日本共産党

2003年2月3日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

“米のイラク攻撃おかしい”

立ち上がる若者たち

関東うるまエイサー


 もしイラク戦争が起これば、五十万人もの被害者が出ると国連は予測しています。難民は二百万人ともいわれています。世界でも日本でも、思想・信条・立場の違いを超え、「戦争反対、平和を守れ」の声が広がっています。それぞれのやり方で、自分のできるところから立ちあがっている若者たちを紹介します。

ええじゃないかええじゃないか

大声で太鼓たたき行進

 「ええじゃないか、ええじゃないか!」。太鼓に合わせ、おなかの底から声を出し、踊りながら平和を訴えます。「ええじゃないか隊」の人たちです。

 中心になっているのは「関東うるまエイサー」のメンバーです。一月十八日の「ワールド・ピース・ナウ」では、十数人で始めた踊りの行列に、学生などが次々加わり、気がつくと百人余りが踊っていました。

 普段、「関東うるまエイサー」は沖縄の伝統文化「エイサー」を踊っています。まとめ役の大久保瑞穂さん(29)=会社員=は、「今までも有事法制反対のデモなどに参加していたんですよ」「アメリカがイラクに攻撃することの理不尽さは多くの若者が感じています。一緒にやるには、やるほうも楽しくなければ」と話します。

 「ええじゃないか」と声を出すことで参加者にも自分の表現方法をもってほしい、とのこと。

 「関東うるまエイサー」は、沖縄の音楽家・喜納昌吉さんの「すべての武器を楽器に」の言葉を受けて活動しています。「ええじゃないか」のアイデアも喜納さん。

 大久保さんたちは、幕末に巻き起こった「ええじゃないか」と踊りながら世直しを訴えた民衆運動の再現をイメージしながら「ええじゃないかは歴史上のものですから、当時のように全国的に広がっていけばいいですね」と話しています。

 参加したメンバーに感想を聞きました。

 「予想以上に楽しかった」と中根圭太さん(24)=大学生=。友達三人を連れて参加しました。「日ごろ平和のこととか話す機会はないけれど、お互いの意見を交わすきっかけにもなりました」

 穴見偲さん(32)=アルバイト=は「『戦争反対』と思っていても、私だけでは何かしようとは思えないし、できないと思う。誘ってもらって、いい経験になりました」。

 メンバーの男性(30)は、「平和に限らず、なにか問題意識を持ったら行動できる、そんな環境があればいいですね」。


アメリカで見たものは

平和サークル「くじら」 志賀未知瑠さん

 東京・港区の平和サークル「くじら」のメンバー、志賀未知瑠さん(23)=学生=は、アメリカ国内もイラク攻撃一色にそまっているわけではない、と実感しています。

 昨年十月半ば、ニューヨークの国連本部に行きました。「国連の前では連日プラカードを持って、『イラク攻撃するな』と抗議する人々がいました。アメリカの平和活動家も、『国内の世論が変わってきている』と話していました」

 アメリカに行ったのは、原水爆禁止日本協議会のツアーで各国大使に「核兵器の廃絶」を求めるため。イラクへの査察受け入れを求める国連安保理決議一四四一が出る直前でした。

 現地の平和活動家とコネティカット州の小さな町でピースパレードをしました。「イラクを攻撃するな」「殺害は憎しみを止められない。戦争を繰り返すな」などのプラカード。祭りのさなかで、数百人が沿道から行進をながめていました。

 「軍需産業もある保守的な町だと聞いていたんですが、沿道の人たちはすごい拍手。プラカードを向けると親指を上に立てて同意してくれるんです。なかには『ワールド・トレード・センターを忘れたのか』と親指を下に向ける人もいたけれど、私が見るかぎり、そういう人は二人くらいでした」

 それから三カ月ちょっと。「イラク攻撃するな」の世論は世界中に広がっています。一方、日本の小泉首相は「仮定の問題に答えることはできない」の一点張り。

 志賀さんは「広島・長崎のある日本なのに」とまゆをひそめます。祖父は広島で被爆しました。「原爆とはどういうものだったのか」「なんで戦争が起きたのか」。それを知りたいという思いが、自分を動かしてきました。

 「一部の人が始めた戦争で、苦しむのは一般市民。戦争は憎しみの連鎖です。アメリカの勝手な行動を許したら、二十一世紀も憎しみが続いてしまいます」

 バッグには、平和サークル「くじら」で作った直径二センチほどのカンバッジがついています。「友達に『なにこれ?』って聞かれたとき、私の思いを話すきっかけになるんです」


CHANCE!pono2 NGOに呼びかけ

「僕らには、変える力がある」

 平均年齢二十七、八歳の若手グループ「CHANCE!pono2(ポノポノ)」は、「ワールド・ピース・ナウ」の呼びかけ団体の一つ。インターネットやメールで多くの若者の共感を呼んでいます。七千人の平和への思いを、どのように募ってきたのでしょうか。

 メンバーの内山隆さん(36)=コンピューター系フリーランス=は、「今までは個人を中心に参加を募ってきました。今回は環境NGO(非政府組織)など、団体にも連帯を呼びかけたのが大きかった」といいます。

 三十三団体が、ともに呼びかけ団体に。さらに広げようと、はがきやダイレクトメール、インターネットを使って賛同団体を募集。「昨年十一月ごろから連日電話をしたり、メールを送ったり。文字通りみんな奮闘しました」。最終的に団体で百七十五、個人で六百九十一人の賛同が寄せられました。

 「イラク攻撃反対」を真正面に掲げたことも、若者が集まった要因とみています。「アメリカのイラク攻撃は明らかにおかしいとみんなが思っている。それならその声をあげる場をつくろう、と。それが共感を呼んだのではないでしょうか」

 内山さん自身、一昨年の9・11同時多発テロを見て、「とにかく何かしなきゃ」と「CHANCE!」に加わった一人。

 「歴史的大転換が起きているんじゃないか、と思いました。ブッシュ米大統領はアフガニスタンへの報復攻撃をする、小泉首相は反対どころか賛成する――。今まで学んできた民主主義ってなんだったんだ、僕らの思いが伝わっていないじゃないか、と」

 「CHANCE!pono2」のメンバーは現在、十五、六人です。活動は全員ボランティア。「代表」はおいていません。「無関心を好奇心に」が合言葉のように使われているといいます。

 「『おかしい』と思うことから始まるんです。『平和』ってなんだろうと考え、人と話し合う。その積み重ねが、平和をつくる力になるのだと思います。変える力は、私たち一人ひとりにあるんです」

 ホームページ

 http://www.worldpeacenow.jp


【ワールド・ピース・ナウとは】

 アメリカのNGO「国際ANSWER」(戦争停止と人種差別終結を今こそ)などが世界に呼びかけたイラク攻撃反対のアピールに応え、日本のNGOや市民団体がとりくんだキャンペーン。東京、広島、京都などでピースウオーク、ライブ、パレードなどをしました。東京では7000人が参加。韓国、ロシア、フランス、イギリス、アメリカなど、行動は30カ国以上で行われ、世界を一周しました。


イラク攻撃Q&A

なんで査察をうけるの

 イラクはなんで大量破壊兵器の査察を受けるの?

 イラクへの査察は、国連安全保障理事会の湾岸戦争停戦決議六八七(一九九一年)にもとづいています。

 決議は、湾岸戦争の発端であるクウェート侵略をしたイラクに対して、核兵器や生物・化学兵器など大量破壊兵器の開発をやめ、廃棄するよう求め、イラクもこの決議を受け入れました。決議に従って、生物・化学兵器の査察をおこなう国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM・現在の国連監視検証査察委員会〈UNMOVIC〉)が結成されました。核兵器の査察は国際原子力機関(IAEA)が担当しています。

 九八年十月、イラクがUNSCOMの査察への協力を全面的に拒否したことで米英がイラクを爆撃。以来、査察が中断していましたが、二〇〇二年十一月、査察の無条件受け入れを求めた国連安保理決議一四四一をイラクが受諾、四年ぶりにIAEAとUNMOVICの査察が再開しました。

査察の結果はどうなった

 今回の査察の結果はどうなったの?

 IAEAとUNMOVICは一月二十七日、国連安保理に報告書を提出しました。

 報告書は、イラクが大量破壊兵器を保有しているという明確な証拠はなく、査察に対するイラク側の協力にいくつかの問題はあるものの、査察を継続すれば問題は解決できる、としています。

 これに対してアメリカのブッシュ大統領は、一月二十八日の一般教書演説で、イラクの大量破壊兵器保有の証拠は示さないままに、「フセイン(イラク大統領)が完全に武装解除しないなら、連合を率いて彼を武装解除する」とのべました。国連はじめ国際社会が査察による解決の努力をしているとき、これを妨害し、何とかして武力に訴えようという態度です。

 日本共産党の志位和夫委員長は一月二十九日、「査察を継続し、国連の枠組みのなかでの平和解決をあくまでも追求を」とする談話を発表して、イラクが決議一四四一を厳格に順守すること、米国が国連を無視した一方的な武力行使の計画を放棄することを強く求めています。


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