日本共産党

2003年1月30日(木)「しんぶん赤旗」

イスラエル総選挙

右派リクード第一党

シャロン首相が続投へ


 【カイロ29日小泉大介】イスラエルの国会(クネセト、定数百二十)総選挙が二十八日、投・開票され、シャロン首相が率い、対パレスチナ強硬路線を掲げる右派与党リクードが三十七議席(現有十九)を獲得し、第一党に進出しました。

 リクードとともに二大政党の一角を占め、中東和平推進をかかげる野党労働党は十九議席(同二十五)にとどまりました。また中道世俗政党のシヌイが十五議席(同六)を獲得して躍進し、ユダヤ教「超正統派」政党シャスは十一議席(同十七)にとどまりました。

 投票率は史上最低の68・5%でした。

 今後、第一党党首であるシャロン氏が大統領から組閣を要請され、首相を継続する見込みです。

 今回の総選挙では、シャロン首相がすすめてきたパレスチナ自治区の再占領ともいうべき政策や、失業率が10%にいたるなど深刻な経済状態をもたらした経済政策が問われました。リクードは最後までパレスチナ強硬路線を堅持する姿勢を崩さず、これにたいし労働党は和平交渉の即時再開や経済再建を訴えましたがおよびませんでした。

 シャロン首相は勝利演説で、「テロとのたたかいは終わっておらず、日々犠牲者が増えているのだ」とのべ、さらなるパレスチナ弾圧を示唆しました。労働党のミツナ党首は「われわれはシャロン首相に日々、(治安確保には)別の選択肢があること、他の方法があることを思い起こさせる」と強調しました。


解説

対パレスチナ強硬策と経済悪化で政局混迷も

 一昨年三月、「イスラエルの治安確保」を掲げ就任したシャロン首相は、パレスチナ和平プロセスを捨て去り、パレスチナ自治区の再占領ともいえる政策を強行してきました。これがパレスチナ過激派による自爆テロを誘発し、事態は泥沼の展開となりました。しかし、今回の選挙戦で事態打開の展望を示すどころか、選挙最終盤の二十六日にガザ中心部に最大規模の軍事攻撃をしかけてパレスチナ人十二人を殺害、投票日にも四人を殺害するなど、治安問題に不安を抱える有権者にむけた「強いイスラエル」のアピールをひたすら追求しました。

 一方、労働党の側は今回、パレスチナ自治政府との和平交渉の即時再開の公約を掲げました。しかし、昨年十月までリクードと大連立をくみ、パレスチナ弾圧に加担してきた経過に加え、選挙後のリクードとの連立問題で指導部が割れるなど、全党を挙げて和平路線の推進を有権者に訴えるには至りませんでした。

 今回の投票率が前回を約10ポイント下回ったことは、和平問題で揺れる有権者の多くが棄権に回った可能性を示しています。

 リクードを中心とした今後の連立政権づくりをめぐり、労働党のミツナ党首は選挙後に改めて連立入りを拒否、第三党に躍進した中道政党シヌイも宗教政党と連立を組むことを拒否しており、リクードは極右政党や宗教政党と右派連立を組む公算が大になっています。パレスチナへの強硬路線の激化とパレスチナとの衝突に低迷する経済のさらなる悪化などが重なれば、政局は混迷を深めることも予想されます。

 イスラエルの有力紙ハーレツは投票日付の社説で「次期シャロン政権の政治的不安定、外交的混迷、不正献金疑惑の捜査の進展は、次期総選挙を劇的に早めるであろう。再建された強大な野党がその準備をおこなう必要がある」としています。(カイロで小泉大介)


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