日本共産党

2003年5月7日(水)「しんぶん赤旗」

個人情報保護法案を可決

衆院本会議 春名議員が政府案に反対


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討論に立つ春名衆議院議員=6日、衆院本会議

 個人情報保護法案と関連四法案が六日の衆院本会議で自民、公明、保守新の与党三党の賛成多数で可決されました。日本共産党、民主党、自由党、社民党は反対しました。

 政府案にたいし、野党四党は対案を提出して改善を求めました。政府案で問題になったのは、個人情報を取り扱うさまざまな事業者ごとに「主務大臣」を置くこと。個人情報保護の努力義務を定めて、これを実施しているか事業者への監督権限を「主務大臣」に与えるものですが、事業の目的が「報道」や「著述」の場合は権限の適用対象から除外しています。しかし、「報道」かどうかの判断は主務大臣がおこない、恣意(しい)的介入の危険が生まれます。

 また、政府案には思想、病歴など個人の秘密にかかわるセンシティブ情報の収集を原則禁止する規定がなく、自分の情報に自分が関与し選択する自己情報コントロール権も明記されていません。

 行政機関個人情報保護法案では、罰則規定が新たにもりこまれました。

 採決に先立ち、日本共産党の春名直章議員が討論。自衛官適齢者名簿にふれ、外部提供を原則禁じている住民基本台帳法の趣旨をふみにじり、知らない間に個人情報を自衛隊が収集していることは許されないとのべ、中止を要求。政府案の問題点として「主務大臣制」にふれ、公権力が報道や著述に介入できる「危険な構造となっている」と批判しました。センシティブ情報については、「憲法の幸福追求権や法の下の平等原則から原則収集禁止が当然」とのべ、法案に明記するよう求めました。


個人情報保護法案(政府提出)に反対

衆院本会議  春名議員の討論(要旨)

 六日の衆院本会議の個人情報保護法案採決で日本共産党の春名直章議員がのべた討論(要旨)は次のとおりです。

 私は、日本共産党を代表して、政府提出の個人情報保護法案および関連四法案に反対、野党提出の個人情報保護法案および関連三法案に賛成の討論をおこないます。

 まず、自衛官適齢者名簿提供問題について申し上げたい。

 防衛庁が八百二十二自治体から住所、氏名、年齢、性別という個人の四情報を入隊適齢者名簿として提供させていたこと、うち四百四十一自治体からは健康や職業など募集に無関係の情報までも提供させていたこと、さらに応募者の情報は警察に提供され、思想・信条までふくめた調査に利用されていることが明らかとなりました。

 国の行政機関は、外部提供を原則禁じている住民基本台帳法の趣旨もふみにじり、国民が知らない間にその個人情報を収集することは許されません。やめるべきです。

 政府案に反対する理由の第一は、表現・報道の自由の侵害の恐れが排除されていないことです。

 政府案には、個人情報を取り扱う事業者を監督するために主務大臣制が設けられています。主務大臣には、事業者の取り扱う個人情報が報道目的なのか、著述目的なのかの判断がゆだねられており、報道や著述が狭く限定されたり、恣意(しい)的な判断がなされるという危険な構造となっていることは重大です。

 野党案には、監督機関を、行政から独立性を持つ第三者機関で公正、中立におこなうことを規定しています。すでに英、独、仏でも実施されている国際基準です。

 第二は、思想、信条など個人の名誉、信用、秘密に直接かかわるセンシティブ情報の規定が欠落していることです。

 これらの個人情報は、野党案に規定されているように、民間事業者であれ、行政機関であれ、特別の場合を除いて原則収集禁止というのが、憲法の幸福追求権や法の下の平等原則からも当然です。

 第三は、自分の情報の取り扱いに自分が関与し選択する自己情報コントロール権の立場をとっていないため、企業や行政機関の運営が優先され、個人の権利が後景に追いやられていることです。

 それは行政機関法案の「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人の権利利益を保護する」という目的規定にも端的にあらわれています。

 個人情報の目的外利用についても「相当な理由のあるとき」というあいまいな規定では、個人情報が行政機関で使い回しされる恐れがあります。罰則規定も「職務のため」との理由がつけば適用除外となることが明らかになりました。こうした欠陥の重大性は、自衛官適齢者名簿提供事件によって、いっそう浮きぼりになりました。

 野党案は、「目的」に自己情報コントロール権の立場を明記し、目的外使用について第三者機関の個人情報保護審査会に諮問し、客観的立場からの検討を経て使用の是非を決めるなど、政府案の欠陥をふさぎ、行政の恣意的判断を排除する仕組みになっています。

 第四は、金融、通信など、手厚く個人情報保護策を講ずる必要のある分野の施策が後退する恐れがあることです。

 これらの分野は、現在、所管省で基本法案よりレベルが高いガイドラインを設けて個人情報を保護しています。ところが所管省からは、基本法案にあわせてガイドラインのレベルを引き下げる意向が審議のなかで明らかにされました。個人情報保護法の制定が個人情報保護策の引き下げの役割を果たそうとしていることはきわめて重大です。

 日本共産党は、今後もプライバシー権を守り、個人情報の保護と表現・報道の自由を守るために国民とともに全力をつくすことを申し上げ、討論を終わります。


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