日本共産党

2003年1月10日(金)「しんぶん赤旗」

ヤングハローワーク訪れる若者たち

“あるのはパートだけ”

正社員の口がない

─1日300〜400人


東京・渋谷

 東京・渋谷駅のハチ公口から歩いて5分もしないところに「ヤングハローワーク しぶや・しごと館」があります。年明け早々大勢の若者が、入れ代わり求人案内のパソコン画面に見入っていました。就職したい、自分の力で生活したい、自分を磨きたい……。不況でも就職難でも消すことのできない思いが垣間見えました。

 室内は青を基調に開放的な雰囲気。インターネットやビデオ視聴ができるコーナーやカウンセリングルームもあり、一日三、四百人が訪れます。来場者同士の会話はなく、静かな緊張感に満ちています。

◎家賃払えない

 パソコンで求人情報を見ていたマサトさん(26)=江戸川区=は、「今月中に仕事を決めないと、来月ヤバイ」といいます。家賃六万円のアパートに一人暮らしです。

 昨年十一月まで二年近く楽器屋でアルバイトをしていました。学生時代からロックが好きで、選んだ仕事でした。趣味で集めたギターは十本くらい。お気に入りはフェンダー製です。

 時給は八百円。毎日朝十時から夜九時ごろまで働いて、休憩は少し。残業代は出ません。「好きだから続けられたようなものです」

 重いアンプを車から積み下ろすなど仕事は重労働。やがて腰を痛めるなど、体の調子ががたがたに。忙しさで精神的にも追い詰められ、結局辞めざるをえませんでした。

 今は貯金を取り崩して食べています。残高は、「来月分の家賃には届かないくらい」。うつむきがちに話します。「なるべく音楽関係の仕事に就きたいと思って探したけど、まったくないね。とにかく生活できるようにしとかなきゃ」

◎切羽詰まる

 部屋の奥で履歴書を書いていたサチコさん(27)も、今月中に仕事を見つけないと今の家に住み続けることができません。

 「切羽詰まってます。正社員として働きたいんだけど、条件のいい仕事は競争が厳しいです」

 サチコさんは東京の大学を出た後、家庭の事情で福島県の実家に帰郷。契約社員として民間会社の事務をしていました。昨年十二月末、契約が切れて退職。東京で仕事がしたいと上京しました。

 「企業は即戦力を求めているからパソコンにしてもそれなりの技能が必要。営業職はまだ求人があるけど、それも“経験者優遇”。一度どこかで働いていて、取引のコネがある人は強いけど、ない人は弱いです」

 パートなどの求人はあるけれど、それでも正社員になりたい、と強い口調で語ります。

 「仕事とは自分自身を磨くこと。ただお金をもらうだけじゃなく、社会的マナーや技能を勉強して、身につけていくことができると思うんです」

◎求人がない

 十五歳から二十四歳の完全失業率は平均して10・1%(二〇〇二年一月〜十一月、総務省)。全体の失業率5・4%と比べると突出しています。

 ヤングハローワークには〇一年十一月の開設以来、およそ二万五千人の青年が登録しています。そのうち仕事に就けたのは二千二百人ほど。十人に一人もいないのが現状です。

 初めてヤングハローワークに来た東京都内に住む男性(23)は、福祉関係の仕事を探していました。「求人は多いけど、ほとんどパート。正社員を募集しているのは一件しかなかった」といいます。

 一般事務の仕事を探していたハルミさん(21)=大田区=は、「いいなと思う会社をぽつぽつ受けたけど、求人数は一人か二人。狭き門です。学生時代にまじめに就職活動をしなかったから、いまこんなに苦労しているのかな」と考え考え話しました。

 「このままずっと親に頼っていていいのか、という不安もある」とハルミさん。だからこそ、の思いがあります。

 「私は働くべき年齢です。新しいことに挑戦して専門技術を身につけたい。自分の可能性を広げたいんです」

 ヤングハローワーク統括職業指導官の中里博孝さん(41)はいいます。

 「若い人の意識は僕らのころと変わっていないと思うんですよ。変わってしまったのは社会のほう。僕らの就職のときは社会に受け皿があった。今は正規社員になるのが難しい時代で、若い人は苦労していますよ。僕らは、そうした若い人の後押しをしたいと思っているんです」

(文中、名前のみは仮名)


仕事確保へ今こそ共同を

 全労働省労働組合・木下秀人中央副執行委員長の話

 正社員の求人が少なく、短期・不安定が多いのは、若い人の責任ではありません。社会的・政治的につくられているんです。

 大きな背景に、終身雇用制度が崩壊し、短期・不安定雇用が増えている社会の変動があります。この流れは景気がよくなっても変わりません。だから若い人は、正社員になりたくてもなれない。そして政府はこの流れを後押ししています。

 たとえば労働基準法を「改正」し、有期雇用労働者は三―五年の間ならいつでも首を切れるようにすることなどを狙っています。経営者にとって都合のいい法「改正」といえます。

 若い人たちにもこうした背景を知らせることが大切です。組合などの枠を超え、共同を広げる運動も始まっています。共通認識を持ち、行動することが本当に大事になっています。


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