日本共産党

2003年3月13日(木)「しんぶん赤旗」

宗教界に“うねり”祈りと行動広がる

イラク攻撃反対

天台宗、臨済宗、曹洞宗、真宗、カトリック、プロテスタント、新宗教も


 いま宗教界で、イラク問題の平和的解決を求める声と運動がうねりのように広がっています。宗教者はなぜ武力攻撃に反対するのか。各教団、団体の声明や決議に見ると――。


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ワールド。ピース・ナウで市民とともにイラク戦争反対を訴える宗教者=8日、東京・千代田区

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「イラク攻撃反対を」と訴える宗教者たち=2月27日、大阪・難波高島屋前

 「殺してはならない」(出エジプト記)という聖書の教え。「殺すな・殺させるな・殺すことを認めるな」という釈迦の教え。声明や決議はそれに立脚しています。「私たちは、今回の問題を米国とイラクだけの問題ではなく、平和を願うすべての人類の問題として受けとめています」(立正佼成会の小泉純一郎首相あてアピール)という姿勢も共通しています。

 真宗大谷派(東本願寺)は「怨(うら)みに報いるに怨みをもってしたならば、ついに怨みのやむことはない」という法句(ほっく)経の教えを引き、戦争と報復の連鎖を警告。日本キリスト教協議会(NCC)はブッシュ大統領あて書簡で「暴力は暴力の連鎖しか生み出さず、真の問題の解決と平和をもたらすものではない」と述べています。そして――

 「犠牲が強いられるのは戦地の多くの市民」(真宗大谷派)であり、「米国民のいのち、武力の標的となっているイラクの人々のいのち、そのすべてが尊いのです」(立正佼成会)、「武力行使は…ただ人間として生きる権利や尊い人命を奪い、その地域の環境を微塵(みじん)もなく破壊するだけである」(曹洞宗)、「人間に不条理な死を強いる戦争こそ人権侵害の最たるものであることを銘記しなければならない」(臨済宗妙心寺派)と。

 宗教界は米国の姿勢を率直に批判しています。「ひとつの国家のみが正義をかざす時代はすでに終わっている」(天台宗)、「いかなる大義を掲げようとも、武力の行使は…愚かな行為である」(諸宗教者による比叡山での緊急集会声明)。「アメリカが大国主義、一国主義の立場に立って世界の警察官のように振舞うのでなく、世界の国々や人々と平和と和解を求めて共に歩むようになって欲しいと願っています」(NCC)。

 その上で、日本政府に対して「英米などと共にイラク問題の武力による解決を望んでいるのは恥ずべき誤り」(日本聖公会)と指摘し、「戦争を回避するあらゆる外交的手段」(カトリック・カリタスジャパン)、「平和憲法に則り、独自の外交努力」(金光教泉尾教会)を求めています。

 最近のきわだった特徴は、各教団が祈りとともに行動を呼びかけていること。「国際社会の勇気ある連帯こそ必要」「善意ある人々とともに、平和と正義を促進するために積極的に行動しましょう」(カトリック司教団)。

 宗教者はいま、教団独自の集会だけでなく、市民の運動に参加し、大切な役割を担っています。米大使館に平和のメッセージや花束を届けるなど工夫をこらした取り組みもしています。


声明、書簡、集会、アピールなど次々

 ほとんどの仏教教団が加盟している全日本仏教会が二月、「日本仏教者の非戦・平和への願い」を発表したのにつづき、天台寺門宗、臨済宗妙心寺派、真宗大谷派(東本願寺)、曹洞宗、天台宗などが決議や声明を発表。真言宗豊山派も管長訓示のなかで平和解決を呼びかけました。日本山妙法寺も早くから行動に立ちあがっています。

 プロテスタント系の日本キリスト教協議会(NCC)と同加盟各教団、日本聖公会、カトリックの最高指導機関の日本司教団も声明や米大統領への書簡などを発表。新宗教教団の組織である新日本宗教団体連合会(新宗連)は理事長名で「武力によらない解決を」との立場を表明。加盟教団の立正佼成会、妙智会などもアピールを発表し、米大使館や各国政府に送っています。

 日本宗教者平和協議会や平和をつくりだす宗教者ネット、キリスト者平和ネットなど宗教界の平和団体は早くから運動に取り組み、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会も比叡山で緊急集会を開き、平和解決を求める声明を出しています。


武力対応も必要(池田名誉会長)利敵行為発言(冬柴公明幹事長)

特異な存在の創価学会

 「平和解決」を訴える宗教界の中で特異な存在が創価学会。公明党の政権参加後、戦争法からテロ特措法、有事立法、イラク問題に至るまで、ほとんど「沈黙」を通してきました。

 池田大作名誉会長は聖教新聞一月二十六、二十七日付にSGI(創価学会インターナショナル)会長として長文の「提言」を発表しましたが、イラク問題については「イラク攻撃は避けられないという暗い見通しが支配的」とした上で、大国が「自制心のかたち」を示さないと「道義的説得力を欠く」と述べただけ。逆にその前段で「それ(テロ)と戦うために、ある場合には武力を伴った緊急対応も必要」とまで述べています。

 この池田提言には、公明党内で「武力行使を全否定はしないというくだりに『そこまで選択の幅を認めていただけるのか』と驚いた」(『週刊朝日』三月七日号)という「中堅議員」の声も出ています。

 池田提言の直後に飛び出したのが冬柴鉄三・公明党幹事長の“戦争反対は利敵行為”発言。国連査察の結論も出ないうちに「敵」と決めてかかる。

「すべてのいのちを大切にし、相手と自分に対するとらわれを超え、違ったもの同士が手を取り合って生きる」(全日本仏教会声明)とは対照的です。


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