日本共産党

2003年2月5日(水)「しんぶん赤旗」

穀田国対委員長への小泉首相答弁 (要旨)


 穀田氏に対する小泉純一郎首相の答弁(要旨)は次のとおり。

 【社会保障負担増について】急速な少子高齢化が進展するなかで、今後、社会保障給付費が増大していく見込みであり、社会保障制度を将来にわたり持続可能なものとしていくためには、医療保険などの制度改革は、不可欠なものと考える。改革を進めなければ、保険制度の運営は困難となり、かえって将来に対する不安が広がり、経済にも悪影響を及ぼすことになる。

 【負担増が経済にあたえる影響について】当面の景気との関係については、個々の負担増のみをとりあげて議論するのではなく、社会保障給付の拡大等のプラスの側面や、先行減税の効果なども含め、総合的に考えるべきだ。今後とも、金融、税制、歳出、規制などの構造改革のとりくみをさらに加速し、国民全体の将来の不安感の解消や、潜在的な民間需要の顕在化と雇用の拡大を通じて、家計消費をはじめとする民間需要主導の持続的な経済成長の実現をはかっていく考えだ。

 【健康保険本人三割負担について】国民皆保険を将来にわたり堅持していくには、患者、加入者、医療機関に、等しく負担を分かち合っていただくことは避けられず、保険料の引き上げ幅を極力抑制するためにも、予定どおり本年四月から三割負担をお願いする。

 【庶民増税、大企業減税の指摘について】そうではない。今般の税制改革では、相続税、贈与税の一体化により、相続税が課税されないとみこまれる個人についても、住宅取得資金をはじめとする生前贈与がおこなわれやすくなり、金融証券税制の見直し、土地・流通税の大幅軽減等、種々の減税措置は、大資産家のみならず、広く個人を対象とするものである。さらに研究開発、設備投資減税や、中小企業税制にかかわる措置についても、大企業のみならず、中小企業や個人に広く恩恵を及ぼすものと考える。

 【歳出構造について】来年度予算については、予算の重点配分や、徹底した単価の見直しなどの効率化に、大胆に取り組んだ。社会保障予算については一般歳出を厳しく抑制し、その予算規模は約十九兆円で、伸びはプラス3・9%と大きなものとなっている。他方、公共投資全体の規模について、前年度当初予算から3%以上削減し、約八兆九千億円としつつ、都市の再生や地方の活性化など、雇用、民間需要の拡大に資する分野へ重点化をはかっている。歳出構造の見直しは、確実に進んでいる。

 【不良債権処理と中小企業の問題について】不良債権処理の加速は、日本経済の再生に不可欠なものと認識している。今般、不良債権処理をこれまで以上に加速し、政策を強化するとしたが、これは、銀行経営の健全性を高め、中小企業向け融資を含めた銀行の資金仲介機能をいっそう強化させようとするものであり、指摘のような矛盾があるとは考えていない。民間における融資対応は、基本的に、個々の銀行等の経営判断によるものと考えているが、金融機関に対し、中小企業への資金供給のいっそうの円滑化を繰り返し要請しているところであり、やる気と能力のある中小企業への資金供給については、万全を期していきたいと考える。

 【地域金融活性化法案について】円滑な地域金融の確保は重要なことだが、共産党提案の「地域金融活性化法案」は、基本的に自主的な経営判断に委ねるべき金融機関の業務内容を、公的な機関が画一的な基準で、評価・公表しようというものであり、慎重に考えるべきだ。

 【雇用情勢について】引き続き厳しい状況が続くのは避けられない。このため、政府としては、不良債権処理の加速などに伴う雇用への影響には十分配慮することとし、平成十五年(〇三年)度当初予算、平成十四年(〇二年)度補正予算において、早期の再就職の支援など、雇用のセーフティーネットに万全を期したところだ。

 【雇用保険制度の改正と労働時間、労働契約制度の改正について】雇用保険制度の改正については、将来の安定的運用を確保するべく、早期再就職を促進し、多様な働き方に対応するとともに、再就職の困難な状況に対応するため、給付水準や所定給付日数の見直し等をおこない、雇用のセーフティーネットとしての役割を適切に果たせるようにするものだ。労働契約や労働時間制度については、解雇ルールの明記、裁量労働制の要件、手続きの緩和等を内容とする労働基準法の改正法案を、今国会中に提出する予定だが、これは、労働者が雇用の働き方を選択できる環境を整備し、働き方に応じた適正な労働条件を確保する観点からおこなうものだ。

 【長時間労働、サービス労働、年次有給休暇、若年者雇用について】長時間労働は、労働基準法にもとづき、時間外労働の限度基準を定め、指導をおこなっている。年次有給休暇を取得しやすい環境整備のためには、年次有給休暇の完全取得等を前提とした業務計画を作成するなどの工夫も重要であると考える。政府目標である年間総労働時間千八百時間の達成、定着に向けて、取り組んでいく。サービス残業については、労働基準法違反であり、的確な監督、指導等を通じて、適正な労働時間管理に向けた改善がはかられてきており、引き続き、その解消に努めていく。厳しい就職環境にある高卒予定者等については、十五年度予算において、インターンシップの充実など若年者の雇用を推進するための施策を盛り込んでいる。

 【イラク問題】重要なことは、イラクが査察を単に妨害しないだけではなく、みずから能動的に疑惑を解消し、大量破壊兵器の廃棄をはじめとする、すべての関連安保理決議を忠実に履行することだ。それが実現でき、平和的解決が達成されることが最も望ましい。

 【アメリカの態度について】米国に対しては、先日の電話会談で、ブッシュ大統領に対して、米国が構築してきた国際協調を維持することがひきつづき重要であるとのべた。

 【イラク問題の国際世論について】フランス、ロシア、中国、ドイツが武力行使に慎重な意見を表明している一方で、イギリス、イタリア、スペイン、ポーランドなどは米国との連携を重視している。国際世論は必ずしも一致していない。しかし、イラクが査察に対し、完全かつ無条件の積極的な協力を実施していないというのが、国際社会の一致した認識だ。わが国としては、イラクが誠実に決議を履行するように外交努力を継続していく。

 【有事法制について】継続審査となっている有事関連法案は、憲法の範囲内でさまざまな緊急事態に対応できる体制づくりをすすめ、国民の安全を確保するため、ぜひとも必要である。国民の幅広い理解を得て、今国会における有事関連法案の成立を期す。

 【北朝鮮の核兵器問題】日朝平壌宣言にもとづき、拉致問題や安全保障上の問題を含む諸懸案の解決を図っていく方針であり、とくに北朝鮮による核兵器開発問題については、ひきつづきアメリカ、韓国はじめとする関係国と緊密に連携しながら、さまざまな機会をとらえ、北朝鮮側に問題解決のための前向きな対応を粘り強く求めていく。 【公共事業受注企業等からの政治献金問題】公共事業受注企業等からの献金について野党四党から改正法案がすでに国会に提出されている一方、現在、自民党においても検討をすすめており、一歩でも前進する措置を講じたいと考えている。

 【企業団体献金について】政党に対する企業・団体献金については一定の範囲内で認められる一方で、政治家個人の資金管理団体に対する企業・団体献金は、すでに平成十二年(二〇〇〇年)一月から禁止されたところだ。政治資金のあり方は、政治活動にかかるコストをどのように国民に負担していただくかという重要な問題であり、今後も各党・会派が十分に議論を積み重ねることが必要であると考える。

 【日本経団連の政治献金について】企業等、民間の団体が政党や政治資金団体に対して寄付を行うかどうかは、その団体が自ら決めるべき問題である。


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