日本共産党

2003年2月12日(水)「しんぶん赤旗」

医療費3割負担

凍結へ野党きょう法案提出


 医療費三割負担の四月実施の凍結を求める声が広がっています。日本共産党、民主党、自由党、社民党の野党四党は十二日、三割負担実施を凍結する法案を国会に提出します。(秋野幸子、坂井希記者)

患者負担増こんなに

 自民、公明など与党は健康保険法などの改悪を強行し(昨年七月)、サラリーマンや公務員本人と家族(入院)、退職者の患者負担を現行の二割から三割へ一・五倍に引き上げることを決めました。厚生労働省の試算で年間四千億円の患者負担増となります。

 たとえば高血圧で月二回通院している人の場合。検査、療養指導などで現在の負担は月三千五百三十円です。これが三割になると月五千三百円に。約千八百円の負担増です。ポリープ切除の手術で二日間入院した人の場合は、二割負担で二万四千六百円。これが三割になると三万六千九百円となり、負担増は一万二千三百円にのぼります。

受診抑制で健康悪化

 すでに昨年十月から実施されている七十歳以上のお年寄りの負担増(定額負担廃止、一割負担の徹底、一部に二割負担導入)は必要な治療を抑制し、深刻な事態を引き起こしています。

 月六万円弱の年金で一人暮らしをしている東京・日野市の女性(80)は、肺気腫のため在宅酸素療法を受け、月二回通院しています。改悪前は月千七百円だった自己負担は、十月から九千五百円へと五・五倍にはね上がりました。通院のためのタクシー代が月四千円かかります。

 「息子や娘の仕送りも受けてどうにかやっているが、これ以上、生活も切りつめようがない……。生きていくためには酸素はやめられませんが、今のままでは生きているのもつらいです」。切々と語ります。福岡県では、年金暮らしの老夫婦が入院をすすめられたのに医療費の高額化で入院をためらい、相次いで死亡(昨年十月)しました。

経済にも深刻な影響

 不況のなかの患者負担増は、経済にも深刻な影響を与えます。

 患者負担を一割から二割に引き上げた九七年の医療改悪は、消費税増税などとあわせて九兆円の負担増となり、いまの大不況の引きがねとなりました。政府・自公両党は、同じ愚を繰り返そうとしています。

 家計に加わる負担増を示して、その誤りを端的に示したのが七日の志位和夫委員長の質問(衆院予算委員会)でした。

 三割負担実施の四月は、保険料(政管健保、介護保険)も同時に引き上げられる予定。志位委員長は、雇用保険料のアップ(昨年十月)、配偶者特別控除の廃止や発泡酒・たばこなどの庶民増税を含めた国民負担増全体の影響を、政府統計の「家計調査」(サラリーマン四人世帯)から試算しました。

 この負担増は十一万一千円となり、そのうえ不況でこの三年間、家計収入は毎年十五万一千円の減となっているため、一世帯あたり実質二十六万二千円の負担増になります。九七年は、毎年十一万二千円増で家計収入が伸びていたため、実質負担増は二万四千円でした。今回の実質負担増は、この十倍となります。

 三割負担凍結は、経済立て直しにとっても不可欠です。

国庫負担引き上げを

 小泉内閣は「保険財政が厳しい」と三割負担の凍結を拒否しています。厚生労働省は、中小企業の労働者などが加入している政府管掌健康保険(政管健保)について、三割負担への引き上げを凍結した場合、大幅な赤字になると危機感をあおっています。

 しかし、保険財政悪化の原因は、国の負担を削ってきたことにあります。政府は九二年、保険財政の黒字を理由に政管健保への国庫負担率を給付費の16・4%から13%に引き下げました。これによる国の負担の削減分は、九二年から十一年間の累計で一兆六千億円にも達します。

 国庫負担を引き下げるさい政府は、保険財政が悪化したら元に戻すと約束しました。この約束をほごにしたまま「保険財政の悪化」をいうのは政治の責任を放棄したものです。

 財源の問題では、税収からどれだけが社会保障に向けられているかを考えなければなりません。七日の予算委員会で志位委員長は、サミット各国と日本を比較しました。

 社会保障の財源は、どの国でも税と社会保障負担(保険料など)から成り立っています。保険料など国民が税とは別に負担する費用(社会保障負担)を社会保障給付費から除けば、残りは税を財源とした部分になります。これが税収(国と地方)全体に占める割合は、税金からどれくらい社会保障給付として国民に返ってくるかを示します。

 日本ではこの“見返り率”が22%。他国より10―44ポイントも低いのです。これをサミットの他国なみに引き上げると、八―二十四兆円の財源が生まれてきます。

 国民の多数の反対を押しきって三割負担を強行する政治か、社会保障に冷たい税の使い方や財政のゆがみをただす政治かが問われています。

共産党が共同よびかけ

 日本共産党は昨年九月に、「深刻な経済危機から国民の暮らしをまもるための四つの緊急要求」を発表。その第一に患者負担増や保険料値上げの中止を盛り込み、幅広い共同をよびかけました。その後、日本医師会が「被用者保険三割自己負担の実施凍結」を求めるなど、共通の要求に広がっています。


もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp