日本共産党

2003年4月20日(日)「しんぶん赤旗」

年金の市場運用12兆円も拡大 今年度

累積損失、5兆円超も

将来世代の給付危うく


 厚生年金、国民年金など公的年金を所管する厚生労働省がとんでもないムダ遣いを拡大しようとしています。すでに巨額の損失を出している年金積立金の市場投入額を、今年度新たに十二兆円余拡大し、約四十二兆円の規模にします。このうち二割を低迷している国内株式への投資にあてようとしています。

間違いでないと厚労相答弁

 「これだけ損失を出しているときに、なぜ株式投資を拡大するのか。公的年金の保険料は強制徴収。だとすれば名目元本をへらさないというのは原則ではないか」―日本共産党の小池晃議員が参院厚生労働委員会(三月二十六日)で、こう厚生労働省をただしました。

 年金運用での損失は、昨年度四月から十二月まで、二兆一千五百三十億円にのぼります。それ以前(二〇〇一年度末まで)の累積損失が三兆百億円。経済の状況からみて、〇二年度末までの累積が五兆円をこえることは必至という事態です。

 坂口力厚労相は小池氏の質問に答え、「いままでの考え方が間違っていたとは考えていない」「株式の運用ではマイナスだが、いろいろの運用の合計でプラス。株の運用は一時的な断面だけで判断できない。株式は今後変わっていく」など株投資を継続・拡大することを表明しました。

責任とる者がいない異常性

 「長期で運用している。長期の判断が必要」というのが、厚労省の言い訳です。

 しかし、旧年金福祉事業団のときの一九八六年から二〇〇〇年まで十五年間の活用についても、五年黒字、十年赤字で、結局、一兆七千億円の累積損失をだしました。事態はさらに悪化しています。

 財務省研究所の主任研究官も経済誌上で次のように指摘しています。

 「株価は経済成長に伴って上昇していくので投資すべきだという楽観的な考え方もあるが、もしそれが真実ならなぜ一五〇兆円を全額株に投資しないのか」(『金融ビジネス』五月号、同省財務総合政策研究所・田中秀明総括主任研究官)

 このように政府部内でも黙過できないほど、年金運用は毎年、兆の単位で国民の将来の蓄えが消えながら、その責任をだれもとらないという異常な危険性をはらんでいるのです。

膨大な積立金 国民に還元を

 厚生年金と国民年金の積立金は百四十七兆円。国民が年間に受け取る給付額が約三十一兆円ですから、五年分にもなります。イギリスが二カ月分、ドイツ・フランスが一カ月分の積立金で公的年金を運営しているのと比べ、段違いです。

 こうした膨大な積み立てがそもそも必要なのか――政府はその根本の議論を避けています。年次計画を立てて積立金を取り崩せば、今年度の三千七百億円の年金給付カットなど必要ありません。

 日本医師会の坪井栄孝会長も「帳簿上は少なくとも社会保障財政に約百六十五兆円(うち公的年金百四十七兆円)もの剰余を残している。この剰余金はそもそもいざというときの備えとして積み立てられたものであり国民が将来不安に苦しむ今こそ本来の目的に使うべきである」と主張しています。(「日経」十一日付)

 (山沢猛記者)


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