日本共産党

2003年2月24日(月)「しんぶん赤旗」

自立めざす勇気わいた

「輝く自治体フォーラム」参加者ら


 北は北海道から南は鹿児島県奄美大島まで、全国から六百人が参加して長野県栄村で開かれていた「小さくても輝く自治体フォーラム」。「自立をめざす勇気がわいた」「自立を選んだことは間違っていなかった」――どの町村長に聞いても返ってくる言葉が、共通の思いを表していました。(四氏の発言は22日のシンポジウムで)

顔の見える範囲で自治を

群馬・上野村 黒澤丈夫村長

 民主主義の原則にあった政治をやるためには、顔の見える範囲ぐらいでないとできません。合併で自治体数を減らすと、農山村地域は人口が少ないですから、代表者になる議員を出せない。自治権を奪われることになります。自治権を市街地の人にお任せすることになる。それでは、憲法が認める自治権を軽視しているといわざるを得ません。

 地方の財源である交付税を、中央の役人が分配方法を決めている。そんな権限が中央にあるでしょうか。町村は適正な規模で、団結を強固にして人と人とが助け合う心を盛んにすべきです。今、国が唱える合併には真正面から反対です。地域住民の自由に任せていただきたい。

特例債は巨大な毒薬

福島・矢祭町 根本良一町長

 昭和の大合併は中学校の義務教育を、明治の大合併は小学校を義務教育にするといわれ、国民に大きな説得力がありました。今度はお金がないからだという。非常に説得力が薄いと思います。(自民党が)選挙で勝てないから、都市に金を持っていこうとしているとの話もありましたが、そう思わざるを得ません。

 金さえくれれば何でもいいという方もいますが、特例債という巨大なアメをくれるというが、私は毒薬だからいらないといっています。私ども頑張ろうとしています。頑張る自治体が全国に澎湃(ほうはい)としてあるならば、国力はあがるでしょう。

人口でいうのおかしい

福岡・大木町 石川隆文前町長

 「西尾私案」では小規模自治体の解消をめざすという。人口規模でいうのは全くおかしい。ふるさとの山や川、生き物を大切にしながら住み続けられるよう精いっぱいの努力をしています。それを無視して合併を強行しようとしています。農山村のことは何も知らない小泉さんが都市再生という。町村合併によって都市に力を向けようという。断固反対せざるを得ない。

 いま家庭で出た生ゴミをたんぼに返し、そこでできた安全な米や野菜を消費者に返す循環システムを、行政と住民の共同によってつくり上げていこうとしています。こういう試みは小さな町だからできる。これには住民参加が絶対条件なんです。

実践的自治やってます

長野・栄村 高橋彦芳村長

 住民が行政とともに行動する実践的自治をスローガンにしています。

 「田直し」「道直し」(伝統技法を用いた村の独自事業)や「げたばきヘルパー」は、地域にやさしい、地域に合ったものに直していくということ。「道直し」は沿線住民が主役です。「田直し」の総事業費は一億三千万円余。国庫補助事業に換算すると五億円くらいになります。「道直し」を合わすと八億円くらいの余剰をうむ計算です。

 「げたばきヘルパー」の結果、来年から介護保険料を引き下げます。合併しなくてやっていけるかと問われますが、現在、こんなにりっぱにやっているとしか答えようがありません。


46人の町村長参加「画期的」

国土支えている小規模自治体

守ることこそ国の義務

 どの町村が参加するのか総務省サイドも注視していたフォーラムは、四十六人の首長が参加するという「画期的な出来事」(自治体問題研究所・加茂利男理事長)に。

 「政府はこれを無視したら手痛いしっぺ返しを受けるだろう」(同)というとおり、強制合併を強める政府・与党にたいする痛打となりました。

 人口小規模自治体の権限の縮小、その存在さえ認めないという動きが強まるなかで、フォーラムでは、小規模自治体といえども、自分たちの町の将来を決める権利があることを確認。「国土全体の自然と農林漁業を支える小規模自治体を守ることは、全国民の課題であり政府の義務である」(雪国からのアピール)と訴えました。

 会場の長野県栄村は日本有数の豪雪地帯で、会場周辺は一面の雪景色でした。ここを会場に選んだ町村長五人の呼びかけ人の心には、こういう町村が国土を支えているのであり、強制合併の不合理性を明らかにしたいという思いがありました。

 「田直し」「道直し」「げたばきヘルパー」など独自の施策で全国に知られる栄村の高橋村長が「キラリと輝く村づくりがここにある」とのべると、場内から共感の拍手がわき起こりました。

 「小規模自治体を支援していく」とのべた長野県の田中康夫知事の姿勢も、自立の道を模索する首長と住民を励ましました。

 フォーラム二日後の二十五日には、東京武道館で全国町村会と町村議長会の共催で、強制合併に反対して地方自治の確立を求める大集会が開かれます。

 フォーラムが示した「合併によらない自治体づくり」の流れとあいまって、憲法が保障する地方自治と「日本のふるさと」をまもろうという世論と運動は、いよいよ広がろうとしています。


参加した首長の感想

 秋田県羽後町 佐藤正一郎町長 自立宣言をして間違っていなかったと思いました。政府は合併で市町村を画一的にしようとしています。しかし、市町村に個性があり違いがあってこそ地方自治の発展も開かれてくるのです。

 鳥取県智頭町 寺谷誠一郎町長 合併しないと時流に乗り遅れると思ったら間違いだと、大変意を強くしました。93%が山林の智頭町は、きれいな水と国土を守るかけがえのない役割を果たしています。自立した町づくりで智頭町の役割を果たしていきたい。

 鹿児島県宇検村 元山三郎村長 大変勇気づけられ、自立してやっていく展望が見えました。住民の顔が見える小規模自治体でこそ、住民参加の地方自治が実践できます。この熱気で国の強制合併をはね返していきたい。

 山形県金山町 松田貢町長 勇気がわき、とても勉強になりました。金山町は任意の合併協議会に参加していますが、自立をのぞむ町民が多く模索しています。住民自治を後退させることのない道を選択していきたい。

 北海道真狩村 筒井末美村長 「西尾私案」が切り捨てようとする人口一万人以下の自治体の多くは、北海道です。合併で農業など第一次産業は衰退し、食料自給率はいっそう後退します。来年もこうした集会を開いてほしい。

 兵庫県福崎町 嶋田正義町長 地方自治をまもるエネルギーを感じました。今の交付税の枠内だけではなく、軍事費や銀行への公的資金を削って地方に回すなど財源拡充を求めることが大切です。合併のメリットもデメリットも全部住民に知らせて議論を尽くしていきます。


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