掲げる事項については、国民保護法制において措置すること」を合意する。

 (1)及び(3)の合意文は「別紙」のとおりとする。

 2「武力攻撃事態対処法案」の修正について

 (1)「武力攻撃事態および武力攻撃予測事態の認定」

 「認定の前提となった事実」の文言を追加するとともに、その文言の内容について、政府答弁等で明らかにする。

 (2)「国会承認・民主的あり方」

 国会の議決により対処措置を終了させる手続を追加する。

 (3)「国民への情報提供」

 政府による適時適切な国民への情報提供にかかる規定を基本理念に追加する。

 (4)「指定公共機関の定義」

 修正は行わず、別紙附帯決議により対処する。

 (5)「施行期日」

 ・「事態対処法制は二年以内を目標として整備」との規定を削除し、事態対処法制の整備を「速やかに」行う旨を規定する。

 ・「国民保護法制の整備は、一年以内を目標に実施すべき」旨を別紙附帯決議に盛り込む。

 ・武力攻撃事態対処法第14条、第15条及び第16条の施行については、附則において別紙附則のとおり改める。

 別紙(1)附則

 第○条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第14条、第15条及び第16条の規定は、別に法律で定める日から施行する。

 第○条 政府は、国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態へのより迅速かつ的確な対処に資する組織の在り方について検討を行うものとする。

 別紙(2)

 武力攻撃事態等への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されなければならず、これに制約が加えられる場合にあっても、その制約は当該武力攻撃事態等に対処するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われなければならない。この場合において、日本国憲法第14条、第18条、第19条、第21条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。

 附帯決議案

 「安全保障会議設置法の一部を改正する法律案」、「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」及び「自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案」に対する附帯決議(案)

 政府は、標記の三法の施行に当たって次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。

 一、指定公共機関の指定に当たっては、報道・表現の自由を侵すようなことがあってはならないこと。

 二、国民の保護のための法制の整備は、武力攻撃事態対処法の施行の日から一年以内を目標として実施すること。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp